菊の女童

菊の女童

 着せ綿という風習が、中国から伝わったとうことながら、平安時代には宮中などで行われていたようです。
 菊の節句の前日に菊の花に綿をかぶせ、菊のしずくをうつして、それを不老のめでたい「薬」として、顔にあて化粧水にすると、美肌が保てるとか・・。紫式部日記にその記載があります。
 旧暦の重陽の節句が9月9日に当たるのですが、2016年は10月9日だそうです。
 少し遅れましたが、菊の花に着せ綿をし、それをとりはずしている少女・・という雰囲気で。
 現在の着せ綿は、菊の花ひとつひとつを薄い綿でくるんでするもののようですが、風俗博物館の復元人形では、源氏物語の一場面として登場する着せ綿が、菊の花の上にふんわりと綿をおく・・というようにしてあったので、そのように・・。
 衣装は細長です。
2015-09-17 
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書を読む少年

書を読む少年

 復古大和絵と言えば、冷泉為恭ですが、彼の王朝趣味は、黄金の霞の彼方に点々と浮かび上がる、非現実的な美しさの王朝世界です。
 実際に彼自身は、幕末の人ですから、王朝文化の盛んな時代に暮らしていたわけではないのですが、ひたすら古き良き時代にあこがれ、自身の筆でそれを描き出す・・ということを使命としていたようです。
 そんな彼の絵のなかに、いかに王朝風とはいえ、やはり江戸時代という文化的に成熟しきった時代なんだなと思わせる部分に、「見立て」というようなものがある気がします。
 というのも、江戸時代には、今のマンガにあるようなキャラの女性化だとか、時代変換だとかはお芝居やら小説、勿論、絵描きもやっていたことです。
 戦国武将のイケメン化だとか、水滸伝の英雄たちを女性化するだとかいうのも、すでに江戸時代にはありですから。
 冷泉為恭も、王朝風の絵を描きながら、鯛をつる恵比寿を、華麗な狩衣を着た若い貴公子に置き換えたりしています。
 そして中国では古来、士人の教養とされる琴棋書画をたしなむ図を描いていますが、これも髭のはえた立派な大人の士人の姿ではなく、少年化しているのです。
 彼は、美青年や美少年が好きだったのか・・というより、まあ、おっさんの絵より、描いていて楽しいかも。
 その書を読む少年は、小葵紋の狩衣に亀甲地に浮線綾の指貫といった高貴な紋様の衣装を身に着け、のほほんとした顔つきで、いかにも育ちがよさそうなほやっとした雰囲気です。
 書籍が入っていると思しき漆の箱は、桜の蒔絵があるといった上等そうな物です。
 有職故実に詳しかったという冷泉為恭は、特に衣装の柄に凝ったそうですので、私風に描いてみました。
2013-04-23

天智天皇

天智天皇

 秋の田のかりほの庵の苫をあらみ
             我が衣手は露にぬれつつ


 秋の田の刈入れ作業のための仮小屋は、葺いた苫の目が粗いので、私の着物はすっかり夜露に濡れてしまったことだよ。 

 百人一首の第1番の栄誉を担うのは、やはり天皇陛下の御製と伝わるこれでございます。
 天智天皇は、言わずとしれた大化改新の中大兄さんでございますから、もうすでに出ていますが、百人一首の絵札の主としてあらためての登場です。
 
 この歌が、実は詠み人知らずの(農民の?)歌であるにもかかわらず、天皇の歌として伝承されてきたので、歌舞伎などでは、蘇我入鹿にいじめられて迫害される流浪の貴人がこの人で、野宿に近い粗末な仮小屋で衣を夜露に濡らしながらお休みになり、この歌を詠んではらはら涙を流す・・などという荒唐無稽な場面があった・・んじゃないかな・・なんて思いますが、これはうろ覚えです(すみません。いつもええ加減なこと書いて)。
 で、百人一首の絵札ですが、これは勿論後世の歌仙絵などから発達したと言われる絵ですから、鎌倉時代くらいの風俗で王朝風に描かれます。
 ですから、光琳かるた風の図では、天智天皇はお引き直衣という衣装を着ています。
 これは通常の直衣よりも長く仕立てたものをいわゆるおはしょりをしないで着るもので、下には指貫ではなく緋の袴をずべら~っと着流す、天皇陛下だけの衣装です。
 この衣装が文献上に出てくるのは11世紀以降ですし、絵となると、かの有名な源氏物語絵巻に、これが描かれているのではないかといわれている「鈴虫の巻」を見ても、よくはわかりません(ただ、天皇がラフな服装をしている場面で緋の袴を裾長くつけているのは源氏物語絵巻と伴大納言絵詞には出ていますが、どちらも直衣は着ていません)が、鎌倉時代にはあったようです。
 その伝統は続いていて、明治以降でも、特殊な儀式のおりに天皇がこの直衣をつけられたそうです。
 で、単に、一度この衣装を描いてみたかったということなのですが、光琳かるたの絵では、黒い直衣ですけれど、古いかるた絵などを見ると灰色なんですね。もしかしてこれは、もともと銀に塗っていたものが変色して黒くなったのではないか?と、勝手な判断をして、やはりここは、南北朝の後醍醐天皇の肖像画と同じで、白いお引き直衣だろうと、白くしてみました。
 お引き直衣の詳細な解説は実に面白いサイトがありまして、丁寧な絵入りがなるほどとうなづけます。ご興味のある方はぜひこちらを(大河ドラマの時代考証についても有意義な記載があります)。

 私ごとですが、この人名事典も、実は本日をもって1890人目となりました。諸般の事情があって、なかなか2000人斬りに到達できないでいますが、やっとここまできたかな・・・?ぼちぼちでんなあ・・。
2012-10-27

殷富門院大輔

殷富門院大輔

 
   見せばやな 雄島の海人の袖だにも
        ぬれにぞぬれし色はかはらず


 あなたに見せたいものですわ! かの松島の雄島のあたりの漁師の袖ですら、いつも濡れっぱなしだというのに、色が変わるっまでのことはないけれど、この私の袖が、あなたのために泣きに泣いて色まで変わってしまったってところを!

