聖セバスティアヌス(着衣)

聖セヴァスティアヌス2

 聖セヴァスティアヌスといえば、もうすでに一度出しましたが、裸で縛られて体中に矢が突き刺さった(矢の数や刺さっている場所は注文主や画家の好み?)スタイルで描くのが当たり前になっていますが、カルロ・クリヴェッリの描く聖母祭壇画の聖人は、ちゃんと服を着ています。
 それだけでなく、当時のヴェネツィアあたりの洒落者の若者と同じような豪華で美々しい衣装。手には矢をもち、弓を足元に置いて、剣を佩いているので、武人としての正装スタイルなのでしょう。
 きれいに切りそろえられた前髪に、櫛目もバッチリのヘアスタイルに真珠の髪飾りという「おしゃれ」?なこの聖人が珍しかったので。
 顔立ちは若干私風にアレンジです。
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仲介の天使(ガブリエル)

赤い羽根の天使

 お告げの天使 ガブリエルは、すでに出ているのですが、年末になったので、あらためて、多忙のこの方に登場願いました。
 受胎告知をした・・ということで、神のメッセンジャーとして「情報・伝達」全般の守護をする天使です。
 情報化社会では、大いに忙しいことでしょう。
 そして本業以外に、担当地域もあります。
 西方守護のミカエルに対して、東方守護の使命を持つといわれる(無関係に、突然思い出しましたが、北町奉行、南町奉行は、管轄地域の別ではなかったようですけれど)天使です。
 それに加えて、天使としては「出自」がかなり古く、もともと、天使としての役割のすべてを担っていたのではないかとも思える部分もあるそうですが、イスラム教でも、天使ジブリールとして、唯一神とマホメットをつなぐ役割をしています。
 古い絵画などで登場するガブリエルは、明らかに男顔なのだけれど、時代が下がると(天使全体に言えることですが)女性的な外貌になってきます。
 そしてガブリエルは、唯一の女性天使だ・・という説まで現れました。
 その理由は、女性の私室にまで入り込めるのは女性でなければならないから・・ではないかと。
 つまり、マリアの寝室まで突然入り込んで「妊娠しましたよ!」なんて言うのは、男じゃまずいでしょ・・ってことなんでしょうかね。うむむむ・・・・。
 受胎告知の絵柄の面白さは、まあいろいろあるんですが(大塚美術館には受胎告知ばかりを集めた部屋があります)、画家もいろいろ工夫をこらしたんでしょうね。
 また、神の言葉を「仲介」するということからか、人間ではなくのに天使な「聖人」として、神との間を取り次いでくれるという役割もあるそうです。
 またしてもビクトリア朝のステンドグラスから。
 原画はいささか厳しい表情で、ちょっと冷酷そうな顔をしています。
 羽は背景に追いやられ(仏像の光背みたいな感じと言ったらいいでしょうか)、聖職者の服装をして厳かに立っていて、ガブリエルの印である百合の枝と、羽がなければ「聖人」に見えます。
 受胎告知の場面では百合の枝を持っていますが、ガブリエルは錫杖のような杖を持つ姿もあるので、杖にしてみました。
2011-12-09

三人のマリア

三人のマリア

 イエスが処刑された後、三人のマリアが、墓に向かったところ、イエスの死体はなく、天使がいて、イエスが復活を遂げたということを伝えたという伝承があります。
 このとき、イエスの「死後の世話」をしようと墓にやってきた一族の女性3人が、すべてマリアという名前だったということですね。
 この三人は、イエスの母である聖母マリアマグダラのマリア、そしてヤコブの母マリア(あるいはクロパの妻マリア)です。
 このヤコブの母マリアは、聖母マリアの姉妹であるという説があるので、叔母さんにあたる親戚の女性ですね。であるなら、香油を持ってきたマグダラのマリアが、イエスの妻であってもいいと思うのですが、それを言うと、バチカンから叱られます。
 イギリスのビクトリア朝時代に作られたステンドグラスの絵柄がとても面白かったので、3人のマリアです。
 この女性たちの左側には、とても豪華な助祭の服装をした天使がいて、イエスの蘇りを告げているところです。
 多分、左端の女性が、ヤコブの母マリア、真ん中が聖母マリア、そして若い華やかな女性がマグダラのマリアでしょう。
 原画ではマグダラのマリアは左手に香油壺を持っているのですが省略しました・・というか、描きこみ忘れた。
 彼女の持ち物である香油壺を忘れるなんて、大間違いなんですけれど、この場合香油は、持ち物としてではなく、葬られた死者の体を清めるために持ってきた香油なのでしょうね。
 ビクトリア朝の画像ですから、服装は勿論、ラファエロ前派の絵のようなロマンチックで豪華な物語の登場人物のようなものを着ています。
2011-12-07

聖リベラーレ

黒鎧の騎士

謎?の画家ジョルジョーネの絵に、サン・リベラーレ聖堂に「玉座の聖母子」がありますが、聖母子に寄り添うのは、聖リベラーレです。
 この絵を注文したのは、傭兵隊長のコンスタンツォで、彼の息子の菩提を弔う(とう言い方をしていいかどうかわかりませんが、まあそんなようなもんです)ために、息子が葬られる聖堂の壁画を描かせたようです。
 聖堂そのものがささげられている聖人が聖リベラーレなのですが、黒い甲冑に全身をくまなく武装して立っています。
 黒光り・・する甲冑は、魔を払う「銀」の甲冑だそうで、銀の玉では狼男もやっつけられるし、毒薬も判定できるというので・・まあ、そういうたぐいなのでしょう。
 たいへん磨きこんでいますね。武人の守護聖人にふさわしいよういでたちです。
 この聖人は、傭兵隊長とジョルジョーネの地元の聖人だそうですが、とても若々しい顔立ちなので、ふと死者の肖像かな・・なんてふと思ってしまいましたが、葬られた息子が軍人だったのか、成人していたのかどうかも知りませんが・・・。
2011-12-01 

