ラッグとキャンピオン

ラッグとキャンピオン
 
 マージェリー・アーリンガムのミステリーシリーズ「キャンピオン氏の事件簿」を読んで、ここの個性的な主従を描きたくなりました。
 主人のアルバート・キャンピオンは、いわゆる颯爽とした名探偵ではありません。
 作者みずから「猛烈なまぬけづら」なんて言われるのって、どうかと思いますが、まあいささかたよりなげな人物なんでしょう。
 この間抜けづらの意味は、もしかしたら、彼のトレードマークたる角縁眼鏡(バッファロー・ホーン)にあるかもしれませんが・・。
 親友の警部との関係はまあまあで、ホームズみたいに偉そうにしていないから、気楽に使われているのかも・・。
 で、こんなちょっとのんびりした主人に仕えて、身の回りの世話をしているのが、いわゆるジーヴスのような「紳士おそば付き紳士」のバレットのマーガズフォンティン・ラッグ
 このラッグたるや、ジーヴスのような、お上品な態度と物言いで、教養あふれ、何でもそつなくこなす、従者の鏡のような男ではない。 元夜盗・・であるらしく、仮出所中に従者になったって・・・まあ、スネに着ず持つ身であるから、悪党には目端がきくのかもしれませんが、主人を主人と思っていないような横柄な物言いなんですが、自分としては従者のプライドもあるみたいですね。
 使用人仲間から、ある貴族の従者が、主人が朝食をとるあいだ、横で新聞を朗読するというのを聞いてきて、自分も始めるのですが、彼が読む記事は教養あふれるものではなくて、死亡通知だったりします。
 で、気楽なあまり、つい主人をファーストネームで呼んでみたり、チンピラ風の言葉で文句を垂れる。うっかりすれば主人の後ろで、頭の上でクルクルパーとかやってそうな人物ですけれど、そこはそれ、なかなか息のあった主従なんです。
 このミステリーシリーズについては、こっちにも書いています。
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マスグレーブ家の執事ブラントン

ブラントン

 シャーロック・ホームズシリーズの「マスグレーヴ家の儀式」という物語の登場人物です。
 設定はホームズが大学時代の友人から相談事を受けるということになっています。
 その人物は、歴史的な旧家で、人が住んでいる家としてはこの国最古だろう・・と言われるほどの古い屋敷というか城に住んでいる当主。で、彼の屋敷の執事が、不可解な行動の後に、忽然と姿を消した・・というもの。
 そして、姿を消す前に、屋敷の図書室で、深夜に何かを熱心に調べていた・・・というのですが、それが謎。
 で、 謎を解くのはもっぱら探偵ではあるのですが、おそらく、その謎を、執事が解いていた・・そしてそれこそが失踪の理由・・というものです。
 その謎が、旧家に伝わる成人式の儀式書ですが、とある歴史的な財宝の隠し場所・・・というもの。
 シドニー・パジェットの挿絵ではなにやら熱心に調べ物をしている挿絵があるのですが、せっかく図書室(旧家の図書室すごいですよね)にいるのだから、なにか参考資料を色々出して調べていたに違いないと私は思うので、そんなふうに描いてみました。
 あ・・・ロンドンのホームズ博物館に、知る人ぞ知る、この執事の「死体」があるらしいのですが、頭脳明晰、容姿端麗のはずのブラントンさんにしては、なんだか気の毒すぎる「姿」なので、知的な雰囲気にしてみました。
 ちなみに、神戸の異人館の英国館にも、この「執事の死体発見場面」の、発見者側の人形があるらしいです。そのうち見に行ってみよう。 

自転車に乗る男

ツィードラン

 ツィードを着て自転車で走るというイベント「ツィードラン」の画僧を見ていて、思いついた。
 20世紀初頭の英国調スポーツウェアーのニッカーボッカーは、クラシカルな自転車に似合うなあ・・と。
  しかし、自転車が、そもそもどこで発明されたのか・・ということについては、ドイツだ、英国だ、いやフランスだと、それぞれの国が発祥の地を表明しているとか。
 しかしもともと、子供の玩具の木馬に車を付けて、それにまたがって足でけりながら進んだ遊具だったとか。
 1813年にドイツで、ドライス男爵が、こういった木馬風のものに、本格的なハンドルをつけ、進行方向を決められ、足蹴りで進んだものが発明され、それが、今日の自転車の始まりとされているそうです。
 そしてペダルが発明されたのは、1839年で、スコットランドの鍛冶屋さんが工夫したそうです。
 以後、様々な工夫を経て、1879年にイギリスで、前後のギアをチェーンで結ぶ駆動方式が発明され、今日の自転車の基礎ができました。

ヴィクトリア朝の人々3



 ヴィクトリア朝を舞台にした小説やドラマには「お屋敷」が出てきます。
 貴族たちは、田舎の領地に広大なカントリーハウスを持ち、ロンドン社交界を楽しむために市内にはタウンハウスを持っていて、沢山の使用人に囲まれていました。
 そういった、使用人の中で「メイド」は、なにやら、ミョ~な流行り方をしているんですけどね(まあ、執事というのも、ややミョ~な感じですけど)。
 主人のために、晩餐会の給仕などの表立った働きから、下働きをしていた男性使用人を「図説 英国執事 貴族をささえる執事の素顔」(村上リコ・ふくろうの本)から、書いてみました。

 座乱読ー別荘ーで、「そこの執事さん」シリーズのマンガ描いてます。

ヴィクトリア朝の人々2

ヴィクトリア朝の人々2

 前回の続きです。
 これは1860年代以降の警官のヘルメット。胸のボタンに吊して、上着の下に突っ込んだ鎖には警笛がついています。上着の下から見えるのは、腰に下げた手錠。
 銀行員は中流階級の下層に属し、ジェントルマンのはしくれ。現代の背広につながるラウンジジャケットです。ズボンのセンターの折り目が入るようになるのは20世紀になってからです。
 農場のスカラリーで働く女性。
 帽子をかぶったのは一応は中流の外科医の夫人。

