薄絹のビーナス



 ビーナスといえば、ギリシャ・ローマの神話の女神とは言いながら、古来より、最も彫像や絵画に取り上げられてきた女性像に命名されるものです。(アフロディティとして以前に描いたものと同じようなポーズを改変して着色してみたものです)
 ルネサンス時代からも、裸の女性を描くのに好都合なのは神話の女神を名目にするのが画家やその注文主の常套手段。
 もっと下った時代でも、やはり裸婦を描く口実にされました。
 先日、クラーナハ展―500年後の誘惑ーを見てまいりまして、クラナッハ風ではないけれど、真っ黒の背景に女性の裸身を描いて、かたちばかりの薄い透き通った布で覆った・・ということにする・・・というのをやってみたくなりまして・・・。
 と言っても、クラナッハの作品のように、紳士の部屋で魅惑的な女性像をこっそりと、お仲間で観賞する・・・というような目的ではないので、薄い布のスケスケ具合はやや控えめに。でも、布があるほうが、真っ裸より「イミシン」でしょう?
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カリストとゼウス

カリストとゼウス

 大神ゼウスは、こと女性に関する努力ならば、少しも身を惜しまず、何にでも変身します。
 他人に化けるのはお手の物もの、牛やら白鳥、鷲など動物になるのは勿論、実態のない雨になったり、雲になったり、何でもこいです。
 で、またしても「お! あの娘、ちょっとええやんか!」という若い女性が目にとまりますが、その女性カリストは、気位の高い潔癖症の処女神とアルテミスに仕えるニンフ
 アルテミス(ディアナ)は、周りの女性たちにも、自身の主義主張を強要し、男と遊ぶなんぞ、とんでもない!というコチコチの女神様ですから、うっかり誘惑もできない。
 でも、大神ゼウスに不可能はない! アルテミスの留守に、あろうことか女神本人の姿に化けて、カリストに近づきます。「私と少しお話しましょう」などと笑顔を浮かべて、カリストを安心させて、近づきます。
 そしてあろうことか、彼女を妊娠させてしまうのです。で、それが女神にバレたカリストは、熊に姿を代えられて森の奥に追放されます。彼女の産んだ子供が成長し、狩人となって、実母と知らず熊を撃とうとしたときに大神ゼウスは、ちょっとだけ憐れみをかけ、彼女を空に上げて大熊座とし、子供を小熊座としたというのは、星座の物語です。
 しかし、ロココの時代に、なぜか、この「アルテミスに化けたゼウスに誘惑されるカリスト」が、流行しました。ちょっと危うげなレズっぽい絵柄が当時の時代にうけたのでしょうか。
 ということで、私風なカリストとゼウスです。「お前は、ほんと色白で、可愛いいわねえ」「え? アルテミスさま? ど・・どうなさったのですか・・?!!」ってところで。
2012-05-15

ボレアスとオレイテュイアー

ボレアスとオレイテュイアー

 ボレアスは北風の神です。
 星の神アストライオスと暁の女神エオスの間に生まれた四兄弟の一人です。
 したがって、西風の神ゼフィロスとは兄弟です。
 ゼフュロスと花の女神クロリスの物語はボッチチェリの絵のせいかどうか、有名ですね(クロリスはボレアスも狙っていたという話ですが)。
 ですが、このボレアスも「略奪愛」で、絵画の題材になります。
 アテナイの王女オレイテュイアーに恋をして、彼女の気を引こうとするけれど、うまくいかないので、結局風神としてのパワーで、略奪してしまいます。
 またしても、イブリン・ドゥ・モーガンが描いている絵の題材なのですが、彼女の絵は陰鬱な顔つきのボレアスが、金髪の美女をさらっているところですが、北風だから、ボレアスは、むしろ薄くて寒い感じで、オレイテュイアーのほうは、アテナイのお姫様なら、髪は濃い茶色かな・・なんて思ってこんな色合いにしました。
 結局、この「略奪婚」で、双子が生まれまして、これが、アルゴナウタイの羽キャラ、カライスとゼテスです。
2012-02-19

エンペドクレス

エンペドクレス

  エンペドクレスは、古代ギリシャの哲学者です。
 彼の学説は、火・水・土・空気の四元素説です。小難しい理屈はおいといて、古代ギリシャの学説が、ルネサンスのころに、また知識人の間で復活し、流行したのですね。
 で、その哲学者の肖像などを壁画に書いたりしたなかに、ルカ・シニョレッリが描いたエンペドクレスの絵があります。
 古代哲学者の肖像とくれば、なぜかワンパターンで、小奇麗なのや(ソクラテスなど)、小汚いの(ディオゲネス)かの違いくらいで、白髯の厳かな表情の老人と決まっていますが、シニョレッリのエンペドクレスは赤毛の若者です。
 後ろ向きで、何かに驚いたような表情で、画面から飛び出して、こちらに落下してきそうなポーズなんですね。
 そのスタイルにちょっと興味をひかれましたが、エンペドクレスといえば、シチリアは、アグリジェントの人で、エトナ火山の火口に飛び込んで自殺したという伝説がある人です。
 しかも、エトナの入り口にちゃんと靴をそろえて脱いでいたというので、人類最初に、履物をそろえて飛び込みをした人・・ということになっているそうです。
 難しい理論とともに、ちょっとミョーなエピソードを残してしまった人ですね。
 一説には、神になりたくてエトナに飛び込んだ・・あるいは、自分が神であることを証明しようとして飛び込んだとか・・まあ、いろんなことを言われていますねえ。
 シニョレッリの風俗で・・。
2011-11-22

アンドロスフィンクス

スフィンクス男

 スフィンクスといえば、ギリシャ神話においては、スピンクスで、女性とされています。
 しかし、アンドロスフィンクスというのは直訳すれば人面獅子とでもいうのでしょうか。
 男の顔を持つスフィンクスだそうです。
 ヘロドトスが人面の獅子についてアンドロスフィンクスだと述べているようで、これ以外に鷹頭であったり、羊頭だったりする獅子がいるそうです。
 エジプトといえば、ホルスやセクメトなどのように、人間の体にいろんな動物の頭がついているのを考えたのですから、獅子の体にいろんな頭をくっつけるのもありだったんです。
 獅子の体を持つ男の顔は、王の顔であるとか言うなら、具体的なモデルがあったってことなんでしょう。
 これはまあ、いわば獅子身王なんですかねえ。
 現在では、顔が動物で、体が人間というのは、仮面とかかぶりもので、簡単に「変身」できるので、イメージとして受け入れやすいのかもしれませんが、体が獅子・・・思いっきり違和感ありますね。少々不気味です。
 さすがの世紀末の画家でも、女性のスフィンクスは盛んに描いていますが、美しくないと思ったのか、男の顔したスフィンクスはありません。
 例外的に、クノップフが描いたそうですが、それも、彼の好きな顎の角張った顔ですから、これもたぶん女なんじゃないかなあ。
2011-07-30