コスマスとダミアヌス

双子の医者

 コスマスとダミアヌスは、双子の聖人です。
 4世紀ころのシリアで活動していた医者で、無報酬で治療にあたったそうです。
 有名な話としては、足を切断してしまった白人に、死んだばかりの黒人の足を接続して、復活させた・・というので、絵もいくつか描かれていますよね。
 動物の病気も直したそうですから、人間の医者と獣医をかねていたのかも。
 アラビア人であったという説があるのは、アラビア医術が進んでいたからでしょうね。 
 ディオクレティアヌス帝の時代の大迫害にあって、殉教しましたが、火あぶりにされようとすると火が消え、石打ちの刑にしようとすると、石がよけて通るといった奇跡がおこり、結局、斬首されたそうです。
 フラ・アンジェリコの絵では、斬首された人の頭がころがる凄惨な刑場で、これからまさに引き出されようとする2人の姿が描かれています。
 フィレンツェのメディチ家の守護聖人であったので、メディチ家関連の絵画によく登場します。
 メディチの当主が、赤い長衣を着て帽子をかぶっているのは、この聖人に扮しているそうです。
 コジモという名前も、コスマスからとっているとか。
 ミケランジェロの彫像は、禿げ頭のおじいさんの双子。
 ビザンツ絵画は、かしこまった顔つきの中年医師。
 フラ・アンジェリコのは金髪の美少年風といろんなパターンがありますが、ボッティチェリの祭壇画に登場する青年の姿の双子の衣装で描いてみました。
 誰が見てもそっくりの双子!に描いてある絵と、微妙に違う二人を描き分けている絵がありますが、髪と肌色を少し変えてみましたが・・・。
2011-11-04

聖母の天使

黒羽の天使

 15世紀のフェラーラ派に属する画家の作品という、聖母子像を見まして、聖母の背後に立つ2人の天使の、色彩と衣装が印象に残りました。
 天使にありがちな、聖職者のようなぞろっと長いワンピース型の服装ではありません。
 一人は、袖なしのジャンパースカートのような、当時の風俗画では、若い女性の衣装。黒い長袖の上にオレンジ色のサーコート風ローブは、裾が長いので腰のあたりで、ひもでたくし上げるいわゆるおはしょりのような着こなし。
 もう一人がこれで、淡いピング系の長いローブを着ていますが、下に黒い膝丈のショートチュニックを着ていて、足を丸出しにしているところは男性の衣装のようにも見えます。赤い靴は、この時代の男性がよくはいている形です。タイツが赤くて、靴が黄色いというような派手なのもあります。
 天使が、男性、女性という性別からは自由になって、中性的とはよく言われるけれど、時代や場所によっていろいろあって、男もあれば、女もあり、どちらともつかぬのもある・・ということがいえるかもしれません。このような天使の外形の性別などには、cucciolaさまの、こちらの記事も面白いかも。
 集めてみると、けっこう私も天使の絵はありました。
 ミカエル ラファエル、女性天使説のあるガブリエル、焔の天使ウリエルの4大天使と、堕天使。
 それに、天使の羽だとか、哀悼の天使だとか、いろいろです。
 それぞれに面白さはあるのですが、今回の天使は俗っぽい服装以外に、羽の色が真っ黒!
 黒い羽は印象深いので、珍しいかなと思って色々探してみましたが、画集で見る限り、時々あるんですが、ファン・デル・ウェイデンの「七つの秘跡」の絵に登場する7人の天使は、それぞれ、服の色と羽の色が一致していて、衣服まで真っ黒に見える右の2人などは、黒ではなく、濃い青や、緑などが退色して黒く見えるだけかもしれないので、厳密には黒ではないのかも・・。
 黒い羽をもち、黒い服(当時の男の黒服は流行だった?)を着た天使です。
 背景は、まあ・・映画ではよく使われる、カセルタの王宮の大階段です。
2011-09-12

デイシスの聖ヨハネ

洗礼者ヨハネ(デイシス)

  久々に「エロイカより愛をこめて」の最新刊を読みまして、エブドモンの聖ヨハネ聖堂をめぐる(どっちかというと)特殊な学説の浅野和生先生の「ビザンティンの象牙トリプティックと聖遺物容器」(日本ビザンツ学会第3回大会の報告にこの内容が出ています)を土台にしたストーリーです。
 もちろん、KGBもNATOも入り乱れて、武器商人やら、まあ、今度は宗教的秘密結社まで総動員するドタバタで、大いに楽しいです。
 で、逆デイシスとか、右向きのヨハネ像なんぞが入り乱れていて、まあ、ほんまにビザンティンでも、マイナーな題材なんですが、けっこうおもしろい。
 デイシスは「嘆願」という意味で、絵画では中央にキリストがおり、向かって左に聖母マリア、右に洗礼者ヨハネが立ち(つまりヨハネは左向きです)、キリストに対して、嘆願者をとりなしてくれるという姿で描かれます。
 西ヨーロッパの絵画では、中世以降、次第にデイシスは描かれなくなり、作品はビザンツ美術か、正教のイコンなどに残っている程度だそうです。代表と言えば、やはりアヤ・ソフィアの巨大なモザイク画でしょうか。
 しかし、直接、このデイシスそのものだけを描いてはいないのですが、ヤン・ファン・エイクの有名な「ゲントの祭壇画」の開いた時の中央パネルの三枚が、中央にキリスト(全能の神)、左にマリア、右にヨハネで、まさにこのデイシスのスタイルです。
 ファン・エイクの絵と言えば、絢爛豪華な衣装や宝石などが特徴ですので、質素なはずのヨハネもラクダ皮の衣装の上に、やや地味目の宝石入りマントを着ています。
 ということで、逆じゃないデイシスのヨハネを。ファン・エイクのヨハネは、ひげがもじゃもじゃなのですが、華やかな上着に似合うように、ひげをやめてみました。膝に「人生の帳簿」?をのせて、「この人は、善良な一生を送ったので、天国入りを許してあげてはどうでしょうか?」と言っているような・・・。
 ロシア正教では、洗礼者ヨハネは、授洗イアオンと呼ばれます。
2011-08-21

