黒岩涙香

黒岩涙香

 今、黒岩涙香と聞いて、まず思い出すのは「岩窟王」モンテクリスト伯ですね。
 そして「ああ無情」。それと「鉄仮面」。
 勿論すべて、かれの翻訳小説ですが、それ以外にも、かなりのものを翻訳しています。
 こんなにもいろいろなものをよくぞ訳したものよと思うのですが、あくまでも、自分の新聞「万朝報」を売るために書いたのですね(万朝報の専属画家が藤原信一です)。
 彼の翻訳態度というのは、徹底的に小説を読み込み、頭にストーリーを叩き込んでから、それを一気に書き降ろすのだとか。
 だから、他の翻訳小説のように、小さなことにこだわって、勢いがなく、だらだらするというのを免れたのだそうです。
 完全に自己の小説としているので、原作よりもドラマチックになっているのかも。
 さて次はどうなるのか・・という連載物のお約束もさることながら、「さあ読者諸君。すべての手掛かりは出そろった。さて真犯人はだれか?」という、本格ミステリーの読者への問いかけ、というのも彼が始めたとか。
 そして、彼は自分が小説家だとは思っていなかった。
 彼はあくまで新聞人で、自由民権運動以来の土佐藩の闘士として、新聞でもって世に正義を問うという姿勢です。
 自らが払下げ事件での官の不正を述べたがために刑事罰を受けるという経験もして、小説にしても、社会正義のために、裁判で無実の罪をきた者が戦うといった内容を、一般民衆に知らしめるというのが目的だったようです。
 そういえば、「岩窟王」は勿論、「幽霊塔」も無実の罪で刑に服した人物が主人公です。 
 海外小説については、自ら「書淫」というほど好きで、フランス人作家のボアゴベも、英語版で読破し、彼の小説は英語からの翻訳ということですが、その英語にしたところで、殆ど独学というか、とにかくいろんなものを読み漁って身に着けた知識のようです。
 出身は土佐藩ですが、実父は漢学者、養父が裁判官で、義兄が医者、姉がクリスチャンというような、涙香ドラマのネタみたいな家系ですね。
 裁判ものやら探偵ものやらに興味を示し、医者が主人公の物語がままある・・というのもそのへんからきているのかも。
 そして、ものすごく多趣味で凝り性。
 一旦おもしろいとなると寝食を忘れてハマるというので、囲碁やら、ビリヤードにも凝り、今、一般に百人一首が好まれるというのも、実は彼が大いに宣伝したからだそうです。
 そればかりでなく、マイナス評価されているきらいがあるけれど、政府要人やら実業家の愛人をことごとく暴いて並べ立てるという記事のおかげで、大層スキャンダラスな一面もあり、こういうところでも、暴露記事ものの現代の週刊誌の先達です。これについても、偉そうな人物が、実はモラル的には悪党だということを世に知らしめるという、彼一流の社会正義なんですね。
 黒岩涙香が、「黒い悪い子」だ・・なんて言われますが、彼自身はちっとも「悪い子」だとは思っていなかったかも。
 まさに多芸多才で、総合新聞のような人物ですが、「我が鼻は煙突のごとく、終日煙を吐く」というほどのヘビースモーカーだったので、気管支系の病気で58歳で世を去りました。肺がんだったかもしれません。
 頭がすっかりはげた羽織袴の写真が有名ですが、40歳ころの、薄いけれどもまだ髪のある写真から描いてみました。
2012-07-03
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