 百人一首90番の殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)。
 この方も覚えにくい名前ですよね。
 これも職業上の呼び名で、女官としてお仕えした人が後白河法皇の皇女であった殷富門院です。
 袖の色が涙で変わってしまうほど泣いているという意味ですが、この変わった色というのが、ただ濡れて染料が剥げてしまったというのではなく、血の涙を流して色が変わったという説がありますが、そこまでいくとちょっと技巧が過ぎるような気もしますが、それほどあなたには泣かされているのよ!という意味ですね。
 血の涙はちょっと色的にキツイので、乾く間もなく濡れて変色した・・という程度にしてみました。
 背景を松島にしようかなと思ったけれど、激しい波・・(心の中に立っている波頭・・?)という雰囲気にしてみました。  
2012-10-24

皇嘉門院別当

皇嘉門院別当

  難波江の蘆のかりねの一よゆゑ
      身をつくしてや恋ひわたるべき


 皇嘉門院別当(こうかもんいんのべっとう)。
 この名前のややこしさから、子どもの頃は覚えにくい名前でした。
 何のことはないのですが、院号を皇嘉門院という高貴な女性、つまり引退したお妃さまのとろで、女官頭ともいうべき別当を務めていた女性という意味です。たとえば、県立図書館副館長みたいな、あくまで仕事上の呼び名ですよね。
 そのような味気のない名前ですが、歌の意味は、なかなか凝っています。

 旅先でのかりそめの一夜を過ごしてしまったばかりに、これからずっと、恋焦がれなければならないの?

 というような、行きずりの恋愛が、あとを引くかもしれないわよ、と疑問をなげかける歌です。
 百人一首も終わりに近い88番ですから、時代的には平安末。しかも、この人が仕えた皇嘉門院というのは、かの崇徳天皇の中宮で、父親は藤原忠通。つまり弟の悪左府頼長と争った人。
 優雅な恋の歌の背景には、平安ならぬ時が流れていたかも。 
 光琳風のかるたの絵札では、ちゃんと十二単を付けた女官風ですが、片袖を枕にしているようにもみえる(?)ので、このような絵柄にしてみました。
2012-10-21

俊恵法師

俊恵法師

 よもすがら もの思ふころは 明けやらぬ 
閨のひまさへ つれなかりけり


またまた、百人一首。85番の歌です。

 夜通し、あなたのことを思っていると、早く夜明けにならぬものかと思うけれど、まだ真っ暗な寝室の隙間すらつれないことよ。

 という意味で、明らかに女性が、つれない恋人を思って夜通し悶々として、早く夜明けになってしまえばいいのに・・という切ない意味ですが、こんな女性の寝室の情景を読んでいるのがお坊さんです。
 この俊恵法師は、若くして出家して、後に歌で名をなし、歌会をやったり、歌人と交流をしたり、弟子もたくさんいたという文学僧です。鴨長明はその一人。
 作品の中には、恋の歌が結構多いのですが、恋愛経験が豊富だったのか、想像力が豊富だったのかよくわかりません。
 どこかで子供がいた・・というのも読んだことがあるので、一生不犯の清らかな僧侶ではなく、酸いも甘いも噛み分けた人物だったのかも。
 百人一首の絵札は、年取った高僧風なのですが、ちょっと若くしてみました。
2012-10-16

曽禰好忠

曽根好忠

 ちょっと乱れ気味の王朝風俗シリーズ?第2弾・・??


   由良の門を 渡る舟人 梶を絶え 
        行方も知らぬ 恋の通かな


 たとえば、まるで、由良の海を渡る船頭が、舵をなくしたみたいに、行く先もわからないというのが、恋の道だ。
 というだけの意味です。
 ものすごく久しぶりの百人一首です。
 由良という地名は、淡路島だし、和歌山が対岸で、海峡が狭くなっているところだし、ちょっと下に行くと、渦潮のでる鳴門だし、まあ、ここで舵をなくしてしまうと大変だなあ・・という気はしますが、文字通り、ゆらゆら揺れるという意味をからめているのなら、ダジャレっぽい気もします。
 曽禰好忠という歌人は、一日一首と決めて一年間に三百六十首読んだとか、招かれもしない歌会に出て追い返されただとか、人づきあいが悪かったとか、ちょっと変わった人物だったかも。
 曽禰氏は石川氏の一族だそうなので、石川と言えば曽我氏ですから、藤原氏全盛の平安朝では肩身が狭かったかも?
 恋の行方・・というより、途方に暮れた・・という感じで。
2012-10-13