聖アンドロニコス

聖アンドロニコス

 聖人はたくさんいて、まさしく八百万の聖人で、一神教のキリスト教が多神教的側面を補っているのではないかと思うほどですが、カトリックとギリシャ正教では、聖人も違います。
 聖アンドロニコスは、エフェソスの名家の出身で、かの悪名高いディオクレティアヌス帝時代の迫害で、殉教した若い聖人だそうですが、具体的にはどのような人物か調べられませんでした。
 この皇帝の時代に殉教した聖人って、本当に山ほどいますよね。まあ、それほど迫害があったのでしょうが「かのディオクレティアヌス時代に・・」と言うと、はは~!って皆が納得してしまうような雰囲気があったのかも。
 イスタンブールのコーラ修道院(博物館)に聖アンドロニコスの壁画があるのですが、「いいとこの坊ちゃん」だからか、豪華な服装をしていますが、なにやら不満げな表情をした聖人です。
 この聖人像は、皇帝アンドロニコス2世の若い時の姿を表わしたものかもしれないそうです。
 アンドロニコス2世という人は、かの第4回十字軍の「悪行」によってコンスタンティノープルが陥落し、一旦、東ローマ帝国が滅びて、十字軍によってラテン帝国を作られたあと、新たにパレオロゴス朝を開いたミカエル8世の後継者で、23歳で即位した人物です。
 文化人であったけれど、統治者としてはパッとしなかったといわれていますが、すでにビザンツ帝国は衰退の時期に向かっていたので、パレオロゴスルネッサンスは、東ローマ最後の花であったかもしれません。
 年取ってからの威厳にあふれる白いヒゲの立派な肖像も不満げな顔つきをしています。
2011-04-20

紫の聖者

紫の聖者

 中世の素朴な、初期キリスト教美術も面白いのですが、やはり洗練されているといえば、モザイクでしょうか。
 ビザンツ美術の華やかな黄金色も、独特の世界観ですね。
 5世紀のラヴェンナのモザイク壁画に、紫のトゥニカに同じ色のトーガをまとう聖なる人物の肖像画あります。
 異端とされたのアリウス派の聖堂の壁画に描かれたキリスト像で、この表現は、後世のキリスト像のような、長い髪を左右に別けて肩に垂らし、髭を蓄えたおごそかな表情の壮年の姿ではなく、若者の姿で表わされています。
 壮年のキリストは、古代的なイメージでいうと、全知全能の大神ゼウスの姿に似ており、若いキリストは、太陽神アポロンに近い表現だという説もあります。つまり、「神の子」としての面に焦点があてられているようです。
 若い「神の子」から、壮年の「大いなる神」へのイメージの移行の過渡期として、世俗の皇帝の印である紫の衣裳に身を包んだ若い聖者としての姿であったかもしれません。 
2011-01-16

ランゴバルドの天使

翠の天使

  「初期キリスト教美術」の本をペラペラ見ていて、ランゴバルド・キリスト教美彫刻の天使像が目にとまりました。
 中央で座するキリストと、その左右に侍る、2人の手の生えたケルビムが、月桂冠のようなものの上にいますが、それを四方から、4人の天使が支えています。
 8世紀頃の彫刻で、なんとも素朴な造形が面白いのですが、手だけが生えた4枚羽のケルビムも奇妙なのですが、まわりの4人の天使は、飛翔するようなその表現からすると、宙に浮いているのでしょう。キリストが栄冠に包まれて昇天するところでしょうか。
 この支える天使が手がでっかくてぶっとい! 顔つきもキリストよりゴツい。髪も短めで、中にはアフロっぽい短髪風なのもいます。
 支える・・という動作のために手が太いのは当然でしょうが、顔よりデカいし、足のざっと5倍以上は大きいのです。
 古い時代にはヒゲの生えた天使(ガテン系か?)もあるようなので、力仕事むきのもいたかも。
 そういう天使の服装は、当時の貴族の衣裳でしょうか?
 仏像の天衣のような布を手や肩にまきつけてたらしているのはトーガの末裔なのでしょうか? 中世のデカ手の造形も面白すぎるのですが、普通サイズに直してみました。支える天使です。  
2011-01-14

無原罪の聖母

無原罪

 神の子を産んだ、母なるマリアは、黒い聖母などのように、地母神的性格が付与され、ガイアやアルテミスなどの多産豊穣を願う大母神・・つまり女性の母性の役割を負う反面、あくまでも、清らかな処女であったという説が無原罪のお宿りです。
 聖母マリアが処女懐胎して、神の子であるイエス・キリストを産んだとされていますが、その母のマリア自身も、更なる清らかな生まれ・・つまり彼女自身も、母のアンナから原罪なくして生まれた、聖処女であったという教えがあるそうです。
 スペインなどで広まったので、このような聖性を表わす画家としては、やっぱりムリーリョですね。
 ムリーリョといえば、一昔前の少女漫画のような初々しいマリアさまが特徴で、「甘い」とか「少女趣味」とか言われますが、聖なる処女の中の処女たるマリアを表わそうと思えば、生半可な生身の女では、らちがあかん。
 で、彼の苦心惨澹の結果が清らかなうえにも清らかな聖母だったので、少女の面影を残した若い女性・・ということになったのでしょうね。
 ムリーリョは子供時代のキリストや、子供の天使の絵も、ものすごく可愛いのですが、これも汚れなき聖性の表現だと思います。
 ということで、ムリーリョ風に、ちょっと少女趣味な味付けをして・・なんて思いましたけれど、少々芝居がかったしまいましたか?・・やはり俗っぽさが出ましたね。
 
2010-12-24

スパンキー

スパmmキー

 ハロウィンはそもそも、古代的な要素の強いお祭りです。
 全ての聖人のお祭り(万聖節)の11月1日の前日に、異界とこの世がつながるので、幽霊や、彷徨える霊たちが此の世に現れる・・とされているらしいです。
 昨今は、にぎやかに可愛らしいオバケグッズなども、お菓子とともに出回っていますが、私としては、なにやら素直に楽しめません。
 というのも、カボチャオバケのモトとなった、スコットランドのウィル・オ・ザ・ウィスプ(ジャック・オ・ランタン)の伝説も哀しいのですが(多分に自業自得ですけれど)、洗礼を受けずに死んだ子供の霊魂が、最後の審判まで彷徨い続けるスパンキーが、よりいっそうあわれで悲しいですねえ。
 ハロウィンの日は、スパンキーは、この年に亡くなった人の霊を案内して、「贖罪」なのか「浄霊」なのか、晴れて天国にいける日を待っているらしい・・。だから、古い教会には、ハロウィンの日には沢山のスパンキーがいるんだそうです。
 このお話と、親より先に死んで「親不孝」の「罪」を犯した子供の霊が、賽の河原で「ひとつ積んでは父の為。二つ積んでは母のため」という、あの悲しい伝説にもつながるような気がしてなりません。
 スパンキーが幸せな「贖罪」をつんで、いずれは天国に行けますように、異教徒ながら祈りたくなります。
 あ・・ちなみにハロウィンの「お菓子」は、異教徒のためにも、天国にいけるように供養をする意味もあるそうです。 
2010-10-31

