鞍馬天狗

鞍馬天狗

 鞍馬天狗といえば、大仏次郎の小説の主人公で、一昔もふた昔も前のヒーローです。
 映画では嵐寛寿郎の当たり役で一世を風靡したものです。最近では野村萬斎もやってましたよね。
 この鞍馬天狗の黒紋付に着流しというスタイルそのものは、別に大仏次郎が始めたものではなくて、歌舞伎の斧定九郎やら、民谷伊右衛門のなどの「色悪」の衣装として伝統があるものです。
 しかし、いわばイカみたいな頭の宗十郎頭巾! 
 これは、もともと、歌舞伎役者の沢村宗十郎が舞台で用いて評判になって、そういう呼び名がついたものですが、大仏次郎の原作が鞍馬天狗のトレードマークとしたので、今は「鞍馬天狗の覆面」といったほうが分かりやすいかもしませんね。でも・・もう鞍馬天狗自体が過去のものですが・・。
 ですが、頭巾に着流しで「有名な」鞍馬天狗ですが、洋装をしている珍しい絵があったんですね。
 それは、昭和2年に「少年倶楽部」に載った「角兵衛獅子」の一場面で、かの伊藤彦造の挿絵です。
 おそらく、大阪城に、幕府の使者を装って忍び込んで見つかり、地下の水牢に閉じ込められた場面だと思われます。
 味方をよそおって暗殺しに来た幕府方の者たちを襲って、衣服をすり替え、おまけに鉄砲隊から銃を奪うということまでやってのけましたが、入り口を封鎖されてしまい、銃を担いで試案しているところと思われます。
 のちに単行本化された時に、伊藤彦象の絵は少年向けにしては、残虐さと色気が過剰だということだかなんだかで、違う画家に変更していますが、その本だと、この場面は、和服に鉄砲担いで、牢獄にお約束の格子戸の前で座っている姿ですが、原作だと全く明かりのない真っ暗闇の中で地下牢の石段に座っているとされているので、闇に座り込む伊藤彦造の絵の方が似合うような気がしますが・・。
 ということで、一見「鞍馬天狗らしくない」姿が珍しかったので、私風に。鞍馬天狗については、こちらにも少し書いています。

 この鞍馬天狗でいよいよ1999人目となりました。2000人の目標到達を目の前にして、この事典も、11年目に近づき、そろそろ、なんらかの形をつけなくては・・などと思っていますが・・・。
2015-12-02 
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灰色の女

灰色の女

  黒岩涙香の「幽霊塔」の原作が「灰色の女」であるというのは、割合最近わかったことのようです。
 それにしても、近代伝奇小説の開祖(と本人は思っていない)の面目躍如ともいうべき「幽霊塔」は、古風な文体、古風な主人公でありながら、なかなか読ませます。
 ひとえに「怪美人」と呼ばれる、ヒロインのおかげでしょうね。
 原作の「灰色の女」(A・M・ウィリアムスン)では、コンスエロ・ホープという名前ですが、涙香ものでは、もちろん和名。
 松谷秀子という名で登場しますが、実は無実の罪で獄死した輪田夏子であり、さらには、もっと衝撃の本名がある・・という謎の美女ですが、果たして登場のはじめ、灰色の服を着て、一瞬、まるで仮面か人形のように表情を失う美女であり、左手に異様な装飾のついた手袋をつけている・・という設定です。怪奇と謎に満ちたヒロインなのです。
 幽霊塔に隠された古い伝説の「古歌」をヒントに謎が謎を呼び・・という伝奇ミステリーの王道を行く展開ですが、ランカスター家とヨーク家の薔薇戦争の秘宝が悲劇を呼ぶ壮大なドラマです(あ、登場人物が、いくら和名になっているからと言って、舞台は、勿論、文明開化?のイギリスです)。
 ということで、松谷秀子嬢です。
 1899年のニューモードのカタログ図版に左手だけの長い手袋をつけたファッションがありましたので、地味ながら一応パーティの装いで・・。勿論、その手袋には異様な金鎖の装飾などはついていません。これは黒岩涙香の創案でしょうか・・。
2012-07-09