テヴェレ川

テヴェレ川

 ローマの街角の彫刻や、建国の双子のそばなどに、寝そべって奇妙なものを手に持った「老人」がいます。
 手にしているものは「豊穣の角」で、いわば、海の幸あるいは山の幸などを表わしている豊作の象徴。
 ということは、川からもたらされる「幸」をあふれさせているのは、それらをつかさどる神様ってことですよね。
 ローマで川といえば、勿論テヴェレ川です。この地に流れ着いたアイネイアスが上陸しようとする絵などにも、足元にこの人物がねそべっています。決して「怪しい者」ではありません。
 川の神なので、ゆるやかに下半身にまとう布も水のように・・流れ落ちるようにたれる髪や髯も水の性らしく寒色系で・・なんて思っていたけれど、目つきがミョーにいかがわしい、おじさんになってしまいましたね・・・(暑い季節は川の神様なんて涼しげだと思ったんだけどなあ)。
 ヒゲを生やしているからといって、この神様は決して枯れた老人ではありません。
 処女神官でなければならない、ヴェスタ神女のレイア・シルヴィアが、マルスの子供を産んでしまったので、テヴェレ川に沈められたとき、この神が現れて、彼女を妻にしたのだそう。「苦労したようだが、辛いことは忘れて、これから私が幸せにしてあげよう。そなたの子供たちも守ってやろう」なんて、やさしげに近づいたのかもしれません。
 勿論、河伯の伝説のように、川の神が人身御供の若い娘を要求したんではありません。
 彼女を川に投げ込んだのは、王位を生まれた子供たちに奪われると怖れた叔父です。
2010-08-10

ベレニケ

ベレニケ

  ローマ帝国で有名な異国女性は、なんといってもエジプトのクレオパトラですが、このベレニケも有名です。
 彼女は、ユダヤの王女で、ヘロデ・アグリッパの娘です。
 彼女自身が何かをしたわけではないのですが、男運が悪いのか、最初、ローマ人に嫁ぎ、未亡人になって再婚後、二度目の未亡人となります。次にキリキア人と結婚をしますが、別れて、兄であるアグリッパ2世のもとに戻ります。
 この不幸な妹を、兄は気遣ってか常に一緒に行動していたようで、このへんで、近親相姦などという噂がたつのかもしれませんが、ユダヤ王家は、実質的には王権はなく、ローマ帝国の政争などにからんで、難しい世渡りをしていたのかもしれません。
 この彼女が次に選んだ男は大物で、ユリウス・クラウディウス家の後、新たにローマ皇帝となったヴェスパシアヌスの長男ティトゥスでした。
 ティトゥスは、ユダヤ戦線の総司令官でしたし、父親の立場からしても、次代の皇帝になる可能性は大なので、将来性がよいと判断したのでしょうか? 
 彼女はすでに37歳でしたが、11歳も年下の若いローマ軍人と恋仲になったのです。
 ローマにも、一緒に帰り、二人は夫婦としてふるまっていたようですが、ローマ市民の反応は最悪で、彼女をクレオパトラの再来と見て、ローマ帝国を分裂させる禍を生むと思っていました。
 ティトゥス自身は、本気で彼女と結婚したいと思っていたようですが、皇帝ヴェスパシアヌスは、市民の反感を恐れて彼女をユダヤに帰してしまいます。ヴェスパシアヌス帝の死後、密かに彼女はローマに戻っていたということですが、ティトゥスといっしょに暮らすことはなかったようです。
 ティトゥスは、皇帝になっても独身で通し、愛人もおかなかったのは、やはり彼女のためだったのでしょうか。その頃は、もう若くもない二人でしたが、誠実な恋人であったのかもしれません。
 クレオパトラのように山っ気のある強烈な女性ではなく、もしかしたら、落ち目の兄を助けるけなげな女性だったかもしれないでしょう・・・? ちなみに彼女と兄のアグリッパは、パウロと出会って話を聞いているそうです。
  「密偵ファルコ」に出てくる彼女は、ケバい化粧をして、派手派手なエキゾチックな装いの年増(40を過ぎていますから)ですが、フラヴィウス時代のローマ人の流行の髪形をしていたのではないかと思いますが、やや装身具を派手目に。
2010-07-18

ヘロデ・アグリッパ

ゆだや王

 アグリッパ1世として知られる、ユダヤの王族です。
 ヘロディアの夫(つまりサロメの継父)であるヘロデ・アンティパスの、次の名目上のユダヤの支配者ということになります。
 系譜から言うと、ヘロデ・アンティパスの異母兄弟アリストブラス(彼は、母が先代のハスモン王家の出身だったので、実父のヘロデ大王によって殺された)の息子です。
 名目上というのは、実質、ユダヤの支配者はローマ帝国だったからです。
 若い頃、ヘロデ・アグリッパはローマで暮らしていて、彼と似た境遇の、同じく「父親が殺された(と信じている)不幸で高貴な少年」カリギュラと親友になったのですね。彼のローマ名マルクス・ユリウス・アグリッパというのは、カリギュラがらみで得た名前なのでしょうか。
 その親友がローマ皇帝になったことで、ユダヤでの地位を獲得して、叔父と叔母(ヘロデ・アンティパスとヘロディアです。勿論)を追放し、ヘロデ大王時代の所領を統括する立場となりました。
 クラウディウスの時代になっても、ローマの後ろ盾は続いていたのですが、支配者となって3年目に急死します。
 ある書物によると、キリスト教を弾圧し、大ヤコブを処刑し、ペテロを獄につなぎます。
 そして、ヘロデ・アグリッパ自身は、銀色に輝く衣裳を着けて、民衆の前で演説すると、人々は「神の声のようだ」と称えたので、神の怒りに触れ、虫に食われて死んだ・・ということになっています。
 何の書物かというと、勿論聖書ですね。使徒を処刑したり、投獄したりしたので、天使が現れて打ち据え、生きながら蛆虫に食われて無残な死をとげた・・とかいう記述もあるそうです。
 叔父さんと従姉妹は洗礼者ヨハネの首で有名になり、彼は、ヤコブを殺し、ペテロを捕らえた(天使が迎えに来て脱獄しますが)ことで名を残しています。
 衣裳は、勿論ローマ風です。ユダヤの風俗は、古来偶像を描かなかったために、絵画資料がなく不明なのですが、もともとギリシャ風だったようで、紀元以降は一般的にはローマ風になったようです。
2010-07-16