六歌仙

六歌仙

 先日、月岡雪鼎の六歌仙の絵を見ました。
 平安風というのではなく、やはり上方肉筆浮世絵らしく、それぞれの顔つきに個性がありました。
 まあ、六歌仙はありふれた?画題なのかもしれませんが、男5人(坊さん二人)、女性1人の6人をそれぞれにどう配置するか・・というのは画家の工夫なのでしょう。掛け軸などの縦長の画面にかくこともありますし。
 で、六歌仙は何人か、すでに出ていますが、まあ、月岡雪鼎の絵の配置をぐちゃっとまとめて、風俗を変えて描いてみました。
 あらためて6人ならべると、結局、紀貫之が6人の歌の上手をとりあげているのではなく、「いまいち歌人」を6人ならべたってだけのことなのですよね。
 一応、雪鼎の配置によって後列向かって右から大伴黒主。貫之が、「そのスタイルは下品だ」と言った下級官僚。ちょっとしたたかな役人風で。
 その次が在原業平。「心情に言葉がついて行ってない」らしい。近衛府の軍人なので、軍人の正装で。
 次が僧正遍照。「形はあるけれど誠実さがない」とか。名門の出身で女好き。出家してからも俗気旺盛で、やり手の高僧。後援会などもお金持ちが多そうだし、講和も上手なのかも。
 それから喜撰法師。「言葉が意味不明。はじめと終わりがよくわからない」し、宇治のほうにおった坊主・・というくらいしかわからない人物。お盆には、バイクで檀家まわりしてそう・・・。
 前列、右は文屋康秀。「言葉はうまいが、似合ってない」。成金か一発屋みたいな下級官吏。クールビズの地方公務員風?
 女性は小野小町。「情があるようで、さほど強くない」。実際はよくわからないけれど、「美人伝説」が一人歩きしています。衣通姫の流派だそうなので、スケるドレスを着ています。
2012-06-13

少年の春

少年の春

 「狭衣物語」といえば、源氏物語の影響を受けて作られた王朝物語の一つですが、主人公の優柔不断ぶりとか、物語の展開のご都合主義などから、源氏と並べるのはちょっとおこがましいというか、まあ、数段落ちる出来栄えといわれています。
 しかし、その出だしの

  少年の春は、惜しめどもとどまらぬものなりければ、
  弥生のはつかあまりにもなりぬ。


 これが、当時にあっては、なかなかの名文なので有名ですね。
 もち論「少年の春」というには、モトネタがあって、かの清少納言も愛読したという白氏文集の、なかにある詩です。

       燭を背けてはともに憐れぶ深夜の月
       花を踏んでは同じく惜しむ少年の春


 白氏文集をもとにしているとはいえ、なにやら、春の短い盛りをイメージさせてさわやかです。
 なかなか春らしい天候がめぐってこない昨今ですが、春のイメージを私なりに。
 手には桜の枝を・・・と思ったのですが、狭衣物語には、藤の枝が登場するので、藤の枝を持つ少年です。
 
2012-03-26

朧月夜

朧月夜

 今年は南都が流行っているのですが、ものすごく久しぶりに「源氏物語」です。
数多くの源氏の恋人の中でも、けっこう積極的な人です。

   照りもせず 曇りもはてぬ春の夜の 朧月夜にしくものぞなき
 
 大江千里の古歌を口ずさみながら(多分、少し酔っ払っていい気持ちになっていたんだと思う)、ふらふらと、宴会果てた夜の宮中を歩いているときに、源氏に出くわします。
 袖を捕らえて来たので「まあ、なにするの! 失礼な方ねえ」などと、軽くいなしても、源氏は「私は、何をしても許されるのですよ」と傲慢発言。さっと抱きかかえて、御簾の内側に連れ込んでしまうのです。
 こうして出会う二人ですが、源氏にとっては、彼の失脚を狙う徽殿女御の妹にあたります。そして、将来は東宮妃・・と目されている、いわば敵方の、折り紙つきのお譲様なわけですね。
 そういう女性に手を出してしまう源氏も源氏ですが、それを受けて、更に積極的になる彼女も、なかなかにしたたかな女性です。
 「私と遊ぶのには、あなた、そこまでの覚悟がおありなんでしょうね」と、挑むようなイメージです。
2010-09-04

今上(源氏物語)

今上(源氏物語)

 今上帝といえば、今即位しておられる現役の天皇陛下のことですが、ここで言う「今上帝」は、源氏物語の宇治十帖に登場する方です。
 源氏物語は、過去のことを振り返って語るという形式をとっているので、すでに退位したり、亡くなったりしている天皇は、院号で呼びますので、一応固有名詞があるのですが、宇治十帖の終わる時点では、まだ在位していた天皇なので、院号はなく、ただ「今上」とのみ呼ばれています。即位前が東宮(皇太子)だったことは言うまでもありませんが・・。
 で、この方は何者かというと、女三宮の兄弟、つまりは光源氏から言うと兄朱雀院の皇子ですから、甥にあたります。そして、源氏の一人娘、明石中宮の旦那さまですから、婿でもあります。
 この帝が溺愛する息子が匂宮で、この息子と張り合っている?宮中で評判の貴公子薫をも取り込もうとして、姫宮との結婚を画策している・・という場面が、源氏物語絵巻宿木一です。
 えらくリラックスした、下着というかホームウェアーというか、そういう格好で、訪ねて来た薫相手に碁を打つシーンです。絵巻の復元作業によって、帝は、スケスケの小袖に、下着の緋袴のままで、薄物を重ねて袖を通さず羽織っているという様子がわかりました。伴大納言絵詞でも、このようなラフな格好の天皇が、衣冠束帯の臣下を謁見している場面がありますので、親しい者には、こんな姿で、気楽にお会いになったのでしょうね。

 ※ 本日12月12日は、この人名事典の4周年にあたります。ブログだと容量の関係で、3年くらいしかもたない・・などと言われていましたが、Blogariさんの容量も増えて、4年目に突入できました。当初は、一年続けよう、そして500人までやろう・・次は1000人斬りと、目標を増やし、今は人数的には1340人くらいになっています。ひとえに、訪問して下さる皆様のおかげと感謝しています。あと、残り容量一杯まではなんとか続けたいと思いますので、今後ともどうぞよろしく。
2008-12-12