黒岩涙香

黒岩涙香

 今、黒岩涙香と聞いて、まず思い出すのは「岩窟王」モンテクリスト伯ですね。
 そして「ああ無情」。それと「鉄仮面」。
 勿論すべて、かれの翻訳小説ですが、それ以外にも、かなりのものを翻訳しています。
 こんなにもいろいろなものをよくぞ訳したものよと思うのですが、あくまでも、自分の新聞「万朝報」を売るために書いたのですね(万朝報の専属画家が藤原信一です)。
 彼の翻訳態度というのは、徹底的に小説を読み込み、頭にストーリーを叩き込んでから、それを一気に書き降ろすのだとか。
 だから、他の翻訳小説のように、小さなことにこだわって、勢いがなく、だらだらするというのを免れたのだそうです。
 完全に自己の小説としているので、原作よりもドラマチックになっているのかも。
 さて次はどうなるのか・・という連載物のお約束もさることながら、「さあ読者諸君。すべての手掛かりは出そろった。さて真犯人はだれか?」という、本格ミステリーの読者への問いかけ、というのも彼が始めたとか。
 そして、彼は自分が小説家だとは思っていなかった。
 彼はあくまで新聞人で、自由民権運動以来の土佐藩の闘士として、新聞でもって世に正義を問うという姿勢です。
 自らが払下げ事件での官の不正を述べたがために刑事罰を受けるという経験もして、小説にしても、社会正義のために、裁判で無実の罪をきた者が戦うといった内容を、一般民衆に知らしめるというのが目的だったようです。
 そういえば、「岩窟王」は勿論、「幽霊塔」も無実の罪で刑に服した人物が主人公です。 
 海外小説については、自ら「書淫」というほど好きで、フランス人作家のボアゴベも、英語版で読破し、彼の小説は英語からの翻訳ということですが、その英語にしたところで、殆ど独学というか、とにかくいろんなものを読み漁って身に着けた知識のようです。
 出身は土佐藩ですが、実父は漢学者、養父が裁判官で、義兄が医者、姉がクリスチャンというような、涙香ドラマのネタみたいな家系ですね。
 裁判ものやら探偵ものやらに興味を示し、医者が主人公の物語がままある・・というのもそのへんからきているのかも。
 そして、ものすごく多趣味で凝り性。
 一旦おもしろいとなると寝食を忘れてハマるというので、囲碁やら、ビリヤードにも凝り、今、一般に百人一首が好まれるというのも、実は彼が大いに宣伝したからだそうです。
 そればかりでなく、マイナス評価されているきらいがあるけれど、政府要人やら実業家の愛人をことごとく暴いて並べ立てるという記事のおかげで、大層スキャンダラスな一面もあり、こういうところでも、暴露記事ものの現代の週刊誌の先達です。これについても、偉そうな人物が、実はモラル的には悪党だということを世に知らしめるという、彼一流の社会正義なんですね。
 黒岩涙香が、「黒い悪い子」だ・・なんて言われますが、彼自身はちっとも「悪い子」だとは思っていなかったかも。
 まさに多芸多才で、総合新聞のような人物ですが、「我が鼻は煙突のごとく、終日煙を吐く」というほどのヘビースモーカーだったので、気管支系の病気で58歳で世を去りました。肺がんだったかもしれません。
 頭がすっかりはげた羽織袴の写真が有名ですが、40歳ころの、薄いけれどもまだ髪のある写真から描いてみました。
2012-07-03

梅信女(ラ・ヴォワザン)

梅信女(ラ・ヴォワザン)

 先日来、黒岩涙香「鉄仮面・正史実録」を、近所の「大書庫」で見つけ、その優雅なる文体と、時代を感じさせるなかなかの情感的な文章にしばしハマっておりました。
 こまかいルビもなかなか趣がありますし、何より、かにより、今ではおなじみになった西洋人の名前が「和名」になっていることが面白い。
 明治26年代というから、当時の日本人には、物語の主人公についても、フランス人の名前に違和感を覚えたのでしょう、「鉄仮面」モリス・デザルモアース有藻守雄(あるももりお)は、やや苦しいですが、ルイ14世の愛人ラ・ヴァリエール玻璃英嬢(はりえ嬢)というのは、なかなかによくできています。
 ずいぶん昔に翻訳物のボアゴベの「鉄仮面」は読んだのたけれど、世にも恐ろしい白寝台くらいしか記憶にない状態で、涙香は、なかなかに読みごたえがありました。
 なんてったって、文章が面白い!
 で、主役は、一応?鉄仮面なんですが、彼を脱獄させようとする、妻のヴァンダ(これは翻訳のしようがないのか、女編に兮で、ばん。だは陀)と、その協力者と言っていいのかどうか、まあ身分の高い人ですから気まぐれですが、オリンピア・マンチーニことオランプ夫人。彼女が織部夫人という優雅な名前で登場。
 それに、いかがわしい女毒薬使い(かのエグジリの一番弟子というふれこみの)ラ・ヴォワザンことカトリーヌ。モーヴォワザン。貴婦人や王侯貴族にまでひそかな顧客があったとか。彼女が重要な役割で、これこそ涙香の工夫を思われる一方の女主人公。
 彼女が梅信女(ばいしんにょ)です。この呼び方では、なにやら尼さんみたいですが、なかなかの女策士。
 とても魅力的で、最後は火刑を生き延び、名前を変えてパルマ王国の王妃にまでなってしまうというとんでもないラストはなかなか痛快です。
 いやあ、まさしく冒険活劇ですね・・こういうのが。
 明治26年版の挿絵は、いかにも文明開化の時代風で、なかなか面白い。絵師は多分藤原信一という人物のようですが詳細はのちほど。 
 私風に、ラ・ヴォワザン。ホンモノの彼女は、火刑になっています。
2012-06-26

お宮と貫一

金色夜叉

  尾崎紅葉が出たら、やはりこれも出さねばなりますまい。

 ♪熱海の海岸 散歩する   貫一、お宮の二人連れ♪
 

 という、このフレーズだけは、誰にもおなじみだと思います。
そして、「ダイヤモンドに目がくらんだか!」というのと「今月今夜のこの月を、僕の涙できっと曇らせてみせる」というなんだか、女々しいような、うらみがましいようなセリフとセットですね。
 今更ながら有名な「金色夜叉」の名場面。
 