ヴィクトリア朝の人々

ヴィクトリア朝の人々

「ヴィクトリア時代の衣装と暮らし」(石井理恵子・村上リコ・新紀元社)。
 こちらでいえば明治村みたいなところで、復原されたヴィクトリア時代の街で、それぞれの職業人に扮している普通の人々のコスプレを集めた写真集。これが面白かった。
 本当にそのへんのおばちゃん、おっちゃんたちを、現代のおばちゃん、おっちゃんたちがやっているんです。
 衣装も、時代考証をして特別に制作しているんですが、なるべくその時代風のものを身に着けた人々の写真集。
 美人で気取った上等の衣装を着けた上流階級の貴婦人や、ビシっとした服装の貴族なんて、出てきません。
 印刷屋は上着を脱いで、黒い袖カバーとエプロン。でも、手はインクで汚れているのはちゃんと仕事してるから。
 鉄道整備員はズボンもベストも、元の色が何色だったかわからないくらい汚れているけれど、これは職業上のプライド。手にするスコップは、井上勝も持っていた。髭をそれば、けっこうハンサムかも・・?
 リッチフィールド伯爵家のキッチンメイドは赤の細いストライブの服に白いエプロン。
 ランドリーメイドは青、ハウスメイドは紫のストライブと決まっていたんだそう。エプロンだって、ごく普通の白いもの。  

ダリア叔母さんと謎執事グロソップ

おばさんと執事

またしても、ウッドハウスのジーヴスシリーズです。
 国書刊行会のジーヴスものの10巻目、「ジーヴスの帰還」
 バーティを不倶戴天の敵とみなしているサー・ロデリック・グロソップ氏が、バーティと「共闘」する事件がおこります。
 この方は、当初、バーティの従兄弟の双子らがあくどいイタズラをしたせいで、バーティは「くるくるパー」だと思い込んだり、また、牛型クリーマー!の件では、バーティは「泥棒癖」があると決めつけ、はたまた、湯たんぽ穴あけ事件がおこって、ベッドを水浸しにされたので、アタマに来てしまったことなどから、まあ、ものすごくお互い『会いたくない人間ナンバーワン」だったんですね。
 それが、2人して顔に墨を塗ってひどい目に合う冒険(サンキュージーヴス)を経て、なぜか少しお互いを見直す・・といったところまでこぎつけていたんですが、ここにきてついに「友情」が芽生える。
 巨大な禿げ頭、もじゃもじゃの眉毛が特徴の高名な精神科医の御年51歳の紳士ながら、まあ、恋する貴婦人のために黒人バンドマンのマネをしてみせたりするお茶目?で果敢なところはあったんですが、今回は、ダリア叔母さんちの執事のふりをして、お屋敷に登場。
 ただ、叔母さんちの絶品シェフの料理のみを楽しみにして行ったところが、この禿げ頭モジャ眉の「執事」があらわれ、仰天するバーティも見もの♪
 それには、ダリア叔母さんと、サー・ロデリック氏共謀の「深い陰謀」があるんですが、それに振り回されるのは相変わらずのバーティのみ。しかも、今回もまたトムおじさんの牛型クリーマーがらみ・・。
 まあ、この中年コンビが面白かったので、クセものの二人を・・。
2016-01

ジーヴスシリーズの三悪童

悪がき

 しつこく、またしてもジーヴスシリーズの登場人物です。
 短編「愛はこれを浄化す」に登場した3人の悪童たち。
 バーティ主従は、夏の暑いロンドンを避けて、郊外の知人のカントリーハウスの招待客となり、優雅な休暇を楽しもうとしています。ところが同じシーズンは、普段寄宿舎に入っている子供たちが夏休みなんですね。
 あてにしていた知人のところに、一目見ただけで殴り倒したくなるイヤミなガキのセバスチャン(ムーンおぼっちゃま)がいると知って、ダリア叔母さんの屋敷に転がりこむことにします。
 ここにも、叔母さんの息子のボンゾという13歳の少年がいますが、この子はあまり才気煥発ではないので、安心して訪問すると、なんと予想もしない悪ガキ中の悪ガキであるトーマスがいるではありませんか!
 トーマスこそは、バーティの悪ガキランキングの五指のトップにくる少年で、なんとしても避けたい相手。
 しかも母親のアガサ伯母さんが海外旅行に行くので、ダリア叔母さんに息子を押しつけてきたらしいので、一人で滞在している・・これってやりたい放題ってことでしょう。
 しかも、この家には今、心臓の悪い老紳士が避暑にきているんです。
 波乱必定・・・と思いきや、この老紳士が二人の同年代の少年がいるのなら、道徳教育をしようと思い付き、より良い善行を行う少年に、お小遣いをあげようと、日々の善行得点表なるものを付け始めた。
 かなりの額のお小遣いなので、悪童トーマスも別人のよう。
 子供も子供なら大人も大人で、ダリア叔母さんは、滞在客の夫人の一人と賭けをするんですね。
 どう考えても自分の息子ボンゾのほうが「いい子」なので、気が大きくなって、その夫人が自慢のキッチンメイドをかけたので、なんと彼女は絶品シェフのアナトールを賭けた。
 聖人君子のようなトーマスを面白がっていたバーティですが、叔母さんがあせりはじめ、なんとかしてとバーティに頼み「トーマスの化けの皮をはがしておくれ」ってとこです。
 トーマスの「聖人」ぶりはすごいもので、気難しい紳士の言うことを素直に聞いてどんどん点数を上げていく。
 こうなったら、たよりはジーヴスです。
 「ムーンおぼっちゃまをこちらの御屋敷に招待なさいませ」との助言を得て、バーティが逃げ出してきたところの、もう一人の悪童セバスチャン・ムーンを投入。
 この二人を一緒にすれば、絶対トーマスがキレて、セバスチャンを殴り倒すに決まっているって・・・大人げないなあ・・。
 ところがトーマスの「聖人」ぶりはこわれない・・。
 どうしてトーマスがこれほど「聖人」になったかというと、高額の小遣い欲しさではなく、彼が憧れの女優にふさわしい立派な男になろうと努めているということが判明! え~! な展開でしょう?
 そこで、またジーヴスの一押しというか、彼の最終兵器がしたたかだったというべきか。
 トーマスの憧れの女優を、セバスチャンがこきおろし、怒り狂ったトーマスが、水の入ったバケツを持って追いかけ、
運悪く・・か、ワザとか、老紳士が昼寝をしているところになだれ込み、そのバケツの中身は老紳士にぶちまけられた。
 ・・で、ダリア叔母さんはアナトールを手放さずにすんだ・・というものです。
 大人も子供もたちが悪いですねえ・・・。 
2015-12-28