エジプトのヘレネ

エジプトのヘレネ

 ヘレネといえば、傾国どころか亡国の美女で、言うまでもなくトロイアを滅亡させた原因の女性で、まさしく「トロイのヘレン」
 ところが、設定は同じ・・つまり「パリスの審判」も「トロイア戦争」もあったのだけれど、ヘレネはトロイアには行っていないというお話があるのですね。
 ギリシャ悲劇作家のエウリピデスの戯曲です。
 パリスはスパルタからヘレネを略奪するのですが、ヘレネの実父ゼウスの策略で、雲を使って娘の似姿を作り、身代わりにした・・というのですね。雲を使って人を騙すのはゼウスはよくやるんですね。
 で、ゼウスは彼女を何処に隠したかというと、エジプトの王様に預け守らせたのです。
 そしてトロイア戦争が終わってほとぼりがさめるまで隠れておれというわけです。
 ところが、そこはそれ、どこにいても人目をひく「美女」ですから、何もなかったら面白くない。
 エジプト王の王子が、ヘレネに惚れてしまう。
 父王が神様から預かっている女性ですから、ただ見ているだけだったのですが、父王が死に、自分が即位すると、もはや邪魔者はない・・と露骨にヘレネに言い寄ります。
 しかし、彼女は「私には夫が・・」と拒絶していますが、風のたよりでトロイア戦争も終わり、メネラオスは死んだという噂が伝わります。
 これで王は益々あつかましくなる。ヘレネは「確かに夫が死んだという確証があるまでは・・」と断り続けるあたり・・なにやら従姉妹のペネロペイアを思いだしますね。
 パリスのことで、イメージ的には貧乏くじのメネラオスですが、元々、ヘレネが自ら選んだ夫なんですね。
 そこにギリシャから、ヘレネに使者がやってきて「メネラオスが死んだ」と伝えます。王は喜び、すわ結婚式だと大はしゃぎ。
 実は、その使者はメネラオス本人の変装。エジプト王はメネラオスが迎えに来たら殺せと命じていたのですね。
 そこで一計を案じたヘレネは「せめて夫の弔いの儀式を海の上でしたいと思います」と言うので、王は許します。
 かくして、使者に化けたメネラオスと船に乗り込んだヘレネは沖合いに出て、そのままま♪追い手に帆かけて、しゅらしゅしゅしゅ~♪ めでたしめでたし・・というハッピーエンドのラブロマンス?みたいなお話。
 ヘレネは弔いの儀式をするのだから、エジプト衣裳なんか着てないと思いますが、まあ、こういう格好もさせたいかな・・と。
2010-03-10

テレンティウス

テレンティウス

 ローマ喜劇の本をよみまして、プラウトゥスとテレンティウスという劇作家が、日本ではあまり知られていない、ということを、知りました。
 しかし、この本を読む以前から、この名前が私の頭の中にはインプットされていて、それがローマ時代の劇作家であるということも、すでに知識として持っていました。いえいえ決して、知識を自慢しているのではありませんよ。西洋文学史の勉強などあまりしたことがないのに、何故かなあ・・・という疑問がわきあがってきたのですね。
 で、ハタと思い出したのは、一昔前のレスリー・ニールセンの裸シリーズ! 
 そうそう・・このあまり上品とは思えないコメディです。このシリーズは、色んなパロディをやっていて、まあ、品のないギャグを満載した映画ですが、これの「裸のローマ帝国2000と2分の1年前」という「イタリア映画」がとっても面白かった。いえ、これは、本当に古代ローマ好きにはおすすめのパロディ映画です。
 以前紹介した、小森谷慶子先生の「古代ローマ散歩」の改訂版にも、今回登場しています。
 で、この映画の中で、劇場のシーンで、この作家の名前が出てきます。
 「退屈で大仰な格調高いギリシャ悲劇より、プラウトゥスやテレンティウスのほうがよほどいい」というセリフがあるのです。
 それほど西洋人の間では有名なこの作家も、紀元前の人で、カエサルより古い時代なのです。
 プラウトゥスがシェークスピアに影響を与えたよいうことですが、テレンティウスの生涯は、伝説化されています。
 カルタゴの奴隷市場で売られていたベルベル人の少年を、ローマの元老院議員が買って、その才知に感心して教育を施します。この、異国の文学少年は、エキゾチックな容姿の魅力と才能で若い貴族達(小スキピオがいた)のサロンの寵児となります。
 さらに、向学心に燃え、ギリシャに赴き、研鑽を積み、新作をいくつか完成させて、帰国の途につく途中、船の事故で、作品を失い、失意のうちに25歳の若さで死んでしまった・・・というドラマまで生まれました。
 しかし、アフリカ人ではなかったとか、年齢も35歳だったとか、研究者によるとこの文学サロンも存在しなかったそうですし、彼自身が存在しなくて、誰か名門貴族の偽名だったという説もあるそうですが、伝説は、ロマンがあるほうがいいでしょう。
 異国風のローマ人・・というイメージで。
2010-01-17

ローマの女神(勝利のミネルヴァ)

羽の女神

 私たちが「ローマ好き」で、時々、ちょっとしたきっかけがあれば、「ローマに行きたい病」がぶり返すというのは、皆様よくご存知だと思います。
その「病膏肓に入る」きっかけになったのは、何を隠そう、とんぼの本 ローマ古代散歩 (小森谷慶子・小森谷賢二、新潮社)です。
 そして、ついに「ええい! 実際にローマに行っちまえ!」ということになったのも、この本のおかげなのですね。
 で、このたび改訂版が出まして、今直、どんどん発掘され、公開される新たなるローマの遺跡を大幅に追加しているのは、ほんとうれしい限りですね。
 いや~・・冗談じゃなく、ほんまにローマに行きたいよ~!!!
 で、この本にも紹介されている、オスティアの遺跡にある(ここはローマにすごく近い上に、ポンペイみたいにわんさかと観光客がいるわけでもなく、本当にゆっくり遺跡が堪能できます。あ・・今でもそうかなあ? 入り口にあった売店の兄ちゃんはローマ人の格好をして、サンドイッチを売っていたけれど・・)、有翼の女神像から描いてみました。
 大きな翼はまるで、カステロ・サンタンジェロの橋に並ぶベルニーニの天使のようですが、羽の大きさはさらにデカくてどっしりと迫力があります。石像なので色はわからないけれども、赤い女神の衣裳にしてみました。
 盾を持つ、勝利のミネルヴァ(ギリシャではアテナ)です。
2009-12-22