 そもそも、この二人は幼馴染で、鴫沢宮さんのほうからすれば、間貫一は、、早死にした恩人の息子を父親がひきとって育てている義兄弟みたいなもの。
 宮さんの親は、貫一は、なかなか頭もよいので、帝大に進学させ、学者か官吏にでもして、娘婿にし、家を継がせよう・・万一出世すれば末は博士か大臣か・・の夢をみているわけです。
 勿論、宮さんも幼い頃からよく知っている貫一兄さんですから、明治の女の子とすれば、それで疑問はないわけですね。
 ところが、成長して、花のような美少女になり、人目をひく美人となった彼女・・貫一は「これがおれの許婚」と大いに満足なんですが、あでやかに花開いた美女は、世間に気がつきます。
 なにしろ、真面目でダサい貫一しか知らなかったけれど、世の中には、それこそ、いい男は山ほどいる。それに、自分はどうやら、世の男たちの賞賛の的らしい・・。
 これに気づいた女は、もはや自分で歩きはじめたのですね。
 ダイヤモンドに目がくらみ・・は、原作にないセリフのようですが、お宮がとあるパーティで知り合った金持ちの富山(富豪で山ほど金を持っている!)に、心が揺れるのは、ある意味当たり前のような気がしないでもない。
 若くて美人で、モテる!これなら、もっと自分にお金をかけてみたいと思うのは浅はかだけれど、女の真実。
 だって、こんなに美人に生まれついたんだもの。美しく着飾って何が悪いの?
 それに対して、貫一の「あれだけの財産があっても、そんなもの息子の嫁に使ってくれるわけないじゃないか。綺麗な着物を着て馬車に乗って、夜会に行っても、気苦労で青い顔するばっかりだ・・」なんて言う。
 なんだか嫉妬心丸出しで情けなく聞こえます。
 まさしく、富豪の嫁、馬車で夜会に行く・・そういうことに憧れているのがお宮なんだから。
 しかも、金持ちの家の気苦労ばかり、想像でくどくど述べるなんて、男の値打ちを下げてしまいますよ。
 それでも、まだ貫一を「兄」と思っている宮は、私のことを心配してくれるのはいいけれど、この人はどうするんだろう・・と心配して「私がお嫁に行ったら、貫一さんはどうするの?」と、素直に口に出してしまいます。
 これを聞いて貫一、頭にカッと血がのぼり、「なに~! やっぱり嫁に行くのか~!」と怒鳴って、宮を蹴り飛ばす! 
 やさしい「兄」が、実は嫉妬深いDV男だったと分かった瞬間。
 くどくどしゃべっていたのは、そう言えば、宮の心が戻ってくると思っていたからなんて・・言えば言うほど、心が冷えていくようなことを並べ立てているって気づかなかったんだ。
 突然に蹴り倒されて、深く傷ついたお宮は、打ち臥して嘆き悲しんでいますが、そのお宮に向けて、
 お前のような姦婦(あらまあ! まだ結婚もしていないのに、もうこの言い様)のために、おれは学問もやめてしまう、
 輝かしい将来を捨てる! (将来を嘱望された輝かしき若者である)おれを、そんなにするのは、それはみ~んなお前のせいだぞ! これからはお前を、とことん恨みながら生きていくぞ・・などとのたまう!
  で、今月今夜の、この月を・・になるわけだけど、・・・どこにも、やさしかった貫一兄さんのかけらもない・・宮は失望して、幻滅したんじゃないでしょうか。
 心が、す~っと冷えていったんだと思いません?
 その後、貫一は悪徳高利貸し(金色夜叉)となって、恨まれて放火されたり、宮は奥様になったけれど、うなるほどお金のある夫の女遊びに悩むなど・・まあ色々ある。
 宮の夫に破産させられたある夫婦の心中を貫一が救うというエピソードがあって、その後、男と女、ともに辛酸を舐めて成長し、円熟した二人が一生かけてどのような心理に至る大河ドラマになることか・・・と予想をしながらも、尾崎紅葉が死んでしまった。
 人気作品には続編が一杯出て、映画や芝居になり、まあ、主人公達の性格や、事件などもかなり改作されて現在につながるってことでしょう。
 で、何故に熱海の海岸か・・・当時は、コートダジュールのような保養地とはいかんけれど、なかなかにおしゃれなスポットだったようで、勿論大金持ちの富山が持っている別荘にお宮さんが招待されていたのを、貫一が追っかけて行ったらしい。
2011-03-01

六の宮の姫君

六の宮

 言わずとしれた芥川の名作ですが、私は昔から、どうもこの姫君に入れ込めない・・というか・・なんとも後味の悪い思いをしているのですが、心のどっかにひっかっかってしょうがない物語なんですよね。多分、色んな人がそういうことを感じでいるのか、あちこちで取り上げられていますね。
 親の代から、特に目立つ一族ではなく、積極的に社会に関わっておらず、時の流れに任せている。その娘である姫も、絶世の美人でもなければ、特技があるわけでもない。ただただ、大人しいお姫様。
 親に死に別れて一人になっても、自力ではなにもしない・・人の言うまま、男に頼り、その男に去られると、また困窮し、また人のいうまま、次の男に・・・・。物語では、「こころならずも身を売る」なんていうような生活のための男は、二人をにおわせますが、それ以後も何人もあったかもしれない・・それは想像にお任せ・・というところでしょうか。
 はて・・あの姫はどうしているか・・と男たずねなければ(探し当てられても手遅れで)、野垂れ死にですよね。
 時が平安時代でなくても、今の世知辛い世の中、人間を使い捨て。芥川は予想してはいなかったでしょうが、今の現代では、ありうるかもしれないような孤独な「おひとりさま」・・。ちょっと、ぞっとします。
2010-12-21