ヘロデア

ヘロデア

 ヘロデアは、ユダヤ王家の王女
 かの建築マニアでもあったヘロデ大王の孫娘にあたります。
 彼女が何故有名かというと、かの預言者ヨハネの首を切らせたからですね。
 そうです、サロメの母です。サロメばかりが有名な気がしますが、あのおぞましい「お盆の首」を、そもそも発案したのは母のヘロデア。ヨハネは彼女の私生活を非難したからです。
 家系図からいうと、ヘロデアは、ヘロデ大王の2番目の妃の産んだ王子の娘。
 彼女の最初の夫ヘロデ・ピリポ(サロメの父親)は、ヘロデ大王の3番目の妃の王子。で、サロメが踊ったのは、ヘロデ・アンティパス王で、この人はヘロデ大王の4番目の妃の王子です。
 ヘロデアは、父親の異母兄弟(つまり叔父さん)の間を渡り歩いた・・ということですね。
 ヨハネが批判したのも、彼女の結婚が叔父との近親婚ではなく、夫を捨てて夫の兄弟のところに走った・・つまりはヘロデ王側からすると、兄弟の妻を奪ったことなのです。
 まあ、分かりやすく言えば、額田王のことで天智天皇を批判したみたいなものですね(いや・・ちょっと違うかな)。
 で、王妃という地位に満足しているヘロディアとしては、ややこしいことを言い出す預言者に腹が立ったので、「娘のご褒美」にかこつけて首を切ったということになっているのですが、これが画家の絵心を刺激し、幾たびも描かれる絵は、皆サロメが盆を捧げている・・ということなのですが、中にはヘロディアが満足げに盆の首を見ている絵もあるのですね。
 十代の年端も行かぬ美少女と首もなかなかですが、海千山千の年増美人も、画家の好みにあったということでしょうか。
 盆の首は省きました。
2010-07-13

トマス・アキュナス

トマスアキュナス

 一昨日の続きです。
 偉大なる学者であった、アルベルトゥス・マグヌスの弟子中の弟子であり、師匠を越えたとされる更なる大学者として有名なのが、トマス・アクィナスです。
 教科書では「神学大全」とセットで覚えていますが、難しくて高邁な神学の研究というだけではなく、伝説で名高いのは、かのアルベルトゥスの「人造人間」をぶっこわしたことです。
 ある時、師である大アルベルトゥスを訪ねたところ、門に出迎えたのは、彼の作った人造人間で、わけのわからぬことをしゃべるので、気味が悪くなって壊してしまった・・というのですね。
 しかし、何と言っても「大人物」のトマスですから、これはまあ、ただ単に、恐怖に駆られて衝動的に壊したとか、怒りに任せてぶんなぐったとかいうような感情的なものではなく、「理屈」があるのではないかと思うのは、かんぐりすぎでしょうか? 
 つまり、人工知能だとか、人造人間など、いかに偉大な人物であろうと、自らの師匠であろうと、「神の領域」に人間が踏み込んではいけない・・というのではないか。また、このようなものが人間を超えて存在してはいけない・・というのではなかったか。
 この伝説を、西行法師が作ったという「人造人間」と比較する方もあるようですが、現代のクロ-ンなど、聖トマスは否定するのではないでしょうか?
 大アルベルトゥスは、議論が出来る人造人間以外にも、動く少女の人形(何故、少女なのでしょうか?)をこしらえていたとか、科学と魔術の領域すれすれのところにいたのですね。
 絵は、決意を持って人造人間をぶんなぐるトマスにしてみました。
2010-05-07

アルベルトゥス・マグヌス

まぐぬす

 マグヌス、つまり「偉大なる」アルベルトゥスという称号の、大アルベルトゥスは、ドミニコ会の修道士で、司教にまでなった13世紀の聖職者ですが、自然科学系の大学者で20世紀になってから「教会博士」になりました。
 化学・天文、地理、生理学、哲学、古典などを極め、アリストテレレスの著作の研究もしましたが、「神秘は信仰によってとらえられるとしても、真理は全て調和する」と言った化学的な態度でした。
 彼が偉大な学者であったということから、伝説を産み、エスカレートして、なんと彼は、化学、工学の粋を尽くして、人造人間を作ることに成功したとまでいわれています。
 金属と陶器で出来た「人間」は、まめまめしく、彼の身の回りの世話をし、時には議論もした(しゃべれたのですね!)そうです。金属では、なんとなくロボットめいていますが、「陶器」ということでは、時代はすごく下がるのですが、ビスクドールやオートマタなどを連想してしまいます。
 なんとなく、しゃべるからくり人形(僧坊で使うのですから、修道士の格好をさせていたのではないでしょうか)を愛でる学者・・おちゃめな感じがしません?
 あ、勿論、聖人で、医療技術者や、科学者の守護聖人です。
2010-05-05