バレンティニアヌス3世

最後の皇帝

  ローマ帝国も末期状態になると、ローマ貴族の娘だとて、身辺は危険なものとなり、「蛮族」に誘拐されてその妻にされたりする悲劇がおこります。
 暗愚な皇帝の代名詞みたいに言われているホノリウス帝の妹、うるわしのガッラ・プラキディアも悲劇のお姫様。「蛮族」のもとから帰ってきた彼女は、兄の命令で、部下の将軍に嫁入りさせられ、男女の子供が生まれますが、未亡人になったあと、なんと実兄に迫られて子連れで東ローマに逃げます。
 その男の子がヴァレンティニアヌス3世
 ホノリウス帝の死後、ラヴェンナで権勢をほしいままにする貴族達に対抗するために、母ガッラ・プラキディアはわずか6歳の息子を即位させますが、そもそも政争と蛮族の侵略にさらされた西ローマはもう虫の息。
 蛮族を防衛するために将軍のアエティウスと手を結んだものの、今度はこちらが権勢を振るうようになる。
 さらには娘(つまり皇帝の妹)がアッティラと手を組もうとするなど、ローマ帝国はまさに断末魔。
 この時期にガッラ・プラキディアはローマで死にます。
 そしてアッティラの禍が去ったあと、宮廷は内輪もめ。将軍アエティウスを、皇帝が殺すに至って、その報復で、今度はヴァレンティニアヌス自身が暗殺されました。
 美しいモザイクで有名なラヴェンナのガッラ・プラキディアの霊廟には、彼女と夫と、息子のヴァレンティニアヌスの石棺(と伝えられるもの)がありますが、真偽のほどはわからないそうです。
 ヴァレンティニアヌスは、無能だった等と言われていますが、ややこしい時代に、たった6歳で皇帝となり、未曾有の国難の中で、母や臣下に振り回されて育ち、性格もゆがんだのでしょうか・・。
 雨あられと降ってくる災難に、どうやって対処したらよいのかわからない・・・そういう頼りなげなイメージが浮かびました。
 彼が手を出そうとしている炎は・・禍の炎なのですが・・・。
2009-09-15

サッポー

サッポー

  レスボス島の女流詩人サッポーは、愛の女神ヴェヌスに捧げる詩を読みましたが、後世、この詩人は、同性愛の代表のような言われ方をしています。
 そのおかげで、女性同性愛者を島の名前でレスビアンと呼ぶようになった(以前は女性もソドミーだったそうです)ことから、歴史的名称の島の名前が嫌われ、今はミティリニ島と呼ぶのだとか。
 彼女は紀元前7世紀頃の人で、伝説化していますが、女性ばかりをを集めて詩作などを教えたりていたそうです。
 しかし、裕福な商人の妻で、子供もいたというのですから、今で言うカリスマ主婦みたいなもので、教養ある女性が、女の子達を集めて教養サロンみたいにして教育していたにすぎないのではないでしょうか(中には、ファンのおばちゃんもまじっていたかもしれませんが)。
 夫もいたことですし、また、若い男に入れあげてフラれて自殺したなどという伝説もあるので、かならずしも、古い時代には同性好きだというイメージだったわけじゃないようです。
 それを女ばかりの禁断の島・・みたいなイメージにしたのは19世紀になってから、詩人のボードレールや、ラファエロ前派の画家などが作り上げたようです。
 教養ある歳増美人が、若い女の子をたぶらかして「あなたの肌はとても綺麗ね。」なんて、にじりよって撫で回したりするような不埒なイメージは、いかにも男が好みそうな展開ですよね。
 ま、女だって、いわゆる「女性向け」というジャンルは、若くて綺麗な男が、渋くてイケナイおじさんにもてあそばれて・・なんてのが大好きですから・・・。
2009-07-12

ベレロフォン

ベレロフォン

 ベレロフォンって、語感が悪いですよね。日本語のべれろっていうのが、一つ目お化けみたいじゃないです?
 軍艦に詳しい人ならイギリス海軍の戦艦だと思う人もあるだろうし、アメリカの海軍にも同名の艦があるそうです。
 でも、ベレロフォン(ベレロポンとも)はギリシャ神話の英雄で、空飛ぶ馬に乗って怪物を退治するのですが、それが何故空軍ではなく海軍なのか・・よくわかりませんが、ただ、初代のベレロフォンはナポレオンをとっ捕まえたイギリス軍艦です。当時はまだ航空機がなかったのですねえ。
 さて、ベレロフォンは、本名はヒッポノオス(馬にちなむ名前ですね)で、コリントスの王子だったのですが、兄弟のベレロスを殺してしまったので「ベレロス殺し」という名前で呼ばれたそうです。
 まさしく兄弟殺しの汚名を着て、追放されテュリンスの王のもとで罪を清められます。
 しかしここで恩人の王の妃が、「まあ、かわいい子ね。おばさんとあそばない?」と言い寄ってきたのを断ったために、よくあるパターンで「あなた聞いてよ、あの恩知らずったら、私に不埒なことをいたしましたのよ。」と告げ口したので、テュリンス王は手紙を持たせてリュキアの王のところにベレロフォンを使いに出します。
 この手紙が「これを持って来た者を殺せ」と書いてあったのは言うまでもありません。
 押し付けられたリュキアの王も、ただ殺しては外聞が悪いので「御使者殿、見ればなかなかの剛毅の者とお見受けします。・・我が国の困難を除いてもらえないだろうか」と持ちかけ、怪物キマイラの退治を命じられます。
 キマイラとは、ライオン、山羊、蛇の合体動物で口から火を吐く妖怪変化ですね。
 ま古代ギリシャの鵺(ぬえ)みたいなもんです。
 こんな難題を与えられても、神々のごひいきがあればなんとかなるもの。
 ここにはアテナの女神が登場。
 女神の入れ智恵・・いえ御指導のもと、空飛ぶ馬ペガサスを捕らえることに成功、空中戦をこなせるようになって、見事に怪物退治が完了。
 更なる難題もクリアー・・驚いたリュキアの王は、これは殺すより、味方にしたほうが役に立つと、手紙の件を打ち明け、許しを乞うたうえに、王女の婿に迎えて、めでたしめでたし・・。
 だったのですが、何しろ、さらに上を目指したいのが人間の性、天空を飛ぶペガサスを持っているために天に上ろうとしたので、ゼウスの怒りにふれます。
 ゼウスが遣わした虻がペガサスの尻を刺し、馬が暴れたので彼は地上に落下、足が不自由になったうえに視力を失ったそうです。
2009-07-09