蛍狩りの女

ほたる

 ついに8月になってしまいました。今週も暑いそうですね~・・。
 
 本町をぶらりぶらりと蛍かな
 
 小林一茶50歳のころの句です。
 3歳の時に実母をなくし、8歳の頃にやってきた継母と折り合いが悪く、15歳で江戸に奉公に出されて、以後職場を転々とし、また、家族との確執が続き、父の死後、遺産相続をめぐっても争いは続き、ようよう落ち着いて、気持ちの上にも平安がおとづれるのが50歳の頃です。その後、初めて妻を迎え、生活もようよう安定します。
 江戸の本町あたりにも沢山蛍がいたのでしょうね。ホタルとともに描かれるのは、50男のはずですが、まあ、「涼しい女シリーズ3」ということで、彼が迎える28歳の妻女の雰囲気で(もっとも彼女は江戸には来ていませんが)。
2010-08-01

夕涼みの女

夕涼み

  ちょっとマシになったかと思ったら、今日からまた暑いです。来週はもっとすごいみたいですね。うっわ~・・やだやだ・・。
 涼しい女シリーズ?第2弾。

 夕涼み よくぞ男に生まれける

 榎本其角ならずとも、昔は、夕方に家の前に床机を出して、はだぬぎになって風をうけて涼むのは男の特権。
 しかし、現代、男性は、いかにクールビズとはいいながら、タンクトップ・短パン・サンダルで仕事に行くわけにもゆかず、手に上着を持ち、きちんとした人(?)は、ネクタイで首をしめて、長ズボン革靴ですもんねえ。気の毒です。女性も仕事人はあんまり下着みたいな服を着ていくわけにはゆかないけれど、男性よりは涼しげな格好は出来そうです。しかし、地球温暖化の昨今、江戸時代の夕方の涼しさの比ではないのかも。
 月岡芳年の絵に、川べりに床机を出して足を川に浸して夕涼みする女性の絵があります。着物は着てはいるものの、一枚ものの浴衣のようですし、それもざっくりとしたまとい方で、帯はしておらず、手ぬぐいを肩にかけているということは、風呂上りでしょう。
 足元にチラリと見える赤は湯文字ですから、ほんとうに気楽な身なりで、大層涼しかったと思いますよ。
 湯上りに、生ビール(?)・・・いいですね。
2010-07-30

行水する女

行水の女

 繰言になりますが、ほんまに暑いですね~・・。
 昨日のよもぎさまのコメントで、「涼を呼ぶ絵」なるものを考えたのですが、頭の回転が悪く、涼しげな絵柄が浮かばなかったので、イージーに行水する女・・・。いかにも短絡的ですね。
 で、一ひねり・・ということで、ここで一句・・と言っても私ではありません。高浜虚子です。

  行水の女にほれる烏かな

 明治の頃の女性は、やはり髪は烏の濡羽色とかいって、漆黒の美しさを愛でたものですから、「まあ、あなたの羽は、さすがに黒くて綺麗だわね~」なんていわれて、かあ~っとテレている烏君・・です。
 たらいで行水・・江戸時代の浮世絵などには、しばしば庭先で行水する女性の絵などがありますが、私も子供の頃は、湯を沸かして水でぬるめて、丁度良い温度にしてもらって、ホンモノの盥つまり木と竹で出来た盥で行水したものです。風呂は五右衛門風呂で、シャワーなんぞという小粋なものはありませんでしたし。盥も、すぐに金盥や、プラスチックになり、洗濯機が普及してからは、それも絶滅しましたが・・。
2010-07-24

加賀の千代女

アサガオ

 酷暑!お見舞い申し上げます
なんとも暑い日が続いておりますが、体調管理などお気をつけ下さいまし。今年は、あちこちで、観測史上最高が続き、このまま気温が上がり続けると、一体どうなってしまうのか不安な日々です。
 で・・というわけでもないのですが、さわやかな夏・・と言うことになれば、朝顔かなと。

  あさがおに 釣瓶とられて、もらい水

 加賀の千代女といえば、これしか思いつかない私でございました・・。
 こんなのもあります。

  口紅粉を わすれてすずし 清水かげ

 あまりの暑さに、化粧する気もしないんですけれど、日焼け対策はしておかないといけない昨今ですが・・。
 千代女の生きていた時代は元禄なので、こんな江戸末期風の髪型や、風俗ではなかったんでしょうが、まあイメージとして・・。朝顔の句は30代の作品だそうですので・・。
2010-07-23