ジーヴス&ウースター3

ジーヴス3

 2000人のプレッシャーが消えたら、なんだか歯止めがききません。
 今ハマってるジーヴスシリーズも国書刊行会版の第6冊目。
「サンキュー ジーヴス」です。
これのラストシーンの会話。
 第一章で、バーティは、ジーヴスと、とうとう喧嘩別れしてしまったんですね。
 彼なしで、新天地に向かうも、いろんな事件がおきまくって、またまた危機に陥るバーティー。
 友人が所有する広大な敷地の中にあるコテージを借りて、新しい執事と暮らすバーティですが、本家の巨大な御屋敷に住む友人が、ジーヴスを雇う。
 新しい執事そのものが災厄であったり、昔の元婚約者とかが入り乱れて、死ぬような目にあうバーティを、影ながら助けるのはやっぱりジーヴスです。
 で、コテージも燃えてしまい、友人の屋敷に転がり込んで朝食を御馳走になる。
 給仕するのはジーヴスですが、もう彼の執事ではないので、傷心してロンドンに戻るというバーティに、ジーヴスは「再度お仕えさせてもらえませんか?」と申し出るラストシーンで、この会話が交わされます。
 バーティは、感極まって何も言えず、コーヒーポットをひっくり返し、ただ
 「サンキュー ジーヴス」
 「滅相もないことでございます。ご主人様。」

 しかし、顔を真っ黒に塗って、黒人バンドマンに変装していたバーティを悪魔と思って、肉切包丁とナタで果敢に戦ってコテージを燃やしてしまった新しい執事のブリンクレイは、その後、どうなったんだろう?
「おのれ! 悪魔!」というところを「あなた様は、悪魔様でございます!」と叫んでいた丁寧な人物ですが・・。
2015-12-25

ジーヴス&ウースター2

ジーヴス2

  この主従は、この間出たばかりなんですが・・・。
ジーヴスシリーズをぼちぼち読んでいますが、「ウースター家の掟」で、登場した、意外にジーヴスが運動神経がいいって場面を描きたくなって・・。無人と思って入った部屋に、突然凶暴な犬が現れ襲いかかってきたので、二人はそれぞれ、近くの家具の上に逃れるんです。
 バーティーは飛び立つワシのごとく、引出箪笥の上に。ジーヴスはツバメのごとく戸棚の上に・・。
このお話について、いろいろはこっちに書いてます。

ジーヴス&ウースター

ジーヴス&ウースター

 イギリスのユーモア作家ウッドハウスのジーヴスシリーズの主人公ジーヴスは、その主人ウースター(バーティ)にお仕えして、ロンドンのフラットで二人暮らしをしています。
 日本語訳では彼は「執事」とされていますが、英語のbutler(執事)ではなくて、valet(バレット。従者とか侍臣で、主の身の周りを世話する係)です。
 ウースター家の血が・・とかしょっちゅう言いながら、わけのわからん「冒険」に飛び込むバーティーは、本名バートラム・ウィルバーフォース・ウースターといい、大金持ちの伯爵家(この本家の御屋敷には執事がいます)のお世継ぎ。
 イートン校、オックスフォード大学出身の24歳の青年というと、花も実もある・・という感じですが、とにかくおっちょこちょいというか、アホっぽい。
 彼をとりまく友達も(名門のボンボンで、名門校出身だというに)みな揃いもそろって、明るいアホ。
 このあほボンのバーティと、それに輪をかけたようなアホな友達が色んな揉め事に遭遇しますが、それらが、どうしようもなくおお事になり、しっちゃかめっちゃかなってしまった暁には、知恵者で策謀家のジーヴスの登場です。
 ズバっと解決、すっきり決着・・・とはいかないで、一ひねりも二ひねりもした処理方法をとるのですね。
 時にはあくどいし、ずるい。おわりよければすべてよし・・ということですかね。
 結局、最終的に一番得してるのは、ジーヴス一人?・・みたいなのもある。

 本家ではなくて、フラットでの主人の日常生活で、家事すべてを仕切っているジーブスは、まあ
 ♪あなたの背広や身のまわりに、やさしく気を配る胸弾む仕事・・♪
 なわけです。
 ですが、ジーヴスは、目線が半端なくキビシイ。
 特に主人には服飾センスがないと決めつけ、趣味の悪い装身具は、容赦なく処分するつわもの。
 彼に断罪されたものは、靴下、ネクタイ、シャツ、カマーバンド、帽子にジャケット。
 そして、女性!!
 ジーヴスの御めがねにかなわない女性は、たとえ婚約者でも、ぶった切られる。靴下なみの扱いなんです。
 このあたり、う~ん・・・主人としては・・だいじょうぶなんだろうか? 勿論、バーティ自身が、ふりまわされて嫌がってる女性なんですけど。
 このような「デキた」使用人がいて、主人は「幸せ」なんでしょうかね?

 ジーヴスのイメージは・・・よくわかりません。
 ゆらめくように現れる・・とか、彼は壁を抜けてくるようだとか、存在感が希薄な感じですので、ふとってはいないと思われます。御屋敷の悪ガキの給仕が、彼の容貌をけなしたとか出てくるので、いわゆる美形ではないでしょうし、ハゲではないだろう・・・。
 一旦気に入らないものを買うと、物言いは丁寧ですが、表情はとてもイヤミなとこが特徴なので、ぶっす~・・とした雰囲気で。
 テレビドラマの一場面で、サロンエプロンをかけて家事をするジーブスがチャーミングだったもので、そのスタイルで。
 「サラダに青虫が入っていたように」つまんでいるのは主人自慢の紫の靴下です。
 ジーヴスネタはまだあるので、こちらにも書きました。
※さらに「増長」して、ハマり・・まとめてみました。
2015-11-27

ベックフォード

ベッドフォード

 ♪砂の嵐にかくされた バビルの塔に住んでいる~ 
 超能力少年は、バビル2世ですが、自ら「バベルの塔」を建設し、、周りに好みの書籍を集めた図書館、美術品を飾った画廊などを、自分自身のためだけに作って、そこに閉じこもって生活をしていた奇人がウィリアム・ベックフォードです。
 イギリスの名門政治家の家に生まれ、母方には貴族の血をひく富豪で、父母は、たくさんの家庭教師をつけて、あらゆる学問を身に着けさせました。
 伝説によれば、5歳の時に、8歳の天才少年モーツァルトを家庭教師にして音楽を勉強したとか・・。
 長じて、快楽と悪徳をテーマにした小説を書いたりしますが、父の後をついで政治の世界に進出します。
 しかし、生来の「悪癖」(美少年趣味)がすっぱ抜かれてスキャンダルとなり、嫌気がさして閉じこもり生活に入りました。
 以後、ゴシック調!のバベルの塔などを持つ広大な城の建設し、自分の趣味だけに生きます。
 この城に招待された数少ない客の中に、ハミルトン卿と、エマ夫人、夫妻の共通の友人ネルソン提督がいたそうです(ハミルトン卿は、母方の従兄弟だそうです)。
 自らを永遠の少年と思いこみたがり、また寵愛の少年たちにも、少年でいるべきことを要求したそうで、「大人」を否定していたのかもしれない・・とは渋沢龍彦氏の分析です。
2011-12-29