エウリュステウス

エウリュスティウス

  ギリシャ神話の一場面を描いた壺絵に、大きな甕に入っている人物の絵があればたいていエウリュスティウスです。
 英雄ヘラクレスが次々に果たす12功業というのがありますが、これは一体なんだんねんというようなのも含めて、この12の難題を彼に課して、イケズするのがミケーナイの王エウリュスティウス。 
 これもまた、そもそも全知全能の神ゼウスの浮気が原因。
 大神ゼウスが、ペルセウスの孫娘アルクメネーを見初めて浮気をし(彼女の婚約者に化けるというセコい方法)、彼女が身ごもったのがヘラクレスです。
 その妊娠を喜んだゼウスは「次に生まれてくるペルセウスの子孫をミケーナイの王とする」と宣言します。
 そこで、心中穏かならないのが、大女神のヘラ。彼女は、出産の女神に命じて、アルクメネーの出産を遅らせ、同じ時期にペルセウスの孫の妻が妊娠していたので、まだ7ケ月であったにもかかわらず早産させて生まれたのがエウリュステウスです。
 大神の発言は翻してはならず、エウリュスティウスはミケーナイの王となります。果たして、この王位が彼にとってよかったのかどうか・・。
 成長したヘラクレスが妻子を殺し、その贖罪のために神託によって、ミケーナイ王の課する難問に挑まなければならない・・と命じられます。
 そして、到底無理だろうと思われる難問を果たして、ヘラクレスがネメアーの獅子や、地獄のケルベロスなどを持ってくるたびに、あまりの恐ろしさに大きな壺の中に隠れてしまうエウリュスティウス王ですが、こんな怖いのに、彼自身もまた神々の命令でやめられないんでしょうね。うっかりヘラクレスを苛めるのをやめて仲良くでもしようものなら、もっとコワいヘラ大明神にどんな目にあわされるかわかりません。
 無事(?)12の難問を果たしたヘラクレスですが、一生をヘラに呪われて不幸な死を迎えます。
 そのヘラクレスの死後、エウリュスティウスは、子孫たちが自分を恨んで王位を奪いに来るに違いないと思って彼らを放逐しますが、アテーナイに頼って逆襲され、ヘラクレスの息子に殺されることになります。
 そして彼の首を孫からもらったヘラクレスの母アルクメネーは、恨み骨髄で、彼の目を抉り取ったそうですが・・・ちょっと気の毒な気もしますね。神々は人間には残酷なことします。
 エウリュステウスが入った甕は真鍮だそうですが、彼の甕入りは、死んで蘇る王の儀式を現している神話だという説があるので、ストレートに日本の甕棺を思い出す私は、土製の壺にしてみました。
2009-07-08

イクシオン

イクシオン

 タルタロスの深い所で、未来永劫、炎の車輪にはりつけられて、焼かれながらぐるぐる廻っている・・・恐ろしいですねえ。
 このような罰を受けているのは、イクシオンです。
 彼は、ゼウスの妻である大魔神・・いえ大女神ヘラを誘惑しようとしたということで有名です。
 いち早くその魂胆を察したゼウスが雲!で作ったニセもののヘラをあてがって、本人は騙されたのですが、その雲!が彼の子供を身ごもって生まれたのがケンタウロスだということになっていますが・・・???なお話です。
 それはいいとして、勿論、不首尾に終わったとしても、ゼウスの怒りは、甚だしく、ハーデスのところに送られて、先ほどの罰を受けているのですね。
 何故ヘラに言い寄ったかというと、「ゼウスは浮気ばかりしているので、ヘラはさびしがっているに違いないから、すぐ落ちるだろう」とか・・。これまた傲慢男の発言ですが、意外とゼウスの弱点を言い当てたのかも。
 しかし、実際のところは、イクシオンが花嫁に迎えた女性の父親(つまり舅)を、焼き殺したということが原因だと思います。
 ギリシャ神話では、これが人類最初の殺人だといわれているのだそうですが・・妻の父殺しか・・。
 小惑星イクシオン(冥王星の惑星)は、緑色に光っているということなので、青っぽい炎にしてみました。でも、なんだか出来損ないのウィトリウィウス的人体図みたいになったなあ・・。
2009-06-28

復讐の女神エリュニス

エリュニス

 ギリシャ神話にエリュニスと呼ばれる復讐の女神がいます。
 この女神は3人姉妹で(神話にセットで登場するとき女性陣は3人組というのが多いような気がしますね。ゴルゴン3姉妹とか、運命の女神とか)、名前はティシフォネ・メガイラ・アレクトの3人です。
 大地の女神ガイアが、ウラノスの男根を切り落とした時に飛び散った血が、ガイアの上に注がれて生まれたので、怪物の代表みたいに言われているギガンテスとは姉妹ですね。
 ゼウスより古い神ですから人間の情念に根ざしたおどろおどろしさがあるかもしれません。特に、大地の母に属しているために、母親を裏切った場合には復讐は恐ろしいかも。
 オレステスは、父アガメムノンを殺した母クリュタイムネストラを、姉エレクトラとともに殺して復讐を果たした後、このエリュニスたちに追いまわされます。何と言っても産みの母を殺してしまったのですから。
 オレステスは、最終的には神頼み・・アポロンの神殿に逃げ込んで神様に仲裁してもらうのです。
 ティシフォネは殺人の、メガイラは嫉妬の、アレクトは怒りの復讐をするということですから、とりあえずは、オレステスを追いかけたティシフォネということで・・。蛇髪、有翼の姿をしていたという説もありますが、ややおとなしめに。
2009-06-19