ダンスタン

ダンスタン

 ダンスタンは、10世紀のイギリスの人で、カンタベリー大司教にまで出世したえらいお坊さんですが、この方には、錬金術や鍛冶屋からみの伝説がついてまわります。
 宮廷で王の顧問として重きをなしながら、何度も追放されたり、いささか激情方の人物だともいわれていますが、とにかく多芸多才の人で、本職の聖書の研究のみならず、時には魔術すれすれの学問や書物も読み、音楽も得意でハープをたずさえ、歌を歌い、建築や、手芸まで出来たそうです。元は鍛冶屋であったとか、修道院で鍛冶をやっていたとか。
 ある時、修道士である彼を、女性が誘惑にきたのですが、彼女の足にひづめがあったので、すかさず火箸で鼻をはさむと、すさまじい悲鳴とともに悪魔の正体を現したので、二度と誘惑をしないと約束させたとか。マザーグースにこの伝説が出ているそうです。
 また、ある時、悪魔が蹄鉄をつけて欲しいとやってきたので、ひどい方法で蹄鉄をつけた(どんな方法だ? えらく悪魔が痛い目にあったらしいけれど・・)ので、二度と蹄鉄のあるところにはあらわれなくなったとかで、「魔よけの蹄鉄」というアイテムは、この伝説にちなむそうです。
 鍛冶屋、魔術師、悪魔祓い・・なにやら関連がありそうですが、坊さんが悪魔に蹄鉄を打ちつける(悪魔は絶叫している)絵があれば、この方です。
 火箸で悪魔の鼻をはさんでいる絵もありますが、女性に化けてきたということですので、女装?の悪魔にしてみました。ダンスタンのほうも、立派な司教冠を被った高僧が火箸を持っている絵もあるのですが、多分、若い頃修道院で鍛冶屋をやっていた時代ではないか・・などと想像してみました。
 あ・・この方は鍛冶屋、金属細工、錠前屋、宝石職人、武器製造業、燈台守、音楽家、歌手の守護聖人です。 
2010-05-01

柱頭聖者シメオン

柱頭聖者シメオン

  煙とナントカは高いところに登りたがる・・なんて言いますけれど、高いところに登りたい・・つまりは天空を目指したいというのは、羽も翼もない人間の隠れた本能なのかもしれません。
 勿論、バベルの塔の物語をひくまでもなく、ゴシック建築はひたすら上を目指して高い聖堂を築き、仏教でも、本来シャカの墓であるスツゥーパが、どんどん高くなって五重塔や八重塔になるし、俗界を離れたい、行者や仙人は、山岳に登って高いところで修行します。
 そして人里離れた砂漠というのも修行の場でありまして、キリスト教では、キリスト本人や、砂漠でも誘惑の多かった聖アントニウス、それにマグダラのマリアと混同されたエジプトのマリアもいます。 
 そしてその砂漠ですら、地面に近いところでは修行の邪魔になる・・というので、高い柱を立ててその上に上っていた人がシメオン。柱頭行者とか呼ばれる人物です。
 彼は、5世紀頃の人ですが、シリアの砂漠で修行していましたが、彼の評判を聞いて、人が集まってくるのがわずらわしく、高い柱をたてて、その上で修行をしていたところが、それがまた珍しいので、ますます人が集まるようになり、更に柱を高くする・・また人が集まる・・また柱を高くする・・ということで、ものすごい高さになってしまい、その柱の上で修行すること35年・・・・。
 彼の死後、その柱を囲むようにして修道院が建てられて、大勢の人がその柱を拝むために巡礼としてやってきて繁盛したとか・・。
 で、その柱の上から35年も降りてこなかったとかいう話もあれば、お祈りをするときだけ登っていて、それを35年間続けたという説もあるそうですが、いくら天の神に近いところとはいえ、登りっぱなしでは不便だと思うのですが、立派な大理石様の柱の上にお坊さんが乗っている絵などがあれば、この方でしょうねえ。
 柱といえば、諏訪の御柱祭を思い出したのと、ドラゴンボールの「かみさま」の住まいなどをイメージしてしまったので、雲の上に出ている高い柱の登る修行者を描いてみました・・・って、なんぼなんでもこんなに高い柱は無理でしょうけど・・・。
2010-04-24

天使の羽

天使の羽

♪ララララ ランドセルは てててて・・天使のはね♪
というコマーシャルも一段落して、新一年生は、入学式目前ということになってきました。
 この「天使の羽」というフレーズは、色々なものに登場して、柔らかい・・とか、やさしいとか、あるいは、清らかとか、希望とかそういうよう明るいイメージがあります。
 古来、西洋絵画の主要ジャンルであるキリスト教図像にはなくてはならぬのが、背中に羽の生えた天使ですので、おびただしく登場します(いずれは、何枚もの羽のあるケルビムのような、いささかブキミな形体をした天使も描きたいなと思っておりますが・・)。
 天使の羽というのは、ギリシャ神話の、いわゆる羽キャラたちからの直接の影響を受けてイメージされたのでしょうが、森永のマークの子供の天使は、ローマ時代の幼児のクピド(キューピッド)などに遡ります。
 で、天使の羽には、時代の流行や画家の解釈によって色合いも違いますが、三種類の羽を描いてみました。
 青い服の天使の羽は、ペリカンなど、防水加工のよく出来た水鳥の羽で、羽を少し折りたたんで急降下し、水面にズ突入して魚を捕獲するタイプ。多分スピードはかなり出ます。
 白い天使は、白鳥とか渡り鳥の羽で、長時間飛行が可能。
 手前の羽は、梟やミミズクなど夜間飛行をする猛禽類の羽で、細かい羽毛が生えていて、羽ばたく音がせず、夜、獲物を狙うのに適しているらしいです。
 で・・それがどうした・・なんですが、鳥の羽も色々あるのが面白いなあと思ったので、神様のメッセンジャーである天使も、色々、飛行形体があればなと・・・。
2010-03-18
 

アンナと娘たち

アンナと娘たち

  聖アンナは、聖母マリアの母です。
 聖母マリアが、処女懐胎でイエス・キリストを産んだというのは重要なことなのですが、福音書の翻訳の時に大いなる誤解ではなかったか・・という説があります。
 つまり「処女」、おとめ、娘などという語に、いわゆるバージン(パルテノス)・・つまり男性を知らないと言う意味があるかどうか・・ということです。古い文献に、ただ単に「マリアは若い(少女の)頃に子供を産んだ」というだけの意味を、「マリアは処女にして子供を産んだ」と解釈されたと言うのが問題だったのだとか。
 これが発展して、神の言葉が「父」となり、処女のまま母となった・・という男性の「願望」なのか、「汚れなき母」を求めるあまりに、「無原罪」などという、またまたややこしい説が出てきた。
 清らかな母マリアは原罪を免れているのだが、彼女の出生そのものも原罪を免れていなければならな・・という更なる「無原罪」のバージョンアップがはかられます。
 どういうことかというと、マリアの母であるアンナも、原罪を犯さずに娘を産んだんだとか・・・やれやれ。聖職者の禁欲の殿方は、まあ・・なんともわけのわからない理屈を考えだすものです。