匂宮

匂宮

 宇治十帖の主人公?の二人、薫と大君のウジウジした恋愛を見ていたら、この薫のライバル匂宮は、単純明快。抹香臭いくせにスケベ根性の薫と比べて、「どこぞにええ女おらん?」の一言で、なんでもカタがつきそうな、好き者のあんちゃん。
 この2人は、宮廷のイケメンアイドルで、どちらも男のおしゃれの必須アイテム「香り」を競っていたので「薫る大将」「匂うの宮」と並び称されていたということですが、「薫る」はまだしも、現代は「匂う」は、いい男にはふさわしくない用語ですね。なんだか匂ってきそう・・というと、臭いイメージですが、当時は、まあ優雅な言葉だったのかも。匂いというと、色彩のグラデーションを表わす雅な表現もありますし。
 で、薫は、表向き光源氏の息子ですから、明石中宮が生母の匂宮は、姉の息子・・つまり甥にあたります。母方からすると、女三宮の兄さんの息子なので従兄弟。薫の実父の柏木から行っても血の濃い親戚です。しかし、根暗の薫と違って、家庭環境がおおらかなのか、育ちがいいのか、まあ、ぼっちゃんですねえ。東宮に立っているのは兄なので、気楽な次男坊のせいもありましょうが、天性のものかも。

2008-12-10

中君

なかぎみ

  源氏物語の宇治十帖は、薫・匂宮のライバル?関係にある男2人の間で、翻弄される形になる八の宮の娘たち三姉妹の物語ですが、その真ん中の娘が中君(まんまやん!)。
 長女の大君と薫は、どちらも意地をはった挙句に結ばれないのですが、この2人の恋愛沙汰のとばっちりを直接食ったのが、この中君。
 大君は、自分のところに忍んで来た薫に、中君を身代わりにしようとしますが、気付かれて失敗。その大君のしうちに「報復」するかのように、薫は、親戚で遊び仲間の匂宮に、あっさり中君をやってしまう。これもある意味、陰険ですねえ。
 結局、本意ならずも匂宮のものになってしまって、上京する中君ですが、浮気で軽薄な匂宮は、新しい女性にすぐに夢中になってしまって、彼女を軽んじますが、その失意の彼女に、あきれたことに、薫が迫って来るんですね。匂宮との間は、一応、自分が仲介役になったんですよ。
 しかも、彼女が妊娠していると知って、また出て行ってしまう(つまりは、それがわかるほど接近したってことですよ)。そして、夫たる匂宮は、何かを感じて、中君を疑う。ほんに、なんという勝手な男たちでしょうか。
 中君は、薫のふるまいは、姉の大君の面影を自分に求めているだけだと知っているので、一番下の異母妹浮舟を引き取って、姉に似ていると薫に薦めます。ところが、ここでまた、軽薄お邪魔男の匂宮は、珍しいものだから、妻の妹なのに、浮舟に手を出す。
 そのあと、この2人の男は浮舟を追いかけることになりますが、まあ、こりない男どもですが、中君は、ある意味「悲恋のヒロイン」にはならなかったけれど、生活は一番安定した・・といったところでしょうかね。 
 妊娠している妻に他の男の気配を感じている夫と、夫が他の女に夢中になっているのを知っている妻。その妻のご機嫌取りに、久しぶりに帰宅した夫と、迎えた妻。そんな二人が、心のうちに悶々としたものを抱えて寄り添っている・・そういう名場面が、切手にもなった源氏物語絵巻宿木三ですが、その中君の雰囲気で描いて見ました。 
2008-12-08

葵の上

あおい

 葵上は、光源氏の最初の正妻。
 身分も家柄もある令嬢(頭中将の姉妹)なのに、将来、お妃の位も夢じゃない人なのに・・・いくら元皇子だとはいえ、後ろ盾もなにもないただ人の、しかも4つも年下の若造の源氏なんかの嫁にされて、そりゃあ面白くないでしょう。
 それなのに、年若い夫は、あちこちで浮気しまくってばかり。極めつけは、大年増(とはいっても20代ですが)の六条御息所。
 おまけに、このおばさんは、葵上が妊娠したのを嫉妬して、生霊にまでなって、恨みつらみを言いに来る。
 思わず「あんたが恨むのは、私じゃなくて、源氏のほうでしょう!」と言いたくなるような生霊にたたられて、とうとう命まで失うなんて、気の毒な人だとは思いませんか?
 車争いは、ありがちなトラブルで、誰もがいい場所を取りたい時は、興奮するものですし、家来たちは名門意識が強いですから、いきり立ってしまったのでしょうね。
 御息所側もコワモテ兄さんを一杯雇っておけばよかった・・・のか・・な? いや・・そうなったら、これはもう、優雅な源氏物語やおへん。乱闘熱血車争い!な~んて、王朝ロマンにはあわんなあ・・。
 ちょっとマタニティブルーな葵上にしてみました。
2008-08-21