丹下左膳

たんげさぜん

  今は昔。昔の子供(かなりの年配)で「丹下左膳」を知らない人はいなかったかもしれません。
 近くは中村獅童でやったり、豊川悦司もあったのですが、大方の大人(かなりの年配の)に定着しているイメージは大河内伝次郎かな。大友柳太郎も古いですねえ。「しぇいは丹下、名はしゃじぇん」なんていうギャクっぽい言い回しでも有名かも。しかし、実のところ、大河内伝次郎なんて、私なども生まれる前からのスターですから、親とかじいさん世代からの「語り」で知ったいるだけかもしれません。
 しかし、子供の頃のなぞなぞに、「目が三つに手が1本、足が6本。な~んだ? 」というのがあって、回答は「丹下左膳が馬に乗っているところ」だったのですね。
 そうです。丹下左膳は隻眼隻腕のヒーローなんですね。
 隻眼隻腕とくれば、もうイメージするのはネルソン提督でしかありえません(とは、ちと強引ですが・・)。
 で、この丹下左膳のキャラを作った原作者林不忘が、ネルソンを基にしたのではないか・・・などというのを青柳正規先生がコラムで、チラっと匂わせておられたんですよね。
 林不忘はいくつものペンネームを持つ多彩な人物で、大正年間に6年間もアメリカを放浪し、いろんなことをしているんですね(その時期はアメリカでネルソンが流行っていた・・?) また、もしかしたら、「妖艶な」ルクレツィア・ボルジアを日本に紹介した最初の人物かもしれない・・なんて言うのも・・ますます興味深いです。
 で、「丹下左膳が馬にのっているところ」です。
2009-09-24

中村雪之丞

雪の場

 実在の人物ではありません。雪之丞変化の主人公。
 上方の花形女形(う~ん。字ヅラが悪い。かみがたのはながたおやま)中村雪之丞は、実は、悪人の姦計にはまって両親を殺された長崎の豪商の息子。役者に助けられて、芝居小屋で育ち、今は人気役者になっているけれど、心に父母のあだ討ちを秘めて、仇のいる江戸に来る・・つまり、長崎の仇を江戸で討つわけですね・・・。しかもそのために道場に通って剣の腕まで磨いている・・という設定。女装する腕の立つ美青年・・とくれば、もう少女マンガや宝塚の世界ではできすぎ~♪
 ・・というわけですが、これは歌舞伎では勿論、映画に何度もなって、長谷川一夫や、美輪明宏なんかもやっていますし、近いところではNHKでやった滝沢秀明の雪之丞もありましたね。
 しかし、大仰なあだ討ちものではありますが、実は海外の小説の翻案。昭和の初期の人気作家三上於菟吉が、ジョンストン・マッカレーの「双生児の復讐」という小説を日本の江戸時代に置き換えて書いたものです。義賊の闇太郎と雪之丞がどうして二役なのか?と不可解に思うむきもあろうかと思いますが、原作では(多分)双子なんでしょうね。昭和5年頃に翻訳が出たそうですが探せません。江戸川乱歩も書いているので、こちらのほうが見つけやすいかも。
 で、このジョンストン・マッカレー作品で、日本では圧倒的に有名なのは「怪傑ゾロ」です! ゾロと雪之丞は「兄弟」だったのだ~!
 「女装する」男に見えたらおなぐさみ~♪ 背景は小林永濯のヤマタノオロチです。
2009-01-30

お三輪

お三輪

 「妹背山女庭訓」は、荒唐無稽というか、これぞ伝奇!というか、大悪人の蘇我入鹿は、ただ悪いというだけではなく、ある種の超能力者で、まともに倒せないという設定。
 で、その彼を倒すには、爪黒の牝鹿の生血と、疑着の相の女の生血をかけた笛を吹いて、超能力を「無効」にしなければなりません。
 なんとも「血みどろ」な設定ですが、「疑着の相」ってなんだんねん?
 歌舞伎の解説などによると嫉妬に狂っている顔をしている女、あるいは嫉妬深い女だそうです。
 で、その相の女ということで、お三輪という娘が悲劇的な死を遂げるわけです(なにしろ生血!がいるのですから)。
 彼女は酒屋の娘ですが、隣に住むいわくありげな若者求女と恋仲です。ところが、求女が夜に他の女を通わせていると知り、「どこのどいつじゃ!」と追いかけます。するとその女の家はすごい御殿で、なんと今をときめく大悪人蘇我入鹿の妹。しかも御殿の侍女たちにさんざんなぶられ、追い出される。
 さらに、求女が姫の婿になると知り、一気に感情が爆発!「疑着の相」とあいなります。
 そして半狂乱になって御殿に乱入しようとしたその時、ある男(彼は、入鹿を倒そうとしている藤原鎌足の忠実な家臣)に殺されます。死に際に、求女は実は鎌足の息子であり、その妹に近づいているのも入鹿を倒したいためで、今、彼女の血が必要だと知らされ、「私があの方のお役にたてるのね」と死んで行くのでした・・・って、これでええんかいっ! と突っ込んでしまいますがな。
 求女(これが藤原淡海・・つまり不比等さん!)って、後に、復位した天智天皇!(これが、まあなんと、入鹿に皇位を奪われ、鎌足に匿われている非力な貴人ということになっています)のもとで、晴れて入鹿の妹と正式の夫婦になっているんです。
 血を流して死んだお三輪の立場はどうなるんだ!  ただ血を絞り取られただけで気の毒すぎません? 
 いかに荒唐無稽大伝奇物語とはいえ、ヒーローであるはずの求女って・・・・「色仕掛け」で闘う男だったのね。
 泣き叫ぶお三輪を描いてみました。
2008-10-09