バッキンガム公爵ヘンリー・スタフォード

バッキンガム公

 ロンドン塔で消えた悲劇の幼い王子たち・・の物語は、有名な悪役「リチャードⅢ」とむすびついています。
 しかし、この冷酷非情の悪王を、世に出すための陰謀、というものがあるとすれば、その重要な役割を果たしたのがバッキンガム公爵ヘンリー・スタフォードです。
 彼は、父方からも、母方からも王家の血筋を引きながらも、女系であるため、王位を自らが狙えるという立場ではなかったようです。
 しかも祖父も父も戦死して、11歳で公爵になり、当時の国王エドワードⅣの後見を受け、そして、花嫁として、13歳も年上の王妃の実妹を押し付けられます。
 この辺にも、不満があったのでしょうか。政略結婚とはいえ、小学校5年生の年齢で、24歳のおばさんが、妻としてやってきてはいじけるかも・・。
 そのためか、国王が死んだあと、その弟のリチャードが甥から王位を奪う陰謀に加担します。
 ロンドン塔の王子たちを始末したのは、彼だとも言われています。
 そして、さらには、自分が担いだリチャードⅢを追い落とそうとして、こんどはヘンリー・チューダーと組む。
 その本心は、もしかして二人を戦わして、自分が生き残って王位を狙うという心づもりであったかも・・。
 しかし、この反乱に失敗し、ヘンリー・チューダーはフランスに逃げ、バッキンガム公爵はつかまってしまい、結局処刑されるという末路。策士策に溺れるというところだったのでしょうか・・。
 あるサイトで、今残る彼の肖像画が、20代であるのに、中年男みたいだし、しかも、あまりにブサイクなので描き直すぞ・・というのをやっておられて、私も描き直してみようと・・。
 ちなみにバッキンガム公爵というのは、彼で一旦途絶え、ヘンリー7世の時に復活しますが、当時の公爵が処刑されたため断絶します。 
 100年の後に、この一族とは何の関係もない、ジェームズ一世の寵臣ジョージ・ヴィリアーズがバッキンガム公爵に叙任されます。この人が三銃士に出てくるぶっとんだ公爵です。
2011-11-29  

ウィリアム・セシル

セシル

   エリザベス一世の宰相として、あまりにも有名なこの人物ですが、映画などでは重厚な老人として、いかにも頼りになる苦労人の「じいや」といった雰囲気で登場しますね。
 肖像画を見ても、白いひげをはやして威風堂々とした長老風。  
 この間、ブーリン家の姉妹のシリーズの「宮廷の愛人」を読みまして、この「じいや」にして「参謀」のウィリアム・セシルがなかなかに「お気の毒」で、面白かった。
 あまり高貴な身分の出身ではなかったことから、さげすまれていたのかどうか、主役?のロバート・ダドリーには嫌われているんだけど、便利な実務家扱いをされるんですよね。
 しかし、外見は地味でフケていた?としても、中身はなかなかの策士ですから、一筋縄ではいかない御仁。
 実際には、即位前から、エリザベスの個人管財人を10年もやっていた「お屋敷の顧問弁護士」みたいな感じの「家令」だったんでしょうが、エリザベスって25歳で即位してますよね。
 この「お嬢様」に10代から仕えていたということは、実年齢は干支一回りくらいしか違わない顧問弁護士は、最初は三十前後だったはず。エリザベス即位の年でも38歳なんですよ! 
ぜんぜん「じいや」ではありません。イメージとしては「謎解きはディナーの後で」(東川篤哉・小学館)の執事の影山でもいいんじゃないですか・・? え? 違うって? 
 セシルの有名な肖像画から、若作りしてみました。
 ※ブーリン家の姉妹  3 宮廷の愛人(上) (集英社文庫)
 ※謎解きはディナーのあとで
2011-09-10

オリバー・ハドゥー

オリバー・ハドゥー

 サマセット・モーム「魔術師」に登場する奇怪な人物。
 本棚から探し当てたこの本を読んで、この奇怪な魔術師の風貌に興味を持ちました。
 モデルは、アレスター・クローリーだと言われていますが(現に、モーム自身が彼と知り合いだった)、クローリーの写真などのイメージとは違うような気がします。
 ただ、これでもか、これでもか・・というくらい奇怪で不快な人物の外見を書きたかったのではないかと・・。
 原作では、髪がもう少しあって、額とてっぺんが剥げていて、ひどく行状の悪い坊さんのトンスラのようだと書いてあるので、まあ、いわゆるカッパ禿なんでしょうが、ほとんどハゲにしてみました。
 ストーリーの展開上、できるだけ「不快な人物」に設定しなければ、見目麗しい、清らかなマーガレット嬢が、このおっさんに魅かれるなんて、なんていうおぞましい!・・と読者に想わせなければならないからでしょう。
 だから、不気味で青白いミイラみたいな、油の抜けたじいさん魔術師ではなく、巨大な体躯。大きな顔からして、太くてたるんでいて、肉感的で、ぬらぬらした唇・・なんて。で、目つきはたまらなく不快・・目の焦点が合わない、ものすごく薄い青・・ということになっていますが、悪魔の目は緑なんだそうですから、緑にしてみました。
 不気味で不快なおっさん・・にしあがってますでしょうか?
魔術師 (ちくま文庫)
2011-07-16

カンバーランド公爵

カンバーランド

  ボニー・チャーリーを出したら、彼のライバル(それも、徹底的に負かされたほうの)カンバーランド公を出さねば・・と思っておりまして、画像を探したところ、おっさん年齢になってからの(といっても30代ですが・・)ややふっとい肖像画しかありませんでした。
 カンバーランド公ウィリアム・オーガスタスは、スチュワート家を追い出した後のハノーヴァー朝のジョージ2世の3男で、ボニーの反乱を殲滅した頃は、いまだ25歳の若々しい将であったと思われますが、まあ、若い時から肥満していた・・ということも考えられるかも。
 「屠殺屋」のあだ名を奉られるほどエグイ戦いをしたそうですが、小さな軍を率いて闘うと勝ち、大軍を率いると負けたそうです。
 それは、どちらかというと、自ら剣をふりまわして、おらおらおら~っ!と攻める時に才能を発揮する、肉体派のタイプなんでしょうね。
 高いところから眺めて、アレがこうきたら、これがこうなるというような戦略を駆使する頭脳派ではなかったようで、マッチョだったかも。最初海軍に入ったけれど、むいておらず、陸軍に転身したというのは、やはり走り回るほうが、性に合っていたのでしょう。
 しかし、反乱鎮圧後、あまりかんばしい戦果を上げられず、やがて馬に熱中し、サラブレッドを産んだとされる名馬ヘロド(ヘドロではありません。ヘロデ王の名にちなむ文字通りキングヘロドと呼ばれていた名馬です)を作ったとして名を残しています。
2010-10-13