蛍の宮

蛍の宮

  源氏物語において、夕顔の忘れ形見、玉鬘は、頭中将の娘ですが、源氏はわざと自分で引き取って、娘分としています。
 しかし、この娘の美貌の噂と、源氏への取り入りなど、若い公達それぞれの思惑で注目の的となります。勿論、源氏自身もそれを画策しているのですから、綺麗な娘を見せびらかせて、楽しんでいるみたいなものです。
 それらの玉鬘にむらがる若い人たちの1人、兵部卿宮(蛍の宮)は源氏の弟にあたります。
 この宮が玉鬘に、熱心に語りかけている時(当然、御簾や几帳で隔てて話しているわけですが)、源氏は横手からそっと近づいて袋に入れてあった蛍を玉鬘の前でぱっと放します。その一瞬に明るくなって、美しい娘の顔が照らされてしまい、男の目の前に素顔がさらされる。
 これは大変なことで、当時の貴族の女性が素顔を男性の前にさらしてしまうなんて、いささかたとえが下品だけれど、素っ裸を見られてしまうくらい恥ずかしいことです。しかも、それを養父たる源氏がやってしまうという、まあ、なんともメイワクおじさん。普通、いくら自慢の娘が美人でも、オヤジが若い部下に風呂場を覗かせますか?(・・って、またまた下品な発想ですみません)
 玉鬘の美貌をかいまみせられてしまった宮は、たちまちホンモノの恋に落ち、せっせと文をよこします。
 そうなると、源氏は今度は玉鬘をやるのが惜しくなって、自分が露骨に言い寄ったりする。ほんと、どうしようもない中年ですね。
 玉鬘は、他の男性の手紙には返事もしなかったけれど、この宮にだけは文を返し、この人が私を「養父のセクハラまがいの親切」から救いだしてくれるかも・・なんて淡い期待も持ったりしますが、結局は、彼女は、かけひきも女心もどうでもいいような荒っぽい髭黒大将にさらわれてしまうのですが、彼女は気の毒ですね。
 昨日、万博公園の日本庭園で「蛍の夕べ」というのに行ってきましたので、蛍の宮など描いてみました。。
2008-06-08

明石の方

明石方

 昨日、京都の文化博物館源氏物語千年紀展を見てまいりました。古い源氏絵ではなくて、土佐派の華麗な源氏物語絵がかなりまとまって沢山出ていて、とても豪華ではありましたが、協賛でやっていた、無料で入れる「紫の縁」という衣裳の展示が大変面白かったのですねえ。
 これは風俗博物館の井筒さんがやっていて、源氏物語の女君の衣裳にちなんだ平安装束を展示しているだけでなく、十二単などを着付けてもらって写真をとったりできるイベントだったので、大広間に、わさわさと女房装束の女性達がいるのですね。中には、男装して光源氏に扮したおばさまや、白拍子のお姉さま、はたまた安倍晴明のようないでたちの二人づれとか、まあ、そういう方たちが楽しげにしていて、見ているのも面白かったですよ。なにしろ、十二単を着ている人が何人もぞろぞろ歩いているのだから。
 ということで、今日は、その展示にも出ていた明石の御方の衣裳を描いてみました。
 花鳥の柄の唐風の白い小桂(こうちぎ)に、濃き色重ね(紫のグラデーション)の衣裳を源氏が選んだのを見て、紫上は、「このような衣裳が着こなせる女性とはどんな人?」と、心中穏かならぬ思いにかられるという、例の服装です。紫上にしてみれば、明石の御方は、裕福な家とはいえ、田舎から出てきた女性だということで、やや軽く見ていたけれども、娘も産んでいるし、終生のライバルです。
2008-05-11

雲居の雁

雲居の雁

 源氏の息子である夕霧の正妻
 葵の上の子供である夕霧は、出産直後に母が死に、母方の祖母、つまり頭中将の母親である大宮に育てられます。そして頭中将の娘の雲居の雁は、母が再婚したために、同じく大宮に育てられるので、2人は従兄妹で、ともに祖母の愛情によっていつくしまれます。そしていつしか、二人の間に純な幼い恋が生まれ、物語は、ほほえましい若い恋人は、困難を乗り越え、結婚して幸せになりましたとさ・・。
 しかし、いかに純真でも、美しくても、時がたてば、日常生活はマンネリ化し、女は次々に子供を産み(8人くらい)、家の中は、日常的にゴチャゴチャし、妻は夫なんか忙しくてかまっておれなくなり、男は次第に「あ~・・ウチの母ちゃんも昔は可愛かったのになあ・・」と、浮気心を起こし、亡き友人の不幸な未亡人などに、あらぬ妄想を抱いて、悶々としている。
 そういう時に、夫が浮気相手の手紙をこっそり読んでいる。これは頭にくると思いますよね。
 なによ、お前は最近太っただって! 髪が薄いだって! そりゃあ、毎年毎年、妊娠させられたら、太りもするわさ。お乳を出すためには、たくさん食べなくちゃいけないんだからね。なに!? うるさいだの、潤いがないだの、子供がこんなにおれば、当たり前でしょう。あたしは毎日、忙しいのよ。ど~せ、夫にかえり見られなかった挙句の、抹香臭い未亡人の家なんか、そりゃあ静かでしょうともさ。いいですとも。私は子供を連れて実家に帰らせていただきます!
 というような情況になり、結局、夕霧は、浮気は貫徹いたしますが、月の半分をきっちりわけて、同じ日数だけ通うようにしたという笑いものになった「まめびと」でございます。
 源氏物語絵巻に、この雲居の雁は2度登場しますが、彼女だけは、着物の前をはだけた授乳や、普段着のシミューズのような薄絹姿とか、とっても所帯臭いおばさんに描かれているような気がします。
2008-03-15