雛鳥と久我之助

雛鳥久我

 雛鳥と久我之助は、日本版「ロミオとジュリエット」で有名な二人(お芝居は妹背山女庭訓(いもせやまおんなていきん)というすごい題名ですが・・・)
 不仲な家同士(川の両サイドに住んでいます)に生まれた二人が、ベランダ越しならぬ川越しで愛し合うようになって結ばれない・・という悲劇ですが、私は昔から、この2人については、悲恋に対する同情というより、ブキミなイメージがつきまとうのは、「首の輿入れ」という結末だからでしょう。
 芝居には極悪人の無理難題によって苦しめられる正義の士が、苦難の末、最後に勝つ・・というのがお約束ですが、これもまた極悪人「蘇我入鹿」!(思いっきりワルの扮装です!)が登場。
悪人らしく疑心暗鬼で、二家が不仲を装って謀反を企てていると思い、忠義の証に各自、子供を差し出せと迫ります。悪人が「娘を差し出せ」と言えば、勿論「そばめ」にするためで、息子は人質。
 この難題に失望した恋する2人は、ともに自害しますが、子供たちを愛している親たちは、せめて最期に二人を一緒にと、先に死んだ雛鳥の首を雛人形の嫁入り駕篭に入れて川に流し、対岸の久我之助の所に届けます。
 それをもらった久我之助の父は、腹を切ってまだ死んでいない息子の介錯をして止めをさすという衝撃の「死の婚礼」であります。・・・やっぱり無気味ですよね。
 首だけになった恋人を、腹を切って血みどろで死にかけている男が抱きしめる図なんて、想像しただけで恐ろしい(サロメなら描くのに?)ので、観念的?な絵にしました。
2008-10-08

清心(鬼薊清吉)

清心2

 「十六夜清心」(原題・小袖曽我薊色縫)の主人公で知られる人物です。
 鎌倉極楽寺が盗賊に押し入られ大金を取られるのですが、会計係の僧であった清心が疑われ、また遊女十六夜に通っていたことがバレて、寺を追放され、店を抜け出した十六夜とともに身投げ心中をします。
 しかし、岸に流れ着き、助かってしまった清心は、道で病に苦しむ小姓に出会って介抱していたところが、この病人が大金を持っていることがわかり、ふと悪心がきざします。はずみで小姓を殺してしまったところから転落のはじまり。
 「1人殺すも1000人殺すも、斬られる首は一つ」と居直って、悪の道まっしぐら・・・。名前も鬼薊(おにあざみ)の清吉とかえて、天下の大盗賊になってしまう。勿論、恋人の十六夜も助かっていて、2人は運命に翻弄されて再会し、二人して悪の道に落ちてゆく、「俺達に明日はない」江戸ノワールです。
 打ち首になった坊主くずれの実在の盗賊をモデルに、波乱万丈のドラマに仕立てたのは河竹黙阿弥の筆の冴えでしょう。 
2008-08-19

浜路

濱路

 水滸伝から八犬伝・・というのはイージーなつながりですが、まさしく私が、水滸伝に興味を持ったのは、逆に「八犬伝」からだったのです。こういう人意外と多いんじゃありませんか?
 その「南総里見八犬伝」は8人の英雄(本家の108人からぐっと人数を減らして、このくらいが、ほどよいですね。書き分けも描き別けも・・)の物語ですが、ヒロインは、八犬士の「母」的な存在の伏姫でありますが、最初に登場する犬士の犬塚信乃の恋人浜路が、なかなかの存在感ですね。
 義理の親に、悪代官(勿論、お約束通り、ヒーローの信乃とは似ても似つかぬスケベオヤジ)のところに無理に嫁にやられる運命だったり、網干左母二郎という、さもしい浪人者に誘拐されたりと、なかなかに読者の嗜虐心をそそる、被虐キャラですが(また、そのような脚色をしている改作もありますが)、なかなかにしっかりした女性だと思われます。
 なにしろ、信乃が旅立つ前夜に寝室に忍び込んで迫ったり、すりかえられた名刀村雨を取り戻そうとしたり(結局、死ぬのですが)、やむにやまれずとはいえ、どちらかといえば、行動派の女性。
 それに比べたら、男たちは頼りない。信乃はカタブツというより、歯がゆいし、実の兄の犬山道節も、もうちょっと早く助けに出てきたら? などと文句を言いたいのですが、結局、信乃は、彼女とそっくりの女性を妻にして、めでたしめでたし・・?って、それはないでしょう!
 八犬伝のことなら、「白龍亭」というスゴイサイトがあります。
2008-04-07