ボニー・チャーリー

マイボニー

  ボニー・チャーリー(いとしのチャーリー)は、「マイボニー」として知られています。

  ♪ My Bonnie is over the ocean.
    My Bonnie is over the sea.
    My Bonnie is over the ocean.
    O bring back my Bonnie to me.♪

 歌の意味は、文字通り、
 私のいとしい人は大海を越えていってしまったわ
 私のいとしい人は、海を越えていってしまったの。
 私のいとしい人は、大海を越えていってしまった。
 おお、返してちょうだい! いとしい人を私に。 

 マイボニーこと、チャールズ・エドワード・スチュワートは、れっきとしたイングランドの王族の一人です。
 カトリックであったことから、名誉革命で王国を追放されたジェームズ2世の孫にあたります。
 フランスに亡命後、ジェームズ2世と、息子のジェームズ父子は、捲土重来を期して、本土に上陸を果たすも戦い破れ、しかも後援者のルイ14世が死んで、フランスを頼れず、結局、ローマ教皇のお情けでローマに逃れます。
 そして、ついに時が流れ、ローマ生まれの孫のチャールズの時代になってしまいますが、26歳の若い王子は、スコットランドの反乱軍と手を結び、本土に上陸、破竹の勢いで都に迫ります。あわや、ロンドン陥落か・・というところに、猛将カンバーランド公爵に率いられた国王軍に散々に破れ、チャールズは、命からがら(女装までして脱出したというお話があります)、ほうほうの体で、再び、海の彼方にはたき出されてしまいます。
 彼にとっては、生まれ故郷のローマに戻り、王国復興の野望潰えた後は、全てに希望を失ったのか、放蕩三昧、享楽の退廃生活をして人生を終えたそうです。
 しかし、そのようなチャールズでも、スコットランドでは、若き英雄に戻ってきてほしいという願いが「民謡」となって歌われたのでしょうね。
 ルイ王朝風の宮廷コートを着て、ブリーチをはかずにキルトをつけた姿の肖像画がありますので、珍しいなと思って、描いてみました。ご本人の目つきはなんとなく、軽薄そうなのですが、淋しげです。
2010-10-06

サットン・フーの貴人

サットンフー

 イングランドの七王国の一つイースト・アングリアの王が葬られたのではないかと言われている古い塚が、サットン・フーの遺跡です。
 船を墓室とする船葬墓で、副葬品も豊富で、コインや装身具以外に、仮面のついた兜が出土し、大英博物館の目玉(というには少し地味ですが・・)として有名ですね。
 この墓の主は、イースト・アングリアの王で、625年に死んだレッドウォールドではないかと言われていますが、被葬者は断定されておらず、彼の息子、甥などという説もあるようです。ただ、7世紀のアングロ・サクソンの部族長の一人であることは確かなようで、どのようなイメージだったのか・・と、なかなか想像力を刺激します。
 仮面つきの兜にしても、バイキングの遺物に似ています。このサットン・フーの兜にしても、埋葬された時代よりも古く、500年頃の伝世品ではないかという説もあるようです。
 例によって、「世界の生活史」(東京書籍)のイラストのレッドウォールド(レドワルド)の衣裳がなかなか面白かったので、同じようないでたちで描いてみました。仮面はつけていませんが、復元すると、銀の板に毛彫りを施したベースに、黄金で眉や鼻などを作っていたようです。 
2010-08-28

モルガン・ル・フェイ

モルガンルフェイ

 先日、前に出したマーリンとあわせて、実はこの「魔女」モルガン・ル・フェイを構想していたのですが、ホンモノ?の「魔女の一撃」で、またしても不本意な一週間を過ごしていましたが、まあ、なんとか大丈夫になりました。
 で、19世紀の画家が好んだような、いかにも魔女っぽく、エジプトの神官のような豹の毛皮を着せようと思っていたのですが、夢枕で、「わらわは、そのような毛皮を着るような野蛮な格好をしてはおらぬぞ。金色の縁飾りをつけた白いマントを着ているのじゃ」とおおせられまして、魔女ではない・・とのこと。
 伝説では、アーサー王の異父姉妹であるという説もあり、魔術師マーリンのライバルでもあり、なにやら、卑弥呼と男弟、天照大神と素盞嗚のような関係かもしれぬ・・と思いつきまして、太古の女性神官、あるいは巫女のようなイメージにしてみました。
2010-08-25

魔術師マーリン

マーリン

 アーサー王伝説とは、切って切れないのが魔法で、かくいう故に「剣と魔法」と言われるのでありますが、聖杯伝説など、キリスト教的要素を含めながら、包括する要素は一筋縄ではいきません。
 有名な伝説の魔術師マーリン(本名はマーリン・アンブロジウスというそうです)は、アーサー王の補佐で助言者を努めたというから、いわば、おかかえ軍師みたいな立場だったのでしょうね。風を呼んだりする神がかった孔明ちゃんとか、公孫勝みたいなもんでしょうか。
 マーリンのモデルという実在?の人物が6世紀頃にいるそうですが、まあ、伝説のほうが面白いかも。
 12世紀にイングランドの聖職者ジェフリー・オブ・モンマスが「マーリンの予言」とか「マーリンの生涯」という本を書き、伝説が広がったのですが、13世紀の絵入り写本で、マーリンが、紺色でとんがり帽子のようなフードがついた長衣を来た白髪・白髯の老人として描かれて、東洋の仙人みたいなイメージになりました。
 この伝統のイメージは、今もさまざまな「魔法使い」の姿となっています。
 え~・・ひょんなことから、映画「魔法使いの弟子」を見たのですね(勿論、モトネタ?のミッキーマウスが箒に水汲みをやらせるアニメも知っていますが)、伝説の大魔術師マーリンは白髪・白髯の老人でした。
 伝統にのっとって、とんがり帽子のフードつき、金装飾のある紺色の長衣でもよかったのですが、「ストーン・ヘンジはマーリンが作った」なんていわれていますのでドルイドでもいいかなと思うので、白い長衣に青いフードつきマントにしてみました・・・って、これ、黒いマントにすれば、ドミニコ会の修道士の服装とそくりですね。ねじまがった長い杖は、大仰なので、タロットの魔術師が持っている「棒」のようなものにしました。
2010-08