惟光

惟光

 源氏物語の前半は、若き日の光源氏がきわどい恋愛を重ねる(というより、冒険が好きなぼんぼんが、色んな女の子と、大胆に遊びたい)という部分なのですが、いかに源氏がマメなプレイボーイでも、なにからなにまで、全て自分で段取りするのも大変です。
 そういうときに、気がきいて、ちょっとアブないところにも忍び込めるし、適当に女の子とも遊べる。頭の回転も速いし、要領もよいが、無理難題もかなえてくれる・・・。こんな便利な子分(?)がいたら、理想的。
 そういう役回りをしているのが惟光です。彼は、源氏の乳母の子供、つまり乳兄弟ですから、年齢も一緒で、気心も知れている。しかし実の兄弟ではなく、一応、家来で、命令は聞く。これは得がたい弟ですねえ。
 「惟光」とだけ呼ばれていますが、彼の娘が藤典侍というからには、フルネームは藤原惟光というのでしょう。なにやら立派ではないですか。朝廷でも官職を持っているので、全くの使い走りの召使ではないのですが、源氏の若い頃には、悪友というより忠実な家来で、こういう便利な「友人」があればいいなあ・・という典型でしょうね。
 子供の代になって、娘は夕霧の妻になって、5人も子供を産む。いわば、源氏とは二代の縁ですが、健全な部分の「因縁」ですね。
2008-03-14

紫の上

紫の上

 源氏物語の女主人公はやはりこの方でしょう。
 一度登場してはいるのですが、光源氏と長年つきあって、かなり苦労の人。
 なにしろ、どのような美女でも、実家の力が伴わなければ不幸になるのは、源氏の母の桐壺が代表ですが、紫の上も、いわば実家がない状態。母親がいない上に、実父には別の妻がいるし、そこにも子供がいるとなったら、行く場所がないのですね。そして祖母の元にいる少女時代に「略奪」されて源氏のもとに・・。
 その後ずっと、正妻扱いとはいえ、経済的にも源氏におぶさって生きているわけですから、明石入道の裕福な娘にはやはり腹が立ち、おまけに子供がいないので、わが身一つで勝負しなければなりません。しかも、能天気な夫は、かつての愛人の家を改装して女性を集めたパラダイスを作るんですと! 「ここの女主人はアンタや」といわれてもねえ。さらに、気の多い源氏は、ええ年をして、まだ若い女三宮などに色気を見せる。もうやってられんわ、と見捨てようにも「アンタがおらんとわしも死ぬ」などという、超甘えたの亭主。重い病にかかっても、出家もさせてもらえず、最後まで気の毒な人。
 復元された源氏物語絵巻では、御法の章で、紫の上は白と銀の装束。金色の単を重ねた姿で登場しますので、そのような色合いで描いてみました。
2008-03-10

光源氏

源氏

源氏物語の主人公ではありますが、あまり好みのキャラクターではありません。
 どう考えても、自信過剰で、あつかましく、人の気持ちがわからないマザコンで・・・なんて、顔が悪ければ絶対モテないような男じゃあないです? で、こういうのに、ホレてしまったら女はエライめにあう。気の毒ですね・・・紫の上。
 まあ、彼をめぐる人々・・ということで、中年になってからが俄然面白いのですが、絵にならない(ところかまわず、「美しい! 美しい!」を乱発する中年は・・??・)ので、「女にみたてまつらまほし」という少年時代はどんなふうなのか・・・。
 どっちにしても、私のイメージは定まりませんが、伊丹十三さんが、昔テレビで演じた、白塗り、眉つぶしの強烈な源氏がどうしても頭から離れない私です(あ、全然源氏物語とは関係ないのですが、この伊丹さんの源氏にとっても似ているのが、この絵なんです)。
 青海波の衣装というものを描いてみました。舞楽は近衛府に属しているからなのか、舞人は皆武官の装束です。古代の軍楽隊などと関連があるのかも。

2008-03-09

落ち葉の宮

落ち葉の宮

 源氏物語の執筆確認後、今年は千年目にあたるそうです。
 落葉の宮は、朱雀帝の第二皇女です。異母妹にあたる女三の宮に求婚していた柏木が、源氏に三の宮を奪われた・・という形になったので、かわりに妻として柏木のもとに嫁いできた姫ですが、新婚の夫はあいもかわらず、妹に未練たらたらで、少しも省みられず、さらに落葉のようだなどと軽んじられて、少しも面白くはなかったでしょうね。
 その夫が、不倫の挙句に死んでしまい、あっという間に未亡人になってしまいます。そして、夫の親友だという夕霧が「おなぐさめする」などといいながら、だんだんあつかましく言い寄ってきて、ついには略奪同然に囲い者のようにされてしまうなんて、あんまりな待遇ではありませんか。
 
2008-02-16

藤壺

藤壺

 源氏物語の登場人物の中で、藤壺の役割はとっても重要な位置を占めています。
 光源氏の、恋の放浪も、女性遍歴も、みなこの人の面影を求めてのことだし、それは、光源氏最大の失敗ともいうべき女三宮との結婚も、いまだこの人の面影をしつこく求めていたということに端を発します。求めて得られない人だから、その形代を生涯にわたって追い続けた・・ということでしょう。
 と言うとなんともロマンチックな言い草ですが、藤壺の立場に立ってみると、これこそ大迷惑。拒否しきれないストーカーに一生追い回されているようなものです。
 そもそもの、彼女の入内からして、源氏の産みの母桐壺の面影を求めた帝の要請であります。そして、その息子である源氏が母代わりに慕い寄り、しかも、成長してからは、マザコンがらみの色気を見せて、とうとう強引に迫ってきて、子供まで出来てしまう。その訳有りの子供が、皇子として即位までしてしまえば、秘密をかかえた母としては、どれほどの心痛でしょう。
 そして、はじめから彼女を求めてくる男たちは、彼女自身を見ておらず、ひたすら別人を夢想して代役をしいるのですから、気の毒な話ではないでしょうか。
 結局、源氏は、どの女性に対しても、母を求めているだけで、永遠に母離れが出来ないのですから、源氏物語は「母を求めて三千人」のお話なのだ。 
2007-12-15