ケパロスとプロクリス

ケパロストクリ

 嫉妬や疑惑・・不信は悲劇を招く・・というのがテーマ?のギリシャ神話です(ギリシャ神話というよりも、出典が「変身物語」なので、とてもローマの匂いがしますが)。
 狩人のケパロスと妻のプロクリスは、仲良く暮らしていましたが、暁の女神エオスがケパロスにちょっかいを出したことによって悲劇がはじまります。
 エオスというのは、暁の女神で、とても気が多い(アレスに思われたので、アフロディティに、男なしではすませない呪いをかけられているとか)。その上すぐ実行する・・つまり気に入った男をさらう!のです。
 さらわれたケパロスは、女神に「私は妻を愛しているのでどうか帰して下さい」と頼みます。女神であるエオスは内心「なんと失礼な! 女神の私より妻がいいなんて無粋な男ね」と怒りますが、そこはそれ、海千山千のおばさん。
 「あら、あなたはそんなに思っていても彼女はどうかしら。女って浮気っぽいものよ」と、純真なケパロスに、妻を試せと入れ智恵をします。
 ケパロスの姿を変え、外見を別人にして、家に帰って妻を誘惑してみろというのです。恋多き女神の沽券にかかわるイケズ。私をふった男をただで帰してやるものか・・ですね。
 こうして女神のイケズでこの夫婦の間に亀裂が入ります。
 行方不明の夫に雰囲気がとても似た別人に言い寄られ(しかも宝石やお土産などわんさと持って来る気前の良い大金持ち)、つい、プロクリスが心を許した瞬間、女神の魔法が解けて真実の姿にもどります。ケパロスが怒り出したことは言うまでもありません。今度こそ本当に家を出てしまいます。
 悲しんだプロクリスに、狩猟の女神アルテミスが同情。「これをプレゼントして仲直りしなさい」と、狙った獲物を絶対にはずすことのない槍を与えます。潔癖症の処女神ですから「ほんにあの男好きのエオスにも困ったものね」くらいは言ったかもしれません。
 一応もとの鞘におさまった二人ですが、今度は、夜も明けぬうちから、せっせと狩に出る夫を妻が怪しんで(女神の槍の精度がいいので、狩が面白くてたまらなくなった)、プロクリスは後をつけます「まさか、例の暁の女神のエオスと会っているんじゃないかしら・・」。
 後をつけたプロクリスは、草むらに潜んで思わず音を立ててしまいます。熊か何かと勘違いしたケパロスは槍を投げ、槍は過たず狙った獲物・・つまりプロクリスに突き刺さり、叫び声を聞いて、大きな過ちを知って駆けつけた夫の腕の中で息絶えました。
 ところで、ケパロスというのは「頭」!という意味だそうで、とても「頭」の美しい青年で、女神の気をひいたそうですが・・・顔でもなく、髪でもなく、身体でもなく、頭!って!? 
2009-06-18

ソクラテスとカリスト

ソクラテストカリスト

 古代ギリシャの哲学者といえば、すっとソクラテスの名前が出てくるほど、高名な人物ですね。
 対話によって哲学的な思考を導く方法で、相手の理論を試したそうですが、敵も多く、結局死刑の判決を受けて服毒死します。
 また、彼の妻クサンティッペも有名で、世界三大悪妻!の一人だそうですが、頭から水をかけたくらいで、世界の「大悪妻」にされるというのは、ちと気の毒な気もしますが、これまたダンナが有名なせいでしょう。
 このような哲学者であり、しかも悪妻までいましたが、アテナイで有名な遊女カリストと対話したというエピソードがあります。
 遊女が、ソクラテスに「私はあなたより力がありますわよ。なぜって、あなたは私の店の女の子を一人だって引き抜くことができないけれど、私なら、あなたのお弟子さんを全員引き抜けますわ」と「対話」をしかけてきました。
 しかし、そこは大先生「まさしく君の言うとおりだ。君は、私の弟子を下り坂に連れて行くが、私が導くのは厳しい上り坂だ。」と言ったとか。 
2009-04-17

テウタ

テウタ

 古代ローマに対抗したイリュリアの「女王」。
 紀元前3世紀に、イタリア半島の対岸を根城に、アドリア海を活動の場にしていたアグロンという海賊(はい、まだ海賊ネタです)が、イリュリア国王を名乗り、船団を仕立ててギリシャ植民地やイタリア半島などを襲い、ローマの商船を略奪していたので、ローマは、イリュリアに抗議の使節団を送りました。
 当時アグロンは戦死し、跡継ぎの王は幼少であったので、摂政としてアグロンの妻のテウタが「女王」を称して実権を握っておりました。
 ローマの使節団は、ガイウス・コルカニウス、ルキウス・コルカニウスの兄弟で(いかにもローマ人!って名前ですね♪)、女王に海賊行為をやめるように要求しましたが、交渉は決裂。そして、女王に敬意を払わなかったとの理由で、ルキウスは帰路に殺されてしまったそうです。
 はたまた女王の色気に翻弄されたとも言われますが、これは使節のセクハラなのか、本当に女王が色仕掛けで体よく追い払ったのかわかりかねますが、どちらにしてもローマ男は、クレオパトラやらゼノビアやら、異国の美人女王に「弱い」と見えます。 
 結局、ローマは以後、アドリア海での軍事活動に入って行きますが、戦に破れたテウタ女王のその後はどうなったかわかりません。
2009-04-09

ロクスタ

ロクスタ

 華やかなりし、ルイ14世時代の、バスティーユの毒薬使いエグジリを出したので、この人も出します。
 古来名高い悪女アグリッピーナ(娘のほうですよ、勿論)が使っていた女毒薬使いロクスタです。
 ロクスタは、ガリア人で、毒薬を研究し、薬の調合をすることにかけては第一人者で、タキトゥスによれは、いわばカエサル家おかかえの毒薬使いだったのだそうです。アグリッピーナが、先夫の息子のネロを帝位につけたいばかりに、夫クラウディウスが実子のブリタニクスを後継者に選ばないうちに殺してしまおうと画策します。
 しかし、即効性の毒薬ではばれるので、じわじわ効くのがよいが、あまり長く病んでは、死期を自覚して、かえって実子への愛情が増しても困るので、精神が錯乱し、しかも急には死なないという毒・・という難しい注文をロクスタにします。
 かくして、クラウディウスは茸を食べて、はげしい食中毒を起こして死んだ・・ということになっていますが、これについては、せっかく仕込んだ毒キノコを吐き出してしまったので、アグリッピーナがあせって、買収していた医者に命じて、手当てするフリをして激烈な毒をぬった羽を咽に突っ込んで(羽を咽につっこむのは嘔吐をうながすため)殺したとも言われています。
 その後、ロクスタはネロの時代になって再び登場。
 この頃、彼女は護衛隊副隊長のポッリオの預かりとなっていて、罪人として監禁されていたのですが、皇帝ネロにとっては邪魔なブリタニクスを殺す薬を調合します。結局、彼女はネロが滅亡した後に処刑されますが、それまでの間、この母子に仕えて、腕を振るったのではないかと言われています。
 毒殺犯として収監されていながら、実は皇帝の仕事をしていた・・というし、弟子を大勢持っていたともいわれているので、いわば、塀の中の女薬剤師・・みたいなものだったのでしょうかね?怪しげな女魔法使いというよりも、やや若めのイメージで・・。
なんでもありのローマならではの毒使いです。そういえば、ファルコシリーズにも、ローマの毒使いのことがあちこちに出てきます。
2009-03-14