エドワード6世

乞食皇子

  たった6年の在位で、しかも10歳から16歳という、全く業績があったかどうかわからないような年齢の王様でありながら、この方が有名なのは、かのヘンリー8世の王子で、エリザベス1世の弟だからです。
 ヘンリー8世は、世継ぎの王子が欲しいために次から次へと王妃を変え(このへんが一夫多妻の東洋の君主と違う苦労ですね。正妃の子供でないと嫡子ではないのです)、結局この人が生まれたことにより、一応、王位安泰・・と思ったのでしょう。母親のジェーン・シーモアは産褥で死んだ不幸な王妃でしたが。
 しかし、この王子は生来病弱で、10歳で即位し、16歳で亡くなりました。どれほど王位の安泰を願ったかしれないヘンリー8世の後継者は、まさに親の因果が子に報い~という通り、王の夭折のあと、ジェーン・グレイの悲劇や、メアリーとエリザベスの確執にまで引き継がれます。
 この影の薄い若い国王を、「名君」として描き、またその名君となるに至るドラマを作ったのが、マーク・トゥエインの小説「王子と乞食」です。
 この小説は、容貌が瓜二つの人物が入れ替わるという、よくある通俗ドラマの典型ですが、これに登場するエドワード王子は、勇気と包容力に富み、とても10歳とは思えぬ行動力のある少年です。
 一方のトムも、ならず者の息子ながら、近所の貧乏神父に読み書きとラテン語まで習い、本も読んでいるという、教養ある少年(この神父が、元は身分ある高僧だったけれど、ヘンリー8世の宗教政策で失脚したとされているのは、歴史小説的な設定です)。 
 ところで、この物語は、大昔に私が持っていた絵本(講談社絵本の「こじき王子」だと思うのですが、確証はありません)で、騎士ヘンドンが王子を抱えて馬で走るシーンが、馬を下から見上げる構図で見開きに描かれており、大迫力でした。いまだに、私が、馬の絵が好きな理由はこの本にそのモトがあるんです・・なんてまあ、これは個人的なことですが・・・。
 肖像画のエドワード6世は、やさしげでひ弱そうですが、ちょっと「目ぢから」のある少年の雰囲気で描いてみました。
2010-05-22

ハワード・カーター

ハワードカーター

 いまやエジプトといえば、まずツタンカーメンというほど有名な王様です。「王家の谷」という言葉も、ポピュラーですよね。
 勿論、ヨーロッパ人の「エジプト好き」は、古代ローマの時代からありましたが、近世においては、ナポレオンのエジプト遠征にはじまり、ルーブル初代館長のドノンさんや、シャンポリオンなどの「スター」はいますが、やはり決定打は、ツタンカーメンを掘り当てた(というのはあまり好きな言葉ではないのですが)この人でしょう。
 ハワード・カーターの、苦難の発掘ドラマは、マンガや本にもなっているので有名ですが、彼の名は、発掘成果以上に、「ファラオの呪い」ということでも、スポンサーのカーナボン卿とともに世に広まっています。
 しかし、小学生向けのミステリにもなっているこの呪い騒ぎは、色々検証されていて、実際に死んだのは、発掘の翌年に病死した(以前から病身であった)カーナボン卿だけだそうです。
 ハワード・カーター自身は、呪いとは関係なく、この発掘の後も二十年近くも研究を続けていたのですから、やはり作られた伝説でしょう。
 今は、壁画の損傷のほうで話題になっている「高松塚」も発掘当初、週刊誌で「呪い」がささやかれたこともあるのですから。
 カーターはもともと絵描きで、発掘現場の図面を描くために雇われた人だったんですよね。そういえば、ドノンさんも絵描きだし、ローマ市内の遺跡の発掘は、教皇庁の命令でラファエロがやっていたんです。
 いかにもイージーですが、黄金の仮面を背景に、カーターさんです。写真では、手には本をもっているのですが、使いふるしたスケッチブックなどだと面白いなと、少し大型にしてみました。 
2010-05-19

ジェーン・シーモア

ジェーン・シーモア

 ヘンリー8世は、6人もの女性を次々に王妃にして、そのうち2人もの王妃を処刑しているので、悪名高いのですが、まあ、よほど世継ぎの男子がほしかったのでしょう。
 イングランドはサリカ法典を採用していなかったので、女王でもいいのですが、女性が王となると、その夫になる人物が問題なんですよね。力のある国などの王子などをうっかり婿にしてしまうと、乗っ取られる可能性があるんですね。そればかりか、本国の揉め事まで持ち込む。
 ということで、どうしても世継ぎの王子が欲しかった・・・ただただ、それだけの理由です。
 好色だとか淫乱だとか言うなら、王様のまわりには、沢山美女がいるのですから、手当たり次第、選り取りみどりですよ。
 かのナポレオンですら、皇帝になったとたんに世継ぎほしさに、妻を取り替えるんだから、王様稼業は大変ですねえ。
 で、そのヘンリー8世の世継ぎを産んだ唯一の女性がジェーン・シーモア
 かのアン・ブーリンの侍女で、彼女とは全くタイプの違う大人しやかで、従順な女性だったとか。しかし、彼女が王妃であったのは1年ちょっと・・・つまり、妊娠して出産したそれだけの期間だけです。産褥で死んだのですから。
 多産の家系だったために王に見初められたので、まさに目的を果たす(王子を産む)というためだけに存在した感のある、影の薄い女性ですが、アン・ブーリンの離婚や処刑などの経過も当然知っているのでしょうから、生きていればしたたかな王妃になったかも・・・。
 その子供のエドワード6世も、王位を継ぎはしたものの17歳で早世しましたので、母子ともに影の薄い存在です。
2010-04-28