夕霧

夕霧

  しつこくてすみません。まだまだ源氏物語絵巻にこだわっています。
 夕霧は光源氏の息子で、なくなった葵上の子供ですから、ぜんぜんわけありではない子息です。頭中将の甥でもあるわけで、正統藤原氏と、源氏の血をひくとっても毛並みのよい貴公子なのですが・・彼もまたさほど面白みのある人物ではないし、マメびと、などといわれて、かなり「好き者」であるわけで、その方面でマメなのです。それが証拠に、子供が仰山できる。
 ま、何が描きたかったかというと、「桜の直衣」というものがどんなものか・・それをやってみたいと・・コレは、例の復元絵巻の本にも載っていましたが、赤い色の裏地が、白い表地にうっすら透けて見えて(またまた、透ける衣装です)、ほのかな桜色になる・・という、なかなか優雅な衣装です。
2007-12-03

冷泉院

冷泉院

 実在の冷泉天皇ではなくて、源氏物語の登場人物のほうです。
 光源氏が若気の至りで、父帝の寵愛の藤壺と密通して、出来てしまった子供・・という出生の秘密を持っている人物。何も知らない(ふりをしている?)父帝は、年とって得た皇子を大切にして、跡継ぎになってついには即位してしまいます。
 源氏も藤壺も、この恐ろしい事実を隠し通しますが、これを知った若い帝は、源氏に皇位を譲りたいと言い出す始末。これこそ大スキャンダルで、そんなこと言い出されて、はいそうですかと源氏が皇籍に戻るなんてことできるはずもないので、ある意味、これは大いに源氏を困らせる「息子」の側の仕返しかしら・・などと意地悪な解釈もしてみたり。
 2千円札(今は幻ですが・・)の裏の絵になった源氏物語絵巻の鈴虫のシーンは、この複雑怪奇な父子の向かい会う場面です。これは、30歳を前に突然皇位を退いてしまった冷泉院が、きままな上皇暮しをしていて、名月の夜に源氏を呼んで、月を愛でる音楽会をやっているのです。月明かりの縁先で、父子は一緒に座って、心中は複雑・・という場面。
 復元源氏物語絵巻のこのシーンは色合いが、ブルー系と月明かりの銀や白で統一されていて、青い夏の直衣姿の男たちだけが描かれている地味な場面ですが、装束の表現は凝っていて、薄い直衣の生地が透けて白い下の衣が微妙に透けて見えるとか、赤い下着を着ている人物は袖口に赤がほんのり透けているという、なかなかの場面なのです。 
 透ける夏の直衣と月明かり・・の雰囲気が出ればおなぐさみ・・というところです。
2007-12-02

軒端の荻

軒端の荻

 昨日は空蝉だったので、彼女の「代理」にされた継娘軒端荻です。
 夜這いをかけて、寝所に押し入り、途中で別人だと気付いた源氏は、気をとりなおして?、あらためて口説きに入り、本人に「最初から私が目的だったのね」と信じさせるというのは、たいしたものですが、この女性は、まあ、服装にも態度にもだらしがなく、よく言えばおおらか、悪く言えば大雑把な性格だったので、それなりに「源氏の恋人」扱いに、まあ、結果的には「いい思い出」になったのでしょうね。
 源氏も、「上品さがなくて、イマイチだな」って思っても、そこはそれ、女性にリップサービスは、おさおさおこたりなくて、後に、彼女が結婚したと聞いて、それとなく手紙で「うらみごと」のお遊びをしたりもする、そういう男ですね。八方美人なのですが、いわば、どんな女性にも「ボクのこと忘れないでよ」的な甘ちゃん。
 軒端荻としては、からかわれていても、なにしろ、こだわりのない性格だから、「たった一晩だけれど、あなたも素敵だったわよ」な~んて、彼女も楽しんでいるんじゃあないでしょうか。それでなくちゃあ、空蝉はひどい継母ですよね。
 昨日、今日とやたらスケスケの単衣ばかり描いていますが、先日「よみがえる源氏物語絵巻」という本を手に入れてから、復元作業で明らかになった、レースのようにすける平安衣装が、とっても新鮮で、ちょっとハマりそう。
2007-12-01

空蝉

空蝉

 源氏物語の登場人物の中で、かなり「しっかりした」女性というイメージが空蝉です。
 人妻でありながら、一度は心ならずも光源氏と関係を持ってしまったものの、ずるずると長引かせることなく、以後は拒み通した女性。度重なる文にも断っているのに、あつかましくもしのびこんできた源氏の前で、衣を脱ぎ捨ててするりと脱出したので、衣だけを持ち帰った源氏が「空蝉」と歌を詠んだので、そう呼ばれています。
 で、彼女が寝床を脱出する時、一緒に寝ていた義理の娘(夫の先妻の子)を置き去りにしていて、結局、その未婚の娘が源氏の毒牙?にかかってしまうんですが、この話ってどこかで聞いたことが・・そうそう、薫がしのんできたときに、妹の中君を残して脱出した大君と同じですが、薫は不器用なので、人違いの女性をあっさりとモノにして、ぬけぬけと「実は、前々からあなたを心にかけて苦しい恋をしていました」なんて、どあつかましいセリフの一つもいえない男なのです。
 薄い単衣だけを身につけて、すりぬけるイメージで描いてみました。
2007-11-30