清玄

清玄

 そろそろ桜の季節だということでイージーに「桜姫」を出しましたが、清玄さんがついでに登場です。
 しかし、なんとも不景気な絵になってしまいましたね。夜桜の下に立っている「幽霊」っぽい。桜はやっぱり美女か美少年にしか似合いませんねえ。
 「桜姫東文章」では、かつて清玄は、白菊という稚児と心中をはかって生き残り、その生まれ変わりであるという桜姫に出会って、破戒僧となり、姫を追いつつ最後は小悪人によって毒殺されるハメになり、幽霊になっても姫にまとわりついているのですが、「桜姫全伝」などには、彼は前世の因縁などはなく、ただ一方的に姫に片思いをしてしまうということになっています。
 一途といえば一途・・思い込みといえば思い込みで「まっとうな」生活をこわしてしまった「恋に生き、恋に燃え尽きた」男なのです。
2007-03-26

桜姫

桜姫

 歌舞伎の「桜姫東文章」の主人公桜姫は、深窓のお姫様であったのが、屋敷に侵入した泥棒に強姦されて妊娠という不幸から、仏門に入ろうとします。しかし、得度をするはずの高僧清玄が、死んだ昔の恋人(坊さんですから相手は稚児です)の生まれ変わりだと言い出して、姫に迫り、堕落。挙句に毒殺されても姫をストーカーする幽霊になる。
 ところが、姫は自分の不幸の元凶であるはずの泥棒権助に恋してしまっており、それに付け入った権助は彼女を女郎にしてしまう。そして、周りの「忠義」な連中を振り回しながら、姫は落ちてゆくのですが、結局、権助が父や弟を殺した仇と知ってあだ討ちをします(その時、2人の間の子どもまでも死んでしまうのですが)、姫は仇討をしたことによってお家再興を果たし、またもとのお姫様に戻るのです。めでたし、めでたし?
 いくら落ちても、恋する男もストーカーも、果てはわが子までも死んでしまっても、このお姫様は、やはり、結局は「姫」なのです。
2007-03-25

白井権八

白井権八

 芝居の世界においては、チョイ悪の美少年ヒーローですが、モデルである平井権八は、鳥取潘で殺人をおかして江戸に逃亡。遊女と遊ぶ金ほしさに130人も辻斬りしたという大悪人。
 しかし、芝居の世界では、鈴が森の淋しいところで雲助にからまれ、ことごとく斬り殺し(腕がたつのです)、涼しい顔で去って行こうとしたところを、呼び止められる。
「お若えの、お待ちなせえ」
「待てとおとどめなされしは・・」
という幡随院長兵衛との出会い場面を、土佐の絵金と呼ばれる残酷絵師が描くと、あたりに手足や首が散乱し、血みどろスプラッターな背景に、明かりを差し出されて袖で顔を隠そうとする権八の姿。隠そうとしたのは顔なのか、凄惨な殺し場なのか・・。
 とってもスプラッター場面は描けない私なので、背景の闇に沈んでいると思って下さい。しかもこの殺人犯は、声をかけた人物も、場合によっては「こいつも斬るか・・」と思って振り返ったのでしょう。年の頃なら14,5歳・・暗い過去持つ不良少年に見えるでしょうか。 
2007-03-05

安倍久四郎

安倍

 岡本綺堂の「半七捕物帖」が、いわゆる捕物帖のはしりであるということは、よく知られたことですが、このシリーズも面白いのですが、岡本綺堂といえば、私は短編怪奇小説が好きでした。
 その中でも、とくに作者自身が身近に感じていた江戸を舞台にした、不思議話がとてもよい味わいでした。何とはなしに怖かった「おいてけ堀」という短編は、有名なあの「おいてけ~」という声のかかる話をモトにしているのでしょうが、のっぺらぼうは出てきません。
 安部久四郎という御家人が、いわゆる副業に釣りをやっていて、雨の降る日に堀端で、髪のからまった女ものの櫛を釣り上げます。櫛を堀に捨てて帰ったはずなのに、家につくと、またびくに入っており、女中が欲しがったので与えます。
 そのとき獲物のウナギに混じって入っていたマムシに指をかまれ、毒を吸い出したものの、夜中に高熱に悩まされ、女中を呼んだところ、別人のような美しい女が現れ・・・というお話ですが、この美女が、昔殺して川に捨てた女というわけでもなく、女中が乱心した主に斬られるわけでもなく、ただ熱のために幻覚を見たのであろうか・・というところで終わります。
 何一つ解決しないし、問題もない・・そういう怪談ではありますが、読むほうが、堀端、釣りをする浪人(厳密には浪人じゃありませんが)、櫛・・・というところで、四谷怪談の伊右衛門を思わせるつくりになっていて、なかなかに凝っているではありませんか。
 雨の降る寂しい堀端で、夕方に、髪の絡まった櫛を釣り上げる・・・怖くないです?
2006-11-24