ヴィクトリア朝の女官

ヴィクトリアの女官

 何処の国においても、王妃や王に仕える宮中の女官というのは、単なる裏方ではなく、本人が望むと望まざるとに関わらず政治的な色彩を帯びて来るものです。
 王やその家族の存在が政治的なものだからですが、彼らの身の回りを世話し、秘書を務め、実務を時には補佐し、極端な場合は国王や王子たちの「愛人」までつとめる場合もあり、思わぬ権力を手にするという場合もあります。
 ましてや、仕える国王が女性・・つまり女王であるとするならば、その存在感は増します。
 ということで、実は、平日のレディスディーの朝っぱらから無理やり時間を作って、映画「ヴィクトリア女王ー世紀の愛ー」を見てきましたので、あの時代の絢爛豪華な衣裳の数々を堪能してまいりました。
 会場に期間限定で映画の中で使われた衣裳が展示してあると言うのも、目的だったのですが、主人公の二人、タイトルからして、若きヴィクトリア女王その夫の物語なのですが、周りの人物がなかなかに面白かったですよ。
 すごく印象的で、あの目つきはどっか見たことがあるのに、誰だかよくわからないなあ・・と思っていた宰相メルバーンが、なんと!! シラスだった~!ひえ~! 
 それに、叔父にあたるレオポルド公もカッコよかった・・。この人が自分の別の甥を、イギリス女王であるところの姪の夫にしようとやっきになっているんですね。政略丸出し・・。
 女王の母の秘書官で権力志向のコンロイも「悪い男」で、この個性的なおじさん三悪人が目だってたので、いかにもアルバート公は(主役なのに)小物に見えましたね・・うん・・まあ、あまり印象的ではなかったなあ。
 で、宰相のメルバーンが送り込んだ女官長がなかなか素晴らしい衣裳を着ていまして、印象に残ったので描いてみました(かなり細めの身体に修正?していますが・・)。
 この時代は(1840年頃)、まだクリノリンがあらわれておらず、かといって身体に密着したスケスケ衣裳のエンパイアスタイルはすたれていて、過剰な装飾もなく、かなりすっきりしたシルエットだったのですね。ウォルト(ワース)のようなデザイナーが出るのはまだもう少し先です。 
2010-01-21

パーシー・ビッシュ・シェリー

シェリー夫
 
 フランケンシュタインでおなじみのメアリー・シェリーの、大いに問題ありの詩人の夫
 P・B・シェリーは、英国貴族の家に生まれ、頭脳明晰でありながら、学校ではいわゆるいじめられっ子だったので、読書に明け暮れる早熟の「危険思想家」となったもようです。
 無神論のパンフレットを出版したことから、オックスフォードを退学させられることになります。
 プライドの高い父親が、裏で手を回して退学取り消しを画策したので、親子の断絶もおこし、勘当されて放浪することになります。
 この時、妹の友人であったハリエットという少女を伴って、スコットランドで結婚します。ところが、彼は、「結婚」についてとても自由すぎる考え(友人と妻を共有するというような過激思想)を持っていたため、ハリエットはとてもついていけないと考えるようになります。
 そのような妻をうとんじて・・というより、その頃の新しい彼のマイブームは政治問題で、ロンドンのゴドウィンという無政府主義者の家に入り浸るようになる。
 そこで知り合い、恋に落ちたのが、ゴドゥィンの娘メアリーです。ゴドゥィン自身も自由な結婚観を持っていたとはいうものの、娘の事に関しては、やっぱり「父親」で、「あんな男はけしからん!」と猛反対。
 やがて二人は駆け落ちをして、放浪することになる。この間、メアリーの義妹のクレアもつれて行き、いかがわしさ満杯のバイロンとその男の愛人も加わって、三角関係どころかペンタゴンじゃあなかろうか。
 そういうわけのわからない生活が、彼の詩作の源泉であったのかもしれませんが、キリスト教の神や聖人も否定して、そのかわりに「美」を信奉する・・とか、古代の神々は、偉大な帝王の業績に「絶望せよ!」とか、過激な言葉を吐くところは、結局は絶対者の「神」から逃れるすべだったのかも。
 この人騒がせな妄想男は、生涯どのような職業にもつくこともなく、泳げないのにヨットに夢中になって、水死しました。30歳。
2009-10-27

メアリー・シェリー

シェリー妻

 フランス革命の時代において、女性の自立と独立を目指したフェミニストの母と、牧師くずれの無政府主義者の父との間に、ロンドンで生まれた娘がメアリーです。
 彼女は、結婚を否定していた両親が、生まれてくる彼女のために、あえて結婚して生んだ娘ですが、母は出産直後に死に、再婚した父のもとで、異母や、異父の姉妹などもいる複雑な家庭環境の下に育ちます。
 その彼女が、16歳の時、父の元に出入りしていたパーシー・ビッシュ・シェリーと熱烈な恋に落ちます。
 この詩人は、いささか常識とはかけ離れた人物で、自分の身重の妻に「とても気に入った女性が出来たので、3人で楽しくやろう」なんて言い出す。こんな話、通ると思っていたのでしょうか? 案の定、妻は怒り心頭、メアリーの父親も激怒。
 そして2人は、駆け落ちするのですが、そのとき、メアリーの妹クレア(父の再婚相手の娘)がついてくる・・・これも不可解・・。
 で、彼らが駆け落ちして行ったフランスで、これまた非常識極まりない「芸術的な」生活を送っていたバイロン卿と出会う。
 そして、有名なディオダディ荘で、いかがわしくも妖しい5人の男女が集まるのです。
 この会合については、いろんなところで、いろんなことが書かれているので、やめますが、メアリーは、ここでフランケンシュタインの構想を得たとはあまりに有名な話です。
 彼らが放浪しているうちに、パーシー・B・シェリーの妻が自殺し、メアリーは、正式にシェリー夫人となりました。この頃から「フランケンシュタイン」をまとめ、匿名で出版します。
 しかし、夫婦は(というより夫は)落ち着かず、イタリアに赴き、各地を彷徨う間、次々と子供を産み、次々と亡くすという生活を送り、4年ほどの放浪の後、夫がヨットの海難事故で死亡。
 未亡人になったメアリは、まだ25歳で、手元にはたった一人生き残った子供であるパーシーがいるだけ。夫ともバイロン卿とも、関係を持っていたかもしれない妹のクレアとは別れて、息子を連れてロンドンに戻ることになります。
 以後、彼女は、新たな求婚にも応ぜず、自分で文筆や出版などの仕事をして、1人息子をケンブリッジ大学にまで進学させます。
 名家であった実家からは勘当同然の扱いをうけていた亡夫ですが、義父の死によって、彼女の息子がシェリー家の当主となって爵位も財産も相続することができたというのは、父が逸脱した伝統の男社会に復帰したのです。
 彼女自身は、作家として一家をなしたのだから、母としても、一人の文筆者としても成功者といえましょう。
 肖像画は面長で額の広い、髪をきっちり別けたおだやかな中年・・という感じですが、映画のイメージを加えて、若い頃の雰囲気を想像してみました。
2009-10-25