クロトンのミロ

クロトンミロ

 古代ギリシャの著名な人物は沢山いますが、レスラーとして有名なのがクロトンのミロン(あるいはミロ)です。
 クロトンは、イタリア半島のつまさきより土踏まずの入り口あたりとでもいうような位置にある町で、ここの出身のミロンという人物が、古代オリンピア競技で6回連続優勝をしたということになっています。6回のオリンピック優勝といえば、24年間もチャンピオンということですよね。そんなに長く、横綱にしたって世界チャンピオンにしたって続けられるもんではないのですが、まあすごいパワフルな人だったのでしょうね。
 このクロトンのミロンが手に林檎(あるいはざくろ説もあり)を握ると誰もその指を開かせることが出来なかったそうですが、彼の恋人だけは、やすやすと開いて見せた・・のだそうです。男たちは、「ミロは力は強いが心は軟弱だ」などと言ったそうですが、「気は優しくて力持ち」は、いいじゃないですか。
 この伝説的なレスラーの最後は、なんと腕を木に挟まれて身動きが取れないときに獣に食い殺された・・というのですが・・。後世に、片腕でなんとかライオンと闘おうとする彼の彫像などが作られました。
 ところで、彼の「恋人」ですが、アイリアノスの「ギリシャ奇談集」に出ているのですが、古代ギリシャのことなので「美少年」もありかなと思ったけれど、特にことわっていなかったので、一応女性にしてみました。
2009-03-13

レイア・シルビア

レイア・シルビア

  ローマ建国の英雄ロムルスとレムスの双子の母です。
 トロイの末裔でアイネイアスから数えて14代目の兄弟が権力争いをし、勝った弟が兄の男の子供たちを全て殺してしまい、娘のレイア・シルヴィアを幽閉した・・ということになっています。
 処女を義務付けられているヴェスタの巫女にされたともいいます。
 つまりは、もし彼女に子供が出来れば、祖父や伯父たちのあだ討ちをするかもしれないからです。
 この男子禁制の神殿に住む彼女が、なんと双子の息子を生んでしまうのですね。でも、相手は人間の男なんかではありません。不可能を可能にするのは、神様に決まっています。その神様は戦いの神マルス
 怒った叔父によって、生まれた子供たちは殺される運命でしたが、殺害を命じられた兵士が、手を下せず(なにしろ神の子ですから)テヴェレ河に流してしまうのですね。
 母はその後どうなったか、子供を取り上げられ殺されます。河に沈められたという伝説がありますが、ヴェスタの巫女が男と通じたら、生き埋めにされたそうなので、こっちかもしれません。
 神聖な泉に水を汲みに来て、つい居眠りをしてしまったところをマルスに見初められたということですから、彼女はな~んも悪くない犠牲者です。そこで、河に沈められたあと、河の神に助けられ、妻になって幸せになったという伝説もあるそうです。
2009-01-20

ペンテシレイア

ペンテシレイア

 ギリシャ神話に登場する女戦士アマゾンは、男が生まれれば殺し、女だけで暮らす勇猛な民族だとされています。
 トロイア戦争で、ヘクトルが殺されたあと、トロイアの応援に駆けつけたのが、アマゾンの女王ペンテシレイアです。
 アマゾネスたちを率いてすさまじい戦いをして、アカイア勢は苦戦しますが、さすがの女王も、アカイア随一の英雄アキレウスに討ち取られてしまいます。
 このとき、アキレウスは自らが討ち倒した敵でありながら、死に行くペンテシレイアの美しさに恋をしてしまい、女王の死を嘆き悲しんだということです。
 この場面の壺絵がありますが、描かれたペンテシレイアは、エジプト風?の兜を被って、豹の毛皮をまとっていますが、壺絵のアマゾネスに特徴的な東方風のももひきズボンや柄物マントを着ておらず、ギリシャ風の薄い短衣を下に着ているようなので、そのような衣裳で描いてみました。
2009-01-14

エレクトラ

エレクトラ

 男の子が父親を憎み、母親を愛するという心理状態をエディプスコンプレックスというのは、ギリシャ神話のオイディプスの物語にちなみますが、逆に女の子が母を憎み、父を愛するのをエレクトラコンプレックスと呼びますが、その根拠となった物語が、アガメムノンの娘、エレクトラです。
 父のアガメムノンが、母のクリュタイムネストラと、その愛人によって殺されたので、復讐を誓った彼女は、成人して帰ってきた弟のオレステスとともに、父の墓前で再会し、母とその愛人を殺してあだ討ちをするという物語です。
 その後、実母を殺してしまったオレステスが懊悩のために、精神的に不安定になってしまうのと違って、なぜか姉のエレクトラは、そのような後日談もないので、惟は、女のほうが強いというか、図太いということでしょうか? それとも、父に対する愛情がいっそう強く、浮気の挙句の夫殺しをした母に対して、女として許せないという感情の方が強かったのでしょうか?
 墓参りをするエレクトラが壺絵にあるので、その雰囲気で描いてみました。
2009-01-11