 その一方で、マリアの母(つまり聖祖母ですかね)は、既婚女性や、年配の女性方の支持をも受けて人気者になり、彼女の絵も沢山描かれた時期があります。そして、マリアの姉妹もいて、それらは、アンナが3人の夫を迎えて、それぞれに娘をもうけ、その娘たちの子供は、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダ、大ヤコブ、ヨハネだったというのに至っては、キリスト教団は、従兄弟教団だったってこと?
 こういうのは、北方で流行ったそうで、クラナッハなども、それぞれ夫を背後に従えた大女系家族(大祖母のアンナには3人の夫が従っています)を描いていますが、だんだん廃れたそうです。
 異説ではあっても、女ばかりの家族がもてはやされたと言うのは、面白いので、クラナッハ時代風に描いてみました。あ・・娘たちの名前は全員がマリアです。
 これまた「処女懐胎ー描かれた奇蹟と聖家族ー」(岡田温司・中公新書)からのネタです。
2010-03-09

苦行聖女マリアとキアラ

苦行聖女

 どのような宗教にも「苦行」というものがありますが、キリスト教の苦行というと、人里離れた砂漠で、過酷な生活をしながら瞑想修行するというものとか、自らの身体を鞭打って信仰心を鼓舞するというものがあります。
 砂漠の聖アントニウスや、鞭打ち苦行僧などがイメージされて、男性の「修行」のようですが、この砂漠の修行をした女性とされるのがマグダラのマリアです。
 マグダラのマリアという聖女は、正体がよくわかっていません。
 古い伝説では、キリストの女弟子で、復活の第一発見者と言う立場ですが、なにやら男弟子(特にペテロ)と「不仲」であった故に、だんだん歪められて「悔い改めた娼婦」というイメージになった・・などということから、作家の妄想を招いています。
 「マグダラのマリアーエロスとアガペーの聖女ー」(岡田温司・中公新書)を読むと、彼女が「妄想対象」であった歴史は長く、そのイメージが時代とともに変貌していったというのは、なかなかに面白いです。
 その本の中に、ナポリ王妃サンチャの発願によるサンタ・マリア・マッダレーナ修道院に関する絵画が紹介してありました。
 この修道院は、娼婦の救済のためであったとされています。病気になったり、老齢になったりして「営業」できなくなった娼婦を収容する保護施設の一つです。
 聖母マリアの左右に、ひざまずいて祈る二人の苦行聖女を配しています。それが、砂漠で孤独な瞑想苦行をしたマグダラのマリアと、フランチェスコの女弟子で、彼に寄り添っていた聖キアラです。
 キアラは、フランチェスコ会の女子修道会創始者ですが、鞭打ちの苦行を42年も続けたそうです。
 砂漠で過酷な修行をする、自らの身体をいためつけて修行をする・・こういう聖女を描きながらも、マグダラのマリアは、その特徴である「美髪」は長々とたれ、キアラは、服の背中が破れていてそこが傷ついているという表現をしています。
 手に持つ鞭は、自分で自分の背中をペチペチやるのです。
 元絵の聖女は、どちらかというと苦行の果てにやつれたばあさん(とまではいかないけれど、年いってる)なのですが、若づくりしてみました。
2010-02-25

早太郎とギヌフォール

早太郎とギヌフォール

 自らの命を犠牲にして、人を救う、という美談は、何も人間にだけ語られるものではありません。
 信州駒ヶ根の早太郎伝説は、霊犬早太郎の物語です。
 まるで、狒々退治の岩見重太郎のような英雄伝説ですが、武器は己の牙だけという、刀を持たぬ犬の哀しさで、見事人身御供を食っていた狒々を退治したというのに、早太郎は自らも傷ついて、故郷の寺に帰って門前で死んでしまった・・という伝説です。
 早太郎は丁重に葬られ、神様として祀られているということです。

 一方、同じような犬の犠牲の話は西洋にもあり、こちらはおフランスはリヨンの物語で、聖ギヌフォールです。
 とある騎士の家で、赤ん坊を一人おいて外出していた時に、大蛇が赤ん坊を狙って入ってきました。
 一家の番犬ギヌフォールは、幼い主を守ろうと、果敢に大蛇と戦い、かみ殺して窓の外に投げ落としましたが、ゆりかごがひっくり返ってしまいました。
 この騒ぎの最中に騎士が帰ってきて、部屋の中に赤ん坊が投げ出され、口にべっとり血がついた犬が息を切らしているのを見て、てっきり赤ん坊を食い殺そうとしたと勘違いして、犬を殺してしまいます。
 あわてて子供に駆け寄ってみたところ、子供は無傷なので、不審に思い、調べて見ると窓の外に大蛇がかみ殺されているのを発見。しまった、はやまった、えらいことをしてしまったと、この忠犬を手厚く葬って、犬を可愛そうに思った人々は、やがて殉教者?と称えて、子供を守る「聖人」になったのです。
 ですが、後に、犬を聖人扱いするのは、悪魔崇拝だと、お堅い聖職者が非難して、この伝説が残ったようです。
 多神教の国なら、まあ、忠犬神社があってもかまいませんが、なかなか素朴な村の「聖人」も、あちらでは大変ですね。
 
 ところで、聖ギヌフォールという人間の聖人もいて、この人は、アイルランドの出身で、ミラノで体中に矢を射掛けられて、そのままパヴィアにたどり着いて死んだという、まるで聖セバスティアヌスのような、矢だらけ聖人だそうですが、どうしてミラノで矢ネズミ?になったのか、何故パヴィアなのか?調べられませんでした。
 犬のギヌフォールのほうは、沢山出てくるのに・・・・。
 早太郎は山犬の子で、灰色の毛並み。ギヌフォールはグレーハウンドだとされており、毛色はわかりませんが、もともとグレーハウンドという犬はグレーの犬だったという説もあるので、やはり灰色っぽくしてみました(人名事典なのに、犬はいいのか・・と言われそうですが、どちらも後に、神様や聖人になったのだから、そんじょそこらの犬ではありません)。
2010-01-28