ジャック・オ・ランタン

ジャックオランタン

 カボチャに目鼻(?)のハロウィンの飾り付けがやたらと目立つ昨今になってまいりました。
 あんなものは、以前は、さほど見なかったのですが、ここんところ、個人の家の玄関にまで、クリスマスのライトアップと同じくらい盛んになってきましたね。
 あのカボチャは、ジャック・オ・ランタンと言って、「提灯男」というほどの意味です。
 アイルランドやスコットランドの鬼火伝説です(あちらでは、男の名前はウィルですので、ウィル・オ・ウィプス)。
 日本風に言えば、成仏?できない幽霊が、墓場の辺りを彷徨っているんですね。つまり、「どこからともなく、なまあたたか~い風が、す~っとふいて、闇夜の墓場に、ぽっつ~んと明かりが・・」というヤツです。そういうのをジャックのランタンだというのだそうです。
 ウィルでもジャックでもいいのですが、まあ、そのジャックが、生前悪いことをして、地獄行き間違いないので、天国の門を守る聖ペテロを騙して、生き返らせてもらう。よほど口先の上手い男だったのでしょう、生き返って、再び悪行三昧、そして、また死んだ。今度は、ペテロは頭にきていて「お前には天国にも地獄にも居場所はないぞ!」と追い出されるんですね。
 つまりは、あの世でも、此の世でもない、中有に(まあ、仏教ではないんで49日たっても何処にも行けない)彷徨うわけですが、死者なので暗い闇の中を、孤独にうろうろすることになる。それを見ていた悪魔が、あわれんで、煉獄の火(あるいは地獄の火)を石炭一つに移して、わけてあげる(う~ん・・聖ペテロより悪魔が優しいのか・・・)。
 ジャックは、悪魔にもらった明かりを、そこら辺に落ちていた、ひからびた蕪をくりぬいてその中に入れ、ランタンとして持って歩いている・・。だから、くら~い夜に墓場のそばで、ぼ~っと明かりが見えたら、それはジャックのランタンなんだそうです。
 それが、新大陸に渡った人々の間では、アメリカには蕪がなかったので、カボチャで代用したのが、今は世界的に広がったのだとか。
 ところで、ハロウィンは、全ての聖人の日である11月1日の前夜祭ということで、仮に死者が蘇ってくる日だということらしいのですが、なんとなく日本のお盆・・というほどには気楽ではない気がします。
 洗礼を受けずに死んでしまったので(霊界での)名前がなくて最後の審判まで彷徨わなければならない子供のオバケだとか、このジャックの話なども、ちょっと物悲しくて、私には、あまり楽しいとは思えないのですが・・・。 
 蕪のランタンを持つ幽霊・・の雰囲気で描いてみました。暗くてテンション下がりますかね?
2009-10-20

プリンス・ルパート

ルパート

 断頭台の王チャールズ1世の甥にあたり、イングランド内戦の時に活躍した王軍の騎士。
 生まれて間もなくボヘミヤ王であった父が、国を追放されたためにオランダで亡命生活を送るなかで成長しました。
 この王国なき王子は、軍人として育ち、イングランド王の姉の息子であったため、イングランド内戦では、王の騎兵隊の指揮官を努めます。
 あまりに勇猛であったので「狂騎士」とあだ名されたとか、彼が戦場で連れていた犬が超能力を持っているとかのウワサの持ち主。
 ヴァン・ダイクの描いた肖像画は、さほど猛将のイメージはなく、おとなしやかな人物に見えますが、なんとなく目つきが一癖ありげな青年です。
 生涯を軍人で過ごした人物ですが、ヒゲのある立派な壮年の絵よりも、ちょっと目つきのヘンな青年将軍というイメージで描いてみました。黒づくめの甲冑は当時の流行であったのでしょう。陰の薄いことで知られるチャールズ1世も白馬に乗って黒い甲冑をつけた絵があります。 
2009-09-21

マルク王

マルク王

 コンウォールの領主マルク王です。
 伝説の物語トリスタンとイゾルデは、その悲恋ぶりといい、妖しげな薬物(毒薬と媚薬)といい、ロミオとジュリエットのモトネタだと言われているのですが、登場人物の中で、悲劇になる原因は、どちらにしても、このマルク王です。
 彼が、善として描かれる場合と悪として描かれる場合がありますが、その善悪どちらでも、悲劇が起こりうるというのがミソですね。
 単純に言うと、王の甥のトリスタンが、王の代理として、政略結婚の花嫁を迎えに行って、その花嫁に手を出してしまった・・それだけのストーリー。
 結婚式の後も王妃と甥との不倫は続いていて、それを知って怒った王が、甥を成敗する・・というのが「悪い」王様のお話。
 王妃と甥の不倫を知って、怒りながらも、王妃も甥も愛しているので悩む王様。甥も王妃も、王様がよい人だと知っているので、不倫しながらも悩む二人・・というのが「善い」王様のお話。
 近代的なのは「善い」王様ですね。
 さて・・このような立場に立たされた中世の王様は・・普通、怒って成敗・・でしょう。
 甥は殺され、王妃は政治的な立場なので、生かされるけれど軟禁状態で、王はヤケで、若い女を沢山侍らせて、遊興三昧・・・これだと、含蓄のある悲劇にはならんなあ・・・。
 悩めるマルク王・・・。
2009-07-25

ブラック・ブランズウィッカー

ブラック・ブランズウィッカー

 ヴィクトリア朝のイギリスで、ドラマチックな・・あるいは感傷的な歴史上の場面などを描いた画家としてミレイは忘れられません。
 ラファエロ前派の立ち上げの時の当初メンバーでもあります。
 ミレイの作品の「ブラック・ブランズウィッカー(黒騎兵)」は、彼の時代の45年ほど前の歴史的事件であったワーテルローの戦いにまつわる「歴史画」です。
 ドアを開けて外に出ようとする兵士の胸にすがった、白いドレスの女性が後ろ手で、その扉のノブをつかんで開かないようにしているところです。
 ただ「まだ行かないで」という別れがたい恋人のドア前のやり取り・・とも受け取れるのですが、この黒い制服の騎兵隊は、ワーテルローで全滅している・・という歴史的事実を皆が知っているので、ただの感傷では終わらない悲劇的な主題を含んでいます。
 騎兵の軍服は、ほぼこちらの兵士と同じ形式なのですが、色が全部黒・・というところに、ちょっと興を持ちまして、私の持っていた画集の中にたしかあったはずと、長い間探していて、見つからず(整理が悪いのですが)、やっと先日出てきたので、騎兵のみを描いてみました。
2009-07-05
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乱読F

Author:乱読F
歴史上の人物を沢山描きたい・・。
実在・架空2000人描き

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