黒蜥蜴

黒蜥蜴

 三輪明宏のゴージャスな黒蜥蜴を見てから、なにやらあのような「太目のおばさん」イメージですが、原作に登場の黒蜥蜴は、一人称を「僕」と称する妖艶な男装の麗人にして、はたまた令嬢風、貴婦人風・・そして、大胆不敵な女盗賊で、名探偵明智小五郎を翻弄します。
 自前の船などをもっていることなどから、ルパンのカリオストロ伯爵夫人を彷彿とさせますが、あらゆる美しいものを集めるのが大好きで、数々の宝飾品は勿論、美術品や、美しい人間なども(全裸の剥製!)コレクションします。
 そして、夜のG座の妖しい高給クラブで、「宝石踊り」を踊る。この「宝石踊り」というのは、首にかけた大粒の2連のネックレスと、ダイヤをちりばめた腕輪、指輪、耳に下げた翡翠の耳飾以外のものをすべて脱ぎ捨ててエジプト風の踊りを踊る・・ということになっています。黒い衣装をまさに脱ごうとしている・・・というところを絵にしてみましたが、エジプト風というからにはクレオパトラの髪型がいいのではないかと思いつきました。
 この希代の悪女は、あろうことか自分を追う明智小五郎に恋をしてしまうのですが、私の好みからいえば、明智君をう~んと美形の探偵にして、彼を「コレクション」に加えようとしていた・・・なんていうほうが好きなんですけど・・しかし、明智君のオールヌードは見たくないなあ・・・。
※「黒蜥蜴」江戸川乱歩推理文庫・講談社 
2006-04-24

明智小五郎

明智小五郎

  明智つながりで、この人もいってみよう。
決して一族ではありませんが、近代探偵小説の産みの親江戸川乱歩が登場させた名探偵として、代表的な人物。
 そして、背広を着て事務所を構えた探偵としても、この人が嚆矢です。
 それにしては、この風体はこれいかに?といわれそうですが、江戸川乱歩の小説に、初期の頃の素人探偵として出てくる「一寸法師」では、上海帰りの怪しい長髪男なのです。本人自慢?の中国服を着て、美貌の依頼者(これがまた、お金持ちの奥さんですが)に対する、怪しさ満点の探偵。こんなのが本当に名探偵なのかしら? と意表をつかせるところに本人の意図があったかもしれません。
 勿論、まだ、生涯のライバル怪人二十面相には出会っていませんし、小林少年もいません。
 まあ、そういった明智君もどうでしょうか・・・?
※「地獄の道化師・一寸法師」江戸川乱歩・春陽文庫
 
2006-04-23

犬川荘助

犬村荘助

 今日で、八犬士がそろいました。
 犬川荘助義任(いぬかわそうすけよしとう)。義の玉を持つ犬士です。
 武士であったが、讒言で父が死んだ後、母が逃避行の途中遭難死して、奴隷として育つという、お定まりの悲劇の前半生。
 犬塚信乃の友人として、幼馴染ですが、信乃が騙されて出立したのち、誤解があって、主殺しとして捕らえられ、死刑を宣告されます。
 で、活劇の一つの典型、死刑直前の無実の人物を、仲間が救うと言うドラマチックな刑場荒しが待っている。場所は庚申塚(関係ないけれど、近藤勇が刑死したところです)。犬士の仲間たちに、あわやというところを救い出され、これも水滸伝にモトネタのある常套手段ですが、ドラマは盛り上がります。
 で、英雄としては、少々みっともない格好ですが、死刑寸前の姿で描いてみました。 
2005-12-30

犬田小文吾

犬田こぶんご

 犬田小文吾悌順(いぬたこぶんごやすより)。悌の玉を持つ犬士です。
 悌という文字は、弟に心(りっしんべん。つまり心が立っている形の文字)で、兄弟のことに心を配る徳の持ち主ということになっています。で、唯一、八犬士の中に親戚がいる。犬江親兵衛の実の伯父さん。悲運に死んだ妹夫妻が親兵衛の親です。
 この「兄弟」を守るような役割の男は、頼れる大男。つまり、江戸時代の人気スポーツであり、大地を鎮める役割の相撲レスラーです。
 悪人犬太をやっつけたと言うことで、「犬太殺しの小文吾」が、いつのまにか犬田小文吾になったという、マンガみたいなダジャレ命名ですが、なにかアルゴス殺しのヘルメスみたいで神話的ではありませんか・・いや、やはりダジャレか・・。
2005-12-27

犬坂毛野(旦開野

犬坂毛野

 八犬伝の犬坂毛野胤智(いぬさかけのたねとも)は、最初女性として出てくる犬士です。
 旦開野(あさけの)と名乗る女田楽、つまり芸能人なんですね。彼女・・いえ彼が何故女装をしているか・・というのは、勿論、女田楽の子供に生まれ、母のあとを継いでいるんですが、これがまた父は悪人に殺され、妊娠中の母が逃れて、密かに旅芸人一座の中で遺児を産み育てるという、八犬士ならではの陰惨な不幸を背負っています。
 ですが、犬塚信乃とともに2人の女装の犬士がいるのは、毎度の私のネタ本によれば、犬士は、文殊菩薩をとりまく八大童子を表し、その8人の中には2人の女の子がいるからだそうです。
 ならば、どうして素直に本物の女にしなかったか・・・は、まあ馬琴のみが知ることでしょうが、お家再興の八人衆に女性を混ぜるのは江戸時代の発想としては、難しかったかもしれません。
 かくして美少年に女装をさせて女の代理をさせたわけですが、文殊曼荼羅というのは、真ん中に唐獅子に乗った文殊菩薩がいて、そのまわりに8人の童子がいるという図柄(いわゆる九曜星)ですが、では、中心たる文殊菩薩は誰か・・というと、これが勿論、犬に乗っている伏姫ということになるそうです。
2005-12-13
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Author:乱読F
歴史上の人物を沢山描きたい・・。
実在・架空2000人描き

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