ミュラ

ミュラ・ギリシャ

 ギリシャ神話の悲劇の女性(まだ「変身物語」にハマっています。ナポレオンの妹婿のミュラとは関係がありません)。
 木に変身するのは、ダフネのほうが有名かもしれませんが、ミュラは、禁断の恋の果てに、妊娠したまま木になってしまいました。
 キプロスのミュラは、アフロディティの恨みをかって(多分、本当に女神より美しかったのでしょう)、こともあろうに実の父キニュラスに恋してしまい、侍女の助けを借りて・・というか侍女のおせっかいで、母が9日間の祭祀で、留守をしている夜に父の寝室に忍び込み、ひそかな通い妻になります。
 据え膳食わぬは男の恥?・・のキニュラスも、まんざらでもなく、正体を知りたくなったキニュラスは、明かりで照らして、実の娘であることを知り驚愕。思わず、激怒して剣を抜き、娘を殺そうとするのですが、逃げ出した彼女は、悲しみながら9ケ月も彷徨い、アラビアにまでたどりついて力尽きます。哀れんだ神々は、彼女を木に変え、彼女の流した涙が、没薬(ミルラ)になったというのです。
 しかし、彼女は実父の子供を身ごもっており、木の幹から生まれ出たのがアドニスです。アドニスは、ミュラをひどい目にあわせたアフロディティ自身と、冥界の女王プロセルピナが取り合いをするほどの絶世の美少年ですが、結局、この女神たちの争いによって猪に化けたアレスの牙で死んでしまい、彼の流した血がアネモネになったという有名なお話です。
 で、このミュラの父キニュラスも、娘の去ったあと、自身の罪におののいて自害してしまったということですが、彼はかのピグマリオンの孫にあたります・・ということは、人形が生んだ子供の子供なのです! ギリシャ神話って・・・・けっこうブキミですね。 
2009-01-09

カライスとゼテス

カイラスゼトル

 ギリシャ神話の風の神としてはアイオロスが有名ですが、東西南北の風にもおのおの名前があり、北風のボレアス、東風のエウロス、西風のゼピュロス、南風のノトスです。
 この中で、荒々しくて冷たいのが北風ボレアスですが、彼は或る時、オレイテュイアという美女を見初め、略奪結婚をします。そして生まれたのが双子の息子で、カライスとゼテスです。
 彼らは半神で、人間の姿をしているのに翼を持っていて、飛ぶことが出来ました。
 でも、生まれた時は普通の人間の赤ん坊だったようですが、オウィディウス(変身物語)によると、なんと、髭が生える年齢になると、羽も生えてきたとか・・・。
 う~ん・・そうすると、ギリシャ神話の羽つきキャラは、何人かいますが、彼らも、大人年齢にならなければ羽なしだったのかしら? でもクピドは、少年あるいは赤ん坊ですよね?
 それはともかく、彼らは、イアソンのアルゴ探検隊に加わり、ハルピュイアイに食事を奪われるという罰を、アポロンから受けているピーネウスのために、ハルピュイアイ退治をするのです。武器も使えるし、空が飛べるのだから、有利ですね。
 同じアルゴ探検隊にいたヘラクレスと揉め事をおこして、二人とも殺されてしまうとは、ちょっと気の毒ですが、まあ相手が悪かった・・? 
2009-01-06

アルテミス

アルテミス

 女神アルテミスは、ローマではディアナ。セレネと習合されて、月の女神でもあります。
 アポロンの双子の妹で、狩猟の女神、森の動物たちの女神です。
 アクタイオンの例もあるように、厳しい潔癖症の処女神でもあり、またイピゲニアを犠牲に要求したように、人身犠牲を求める神様。また、母レトの復讐のために、ニオベの子供たちを全て殺すというような残酷さも持っています。
 その反面、東方の地母神の性格も持っており、豊穣のアルテミスのような多産の母神でもあるという、実りを願う神様であり、複雑な性格の女神です。
 去年は、色々暗い年でしたが、今年も、なかなか厳しいようで、アルテミス女神のように、気難しいかもしれませんが、でも、結局は獲物の神であり、豊穣の神ですから、上手にお願いいたしましょう。
2009-01-01

ニーソス王

ニーソス王

 クレタ王のミノス(怪物ミノタウロスの戸籍上?の父)は、アテナイに戦を仕掛けましたが、アテナイ王アイゲイウスの兄弟であったメガラ王をも侵略します。
 メガラの王ニーソスは、ミノスの攻撃を受けて、よく守っていました。
 このニーソス王は、真っ白の髪の真ん中に一房、緋色の毛髪が生えていましたが、神託によって、この緋色の毛があるうちはメガラは絶対に落城しないと言われていました。
 城攻めが長引くうちに、メガラの城壁からは、攻め寄せてくるクレタ兵を見ることが出来ましたが、城は決して落ちません。
 ところが、ニーソス王の娘スキュラ(怪物になった美女とは別人)は、毎日敵兵を見ているうちに、指揮するミノス王の姿を次第に目で追うようになり、一方的に激しい恋に陥ってしまったのです。
 そして見ているだけではすまなくなって、あの方と話したい、ふり向いて欲しい・・という恋心から、父の緋色の毛房を切り落とし、ついにメガラの城は落城、国は滅びてしまいます。
 しかし、哀れなスキュラは、戦勝後にクレタに戻るミノスの船団に置き去りにされ、海に身を投げて追いかけますが、とうとう鳥になってしまった・・ということが、オウィディウスの「変身物語」にあります。
 真っ白な髪の中の緋色の毛房(一本の毛となっているのもありますが、岩波文庫の本では毛房となっている)って、なんだかとってもオシャレな感じがしたので、ニーソス王です。 
2008-12-29

ガラティア

ガラティア

 キュクロプス(一つ目巨人)のポリュペモスが熱愛した女性がガラティア。
 ガラティアというのは、もう一人、ピグマリオンの彫刻した女性もそうですが、シチリアの海にいたガラティアはネレウスの娘の一人で海のニンフです。
 また従兄弟だかまたまた従兄弟だかにあたるポリュペモスは、彼女に惚れこんでいました。
 どうしてこっちを振り向いてくれないのか、居心地のいい洞穴も、葡萄やチーズも、山羊や羊も持ってるぞ~♪ それに、取って置きのプレゼントは熊だ~!なんて叫びながら、彼女のつれなさを嘆き、自分ほめをして、恋心を募らせていました。
 でも、彼女には恋人がいて、16才の青春真っ只中の華やかなアキスは、どうひいき目に見ても、ムサイ、クサイ、キタナイという風に見える大男とは比較にならない美少年です。
 二人のデートを目撃したポリュペモスは、嫉妬に狂って岩をちぎっては投げ、ちぎっては投げして、二人をおいかけます。海の精のガラティアは、水に飛び込んで逃げますが、アキスは岩の下敷きになって死んでしまいます。
 深く悲しんだ彼女は、河の神に願うと、彼を押しつぶした岩から水が湧き出し、エトナの側から流れる河になりました。もともと彼は河神の娘の子供だったので、祖父の配慮でしょう。
 ガラティアの絵というと、後世の画家が好んで描いた、大勢の水族たちを引き連れてにぎやかに海上を行く絵が有名ですが、あえて、アキス岩?によりそって、嘆き悲しむ姿にしてみました。
2008-12-28
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Author:乱読F
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