聖イシドルス

イシドルス

  聖イシドルスは、6世紀末から7世紀初頭のセビリアの大司教。
 神学者であり歴史学者にして教育者で、博学多識。後世「教会博士」の称号を与えられた、最も頭脳系の聖人。
 驚くべきことに、その豊富な知識で、この時代に、すでに地球は球体であり、その球体の裏側にも人が住んでいる・・と考えていたようですが、古代ギリシャ・ローマの文献などから導き出されたのでしょうね。ローマ人は地球は丸いって知っていたようですから。
 そしてもう一つ有名なのが「偽イシドールス教令集」。9世紀頃に作られたとされる偽書で「コンスタンティヌスの寄進状」が載っているものです。
 この寄進状は、ローマ帝国の皇帝コンスタンティヌスが、ローマ教皇に病気を治してもらったお礼に、教皇の優位性と、帝国の西半分の支配権を譲ったとされるものです。
 これを根拠に教皇が皇帝を戴冠したり、イタリア支配する口実になったりしましたが、偽書と判明したのは18世紀になってからですから、イシドルスの威光はすごいものだったのでしょう。
 で、21世紀になってからも、この聖人のご威光は衰えず、2002年に、バチカンは、彼をインターネットの守護聖人にしたそうです。膨大なデータを蓄積分析する姿が、インターネットやプログラマーにふさわしいとか。
 ところが、アメリカには、また別のネットの守護聖人がいます。どちらかというと、ハッカーやオタクなどの聖人だそうで、叡智の禁書図書館(とても面白いネタ満載ブログ♪)に聖エクスペダイトの記事が出ています。
 エクスペダイト(意味は至急)は、バチカンが認めている聖人ではないようで、イタリア出身?で、古代ローマの百人隊長姿で、足元に「明日!明日!」となくカラスを踏みつけて、手に「今日」と書いた十字架を持っているとか・・?! 
 これって・・・・今日やれることを明日に延ばすな・・ってこと? 
 ちなみに、MacユーザーにはWinユーザーとは違う聖人がいるそうです・・ホンマか?
 聖イシドルスの絵は、膝に大きな本を載せて調べものをする司教の姿です・・・その絵を少し変えてみました。
2009-07-01

ダニエル

danieru

  ベルニーニの彫刻「ハバククと天使」が、にわかに脚光を浴びています。これのレプリカを展示しているビルまであるそうですが、勿論、映画「天使と悪魔」のせいでしょう。
 この彫刻は指差す天使が意味を持っているのは確かなのですが、実はこの天使が指差している先は、「空気の祭壇」なんかではありません。指し示しているのは、ダニエルです。いえ正確に言うならダニエルが閉じ込められている獅子の穴(トラの穴ではありません)。
 ダニエルは、バビロン王がエルサレム陥落させた時、国王の官吏となるために、連行されてきたユダヤ貴族の少年たちの一人です。
 とても優秀だったので王には重用されましたが、それを嫉んだ廷臣たちの陰謀によって、獅子の洞窟に落とされます。例によって「お前の神がホンモノなら、救ってくれるだろう」と言われて。勿論、ダニエルは神が遣わした天使によって守られ、逆に彼を貶めた廷臣たちが獅子に食われます。
 このダニエルの物語が、中世には劇としてもてはやされ、その登場人物にハバククがいます。中世劇の物語に採用された「ダニエル書外典」の物語によれば、畑の刈り入れ作業をしている人たちに弁当を届ける途中のハバククの前に、突然、天使が現れ「何をしているのだ! 早くその弁当をダニエルに届けろ!」と、髪をつかみあげ、空中高く舞い上がると、大空を飛んで、あっという間にダニエルの洞窟にやってきて、その弁当をダニエルに届けた・・というお話です。
 一体これはなんなん?というようなエピソードですが(ほとんど天使による恐喝やん)、劇になって大衆には大いに受けたのでしょう。皆に知られたエピソードだったようで、これをベルニーニがつくったわけです。だから「ハバククと天使」だけではこのドラマの半分で、もうひとつ対になる彫刻があって、それが獅子の穴のダニエルです。
 このダニエルは、かの覗き見のスザンナの裁判を見事に決着をつけたので「裁判の守護聖人」だそうで、威厳のある老人や壮年で絵に描かれる場合もあるのですが、ベルニーニは少年のような顔で、青年の肉体をみせびらかしている裸体像にしているので、そのスタイルで服を着せてみました。ちなみにハバククの彫像としては、ベルニーニのは髪がふさふさしていますが、ドナテッロの彫刻はつるっぱげで、天使にひっつかまれて空を飛んだせいでハゲた?という人がいますが・・・天使は弁当代を払ってくれたのだろうか?
 ところで、私の「天使と悪魔」についての戯言はこっちに書いています。
2009-06-06

メタトロンとサンダルフォン

メタトロンとサンダルフォン

 いわゆる偽典という、旧約聖書の周辺物語に登場する天使で、メタトロンは大天使で、契約の天使であり、ミトラスと同一視され、最高神に近いとも言われますが、実のところはよくわかりません。
 一説に、この大天使メタトロンには双子の兄弟サンダルフォンがいて、彼は第5天にいて、罪を犯した天子たちを収監しておく監獄?の支配者だそうです。そういう伝説を見れば、面世界の支配者と、罪人の世界の支配者という両面をもっているのかもしれません。
 またしてもイージーに、同じ絵柄の使いまわしで双子の羽キャラを描いてみました。
2009-01-31

聖女マルガリータ

聖女マルガリータ

 マルガリータは、アンティオキアの出身で、異教徒の娘でしたが、キリスト教を深く信仰していました。その地の総督が、キリスト教を捨てて自分と結婚するように迫ったので、拒否したところ、拷問を受けて牢に落とされました。
 その入牢中に、悪魔がドラゴンの姿をとってあらわれ、彼女を飲み込んでしまいましたが、持っていた十字架でドラゴンの腹を割いて飛び出し、復活するというすさまじい聖人です。
 結局、斬首されて殉教しますが、最期に、竜の腹の中から無事出てきたことにより、以後、妊婦の安全を祈ったことから、出産の守護聖人とされます(腹を割かれたドラゴンの立場からすると、なんだか矛盾するよう気もしますが・・・)。
 華麗な衣裳をまとったお姫様のようなマルガリータが、ドラゴンから出て来る(生えている?)絵などがありますが、ちょっとだけリアルにしてみました。本当にこういうことがあれば、もっと血みどろだと思うのですが、聖女さまですから、さほど汚れたりしないのかも・・。
2008-12-07