大君と薫

大君と薫

 今回も宇治十帖ネタです。毎度代わり映えのしない私の絵ですので(平安時代の風俗は好きなのですが、実は、人物の描き分けがヘタなので)、またまたイージーに衣装変えをします。
 頼りない戸板一枚を隔てて、心が揺らめく大君と薫は、お互いのプライドが邪魔して結ばれません。
 あっさり身を任せてしまって「たいしたことない女だった」なんて思われて捨てられたりしたら自尊心が爆死してしまいそうな女と、強引に行ってしまって、とことん嫌われる・・なんて男の沽券が憤死しそうな男は、ある意味とっても似たもの同志。すんなりいってたら、案外愚痴っぽいけど似合いのグッチ夫婦になっていた?
 いえいえ、そこが物語で、金持ちだけど出生の秘密を暴かれての没落を怖れる男と、家柄とプライドだけが高い貧乏な女・・うまくいかないでしょうね。女は自分が死ぬことで「完結」してしまって、男は永久に「出し抜かれ」、そのとばっちりを食う妹達は、まあ・・いい迷惑でしょうか。
2007-11-14

浮船

浮船

 大長編小説の源氏物語、最後のヒロインです。
 宇治十帖は、源氏の晩年の子とされる(実は柏木の子供)薫と、源氏の外孫(明石の中宮の息子)の匂宮の2人の貴公子が、宇治にわびずまいする八宮の姉妹をめぐる物語です。 
 姉娘である大君が、薫の愛を拒絶したまま死に、妹の中君は姉の思惑で薫に与えられようとしたり、そのあてつけに薫が匂宮に与えてしまったりと、さんざんな展開だと思うのですが、浮舟は、地方に下って育ったこの姉妹の異母妹にあたり、彼女達よりいっそう不景気な境遇です。
 姉の中君をたよってきたところが、その姉の夫たる浮気な匂宮の餌食になり、また大君に似ているというので薫の思いものになったりと、まあ彼女もさんざんです。
 一体全体に、この男たちも女たちも、ウジウジしている宇治十帖ですが、2人の男に思われ(まあ、早い話が三角関係ですが)どちらとも選べない彼女は、結局どちらも捨てて、尼になる道を選ぶ・・というところで終わっています。どちらの男も、自分勝手で自己中心的だということを見抜いたのでしょうね。男なんかに頼っていては、苦しいだけよ・・・これが、「源氏物語」の結論なのでしょうか。
2007-11-12

とりかえばや兄妹

とりかえばや兄妹

 「ざ・ちぇんじ!」でおなじみ?の権大納言家の兄妹。  
 原作の「とりかえばや物語」は、王朝文学としては異質の設定・・つまり男の兄が女っぽく、妹が男らしくて活発。性格のままに男女入れ替えて育った2人が起こす波乱万丈の物語・・などと昔は単純に面白がっていましたが、女が男として暮らすには平安貴族の社会は、けっこう過酷。
  なにしろ、恋愛などと言うのは、風雅な歌のやり取りや気の聞いた会話で成り立っている(という部分もありますが)というより、政治的なもくろみもからみ、最終的には男が実力行使で、女は不本意な妊娠を押し付けられ、涙に沈みながらもその理不尽な男を頼らなければならない・・。
 つまり、この物語は、こういう世界を描いているのです。  
 登場する主だった女性達は、全てと言っていいほど望まぬ妊娠で困惑している・・こんな「恋愛」小説ってあり?  女主人公(男として宮中に出仕している公達)の妻!は(当然、処女です)、宰相中将(夫の同僚で友人)に、強引に妊娠させられ、しかも2人も産むのよ。男主人公は尚侍(ないしのかみ)として、女装して女性の東宮に仕えているのだけれど、中味は全く男で、東宮を身ごもらせてしまう! 
 女主人公のほうも、男装がバレた宰相中将に迫られて、これまた強引に妊娠させられ、臨月近くまで男の姿で出仕しているけれど、さすがに出産となれば、愛情などない?宰相中将の世話になって密かに子供を産むのです。
  以後、兄妹が入れ替わって(顔がそっくりなのです)、それぞれの世界で落ち着く(女主人公は帝のお手がついて妃になる。
 これで満足するとは・・・割り切れない)のですが、後半部分には「気が弱くて女装していた」とは信じられないほど、オトコに目覚めた男主人公が、次々と女性をモノにしてゆく・・う~ん・・やはり、男中心の社会なのですわ。
  ※とりかえばや物語 (ちくま文庫)
  ※ざ・ちぇんじ!〈前編〉―新釈とりかえばや物語 (1983年) (集英社文庫―コバルトシリーズ)
2007-09-27

柏木

柏木

 源氏物語の中でも、とっても分の悪い立場です。
 頭の中将の息子であり、内親王を嫁にもらうといえば、もうそれだけで出世コース間違いなしの藤氏一族の若手エリートなのに、なんだかつまらない意地のために源氏と張り合います。
 というのも、彼が妻にした落葉宮は「お姫様」の中でも彼流の一級品じゃあなかったってことですよ。つまり院の愛娘女三宮こそが、最高級の姫であったのに、年寄りの源氏にまわった・・このことで、実は彼の「自尊心」が傷ついたんですね。そして女三宮に未練たらたら。「あんな年寄りで、気の毒に。おれならもっと・・」という思いが高じて、不倫にいたるわけですが、これって・・・なんとも自分勝手な恋愛沙汰で、彼女も不幸にし、自分も結局、海千山千の源氏の前に若さを露呈して敗北。歯がゆい男ですねえ。「反逆」したのなら、食い下がらなければ・・。

2007-05-31
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Author:乱読F
歴史上の人物を沢山描きたい・・。
実在・架空2000人描き

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