聖アントニウス

聖アントニウス

  聖アントニウスといえば、もう、水木しげるもマッツァオのすさまじい妖怪だか怪物だかに、よってたかってもみくちゃにされている、じいさん・・のイメージが一般的です。バケモノたちに残り少ない髪や、髭を引っ張って引きずり回されている・・という絵があれば、アントニウスです。
 中には、女性に囲まれているというのもあるのですが、とにかく誘惑されているか、苛められているかというのが彼の名場面。
 アレキサンドリアのアタナシオスが書いた伝記で「悪魔に誘惑され、いためつけられる」伝説があるばかりに、画家の想像力を刺激し続けてきました。
 それによると修行中のアントニウスに悪魔がささやき、誘惑をしたのですが、富や名誉で誘っても応じない(もともと裕福な家のおぼっちゃまだった)ので、今度は女性の姿になって誘惑をします。
 それでも誘惑を退けると、怒った悪魔は、今度はおぞましい怪物を沢山よこして、殴る蹴るの暴行。それでも道心堅固なので、猛獣に襲わせ、あわや肉食獣の餌食・・というところに天から光が差して、神の奇跡で悪霊退散!
 アントニウスという人は、百歳を越えていた高齢の聖人なので、白い髯を胸までたらした姿で描かれますが、悪魔の誘惑を受けていたのは、修行をはじめて間もない20代前半くらいのことなので、若くしてみました。誘惑をする悪魔は異教の神かもしれない・・なんて思うと、アントニウスの時代は3、4世紀頃なので、ギリシャ・ローマ的なものではないか・・と考えて、ディオニソスとその巫女という雰囲気の「誘惑者」にしてみました。
2008-11-26

アウグスティヌス

アウグスティヌス

 激しい愛の仏は愛染明王ですが、世俗の愛に悩んだ人物がアウグスティヌスです。アウグスティヌスといえば、意味もわからず「神の国」と暗誦した覚えがありますが、彼は4世紀の人物です。
 若い時からプラトンを学び、キケロを読み、また当然女性にも興味があり、性欲に悩み・・というか、人間の煩悩に悩み、一時はマニ教に深く入り込んでみたのですが、悩みは解決せず、ミラノでアンブロシウスに出会い、キリスト教を知って、司祭になり、それから数々の著作をものした哲学者です。
 生まれながらの聖人ではなく、悩み多き青春を潜り抜け、女性も泣かせ、自らも悩み、だからこそ、思想も生きるというのでしょうか。
 アウグスティヌス像といえば、ボッチチェリの「書斎のアウグスティヌス」の絵が有名ですが、クラウディオ・コエリオというスペインの画家が描いたアウグスティヌスのポーズがカッコよかったので、それ風に描いてみました。
2008-03-25

カテリナ

カテリナ

 カテリナという名前の聖人は、ほかにもいますが、この人はアレキサンドリアの聖女です。
 さすが古代からの学問の町の出身だけあって?、彼女は学識豊かで、しかも弁舌さわやかでありました。キリストの花嫁になったという伝説もさることながら、とても美人であったので、ローマの皇帝が彼女を気に入り「くるしゅうない、ういやつじゃ、近うよれ」と言いたかったのだけれど、なにしろキリストと「秘密結婚」?しているほどの聖女ですから、異教徒の皇帝になどなびきません。
 そこで、皇帝は学者達を集め、彼女を論破せんとしますが、全て言い負かされてしまい、面目を失いました。怒った皇帝は、聖女を車裂きの刑にしようとしますが、天使が現れて車を粉砕。しかし、結局斬首の刑で殉教しました。この皇帝がマクセンティウスだったというのですが、彼女は実在が疑われています。
 しかし、人気の聖女で(なにしろ美人だから?)、絵画にも多く描かれていますが、うねうねした女性の髪と、豪華な衣装を描くことで特徴的な画家カルロ・クリヴェリ風のカテリナにしてみました。手に持つのは、車裂き刑用の車輪です。
 カルロ・クリヴェリについては、マグダラのマリアの絵が一番有名でしょうか。
2007-12-26

トマス

トマス

 十二使徒の一人トマス(トマ)は、疑り深い、あるいは実証的とされる人物です。その名前に「双子」という意味があるので、キリストの双子の弟だ・・とか、また誰かの双子だ・・あるいは、双子のように信仰と実証を表すとか、色々言われています。
 他の弟子達がキリストの復活を「我々は見た」と言うのを聞き、「私は槍の傷を見、その傷に手を入れてみないと信じない」と疑ったので、キリストは再び、彼の前に姿を現し、実際に傷に指を入れてみよと言い、そのとおりにさせたということです。よく、絵に描かれる場合は、キリストのわき腹の傷に指を入れている人物がトマスです。
 クリスマスが近づくと、やたらと聖書物語などをひっくり返す、ミーハーな私ですが、今日は、そのトマスが、尚、まだ疑いながら、指を差し伸べている・・というイメージです。
2007-12-10

ルキア

聖ルキア

 イタリアの民謡の代表とでもいうべき、サンタルチア(セント・ルキア)は、この聖女のことですが、例によって、ディオクレティアヌス時代に殉教した聖人です。
 彼女はシチリアのシラクーサの人で、その目があまりに美しかったので、それを愛で称えるばかり婚約者に、目をえぐって与えたという、なんとも極端な女性ですが、表面的、肉体的な美ばかりを求めてはならないといういましめがきいたのか、婚約者が信仰に目覚めたところ、再び目が復活したということで、眼病の守護聖人です。
 後に、貧者に施しをして財産をなくしてしまい、婚約者に密告されて殉教しました。彼女の名前ルキアは光という意味なので、貧しい人に希望の光を与えるということでも、「光の女神」の性格を持っています。
 15世紀のコッサが描いた「聖ルチア像」は、手に枝を持っていてその葉先には、芽ではなく目が出ている絵があまりに「面白かった」ので、持たせてみました。メガネではありませんよ。
2007-12-08
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Author:乱読F
歴史上の人物を沢山描きたい・・